森友交渉記録 「安倍晋三小」14年認識 近畿財務局 - 毎日新聞(2018年5月24日)

https://mainichi.jp/articles/20180524/k00/00m/040/191000c
http://archive.today/2018.05.24-002044/https://mainichi.jp/articles/20180524/k00/00m/040/191000c

学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る問題で、財務省が23日に公表した交渉記録には、財務省近畿財務局と大阪府のやりとりを記録した文書も含まれていた。学園が新設を目指した小学校の名誉校長に安倍晋三首相の妻昭恵氏が就任する1年以上前の2014年3月、校名が「安倍晋三記念小学校」だったことを財務局が認識していたことを示す文書もあった。
学園理事長だった籠池泰典被告(65)によると、籠池被告が昭恵氏に学校建設を伝えたのと同時期。翌4月には、大阪府豊中市の小学校建設用地を訪問し、昭恵氏と写真撮影していたくだりは国会に提出した公文書では削除された。当時から財務局が安倍首相の名前を意識していた可能性がある。
府とのやりとりの記録は13年9月〜15年12月の計32通。14年3月4日に財務局職員が府庁を訪ねた際の記録には、府職員の発言として「安倍晋三記念小学校として本当に進捗(しんちょく)できるのか、取り扱いに苦慮している」とあった。
学園が13年9月に財務局に提出し、昨年11月に開示された設置趣意書の校名は「開成小学校」。昭恵氏が名誉校長に就任したのは15年9月だった。
また、15年1月8日付の記録では、財務局職員が、小学校の設置認可を審査する府私立学校審議会を早期に開催するよう執拗(しつよう)に求めていたことも分かった。府職員が「大阪府のスケジュールまで口出しするのは失礼ではないか」と不快感を示すと、財務局側が「無理を承知でお願いしている」と返答したことも記録されていた。小学校の設置が早期に認可されないと、国有地の売却時期に影響が出かねず、開催を急ぐ様子が記されていた。【津久井達、藤顕一郎、芝村侑美】

森友交渉記録 理財局が廃棄指示 佐川氏ら処分へ - 毎日新聞(2018年5月24日)

https://mainichi.jp/articles/20180524/k00/00m/040/187000c
http://archive.today/2018.05.24-002328/https://mainichi.jp/articles/20180524/k00/00m/040/187000c

財務省は23日、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却を巡る学園側との交渉記録を国会に提出し、国会で問題となった昨年2月以降、理財局の一部職員が近畿財務局職員に保管する交渉記録を廃棄するよう指示していたことを明らかにした。関係者によると、複数の財務局職員が同省の調査に「捨てるよう指示を受けた」と証言しているという。当時理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の「(交渉記録は)廃棄した」との国会答弁に合わせるためで、虚偽答弁だったことが明白になった。
財務省は、大阪地検の捜査結果を見極めた上で、文書改ざんとあわせた調査結果と職員の処分を公表する。当時の理財局幹部らを懲戒処分とする方針で、すでに退職し国家公務員法上は処分できない佐川氏は懲戒処分相当とする。佐川氏は3月9日に辞職した際、「行政への信頼を損なった」として減給20%、3カ月の懲戒処分を受けたが、追加処分が科される見通しだ。
交渉記録を巡って、佐川氏は昨年2月24日の衆院予算委員会での答弁で「事案が終了したため、廃棄した。記録は残っていない」と断言していた。
財務省によると、交渉記録は財務局職員らが手控えとして保管していた。同省は国会提出に当たり、捜査当局の協力も得てほぼ全てをそろえたといい、記録は全217件、A4判で約960ページに上った。
23日午前、衆参両院の予算委員会に交渉記録と改ざん前の決裁文書を提出した富山一成理財局次長は「国会答弁が事実と異なっていたことについて、深くおわび申し上げる」と謝罪した。
国有地は、2016年6月、地中に埋まったごみの撤去費用として約8億円を値引きし1億3400万円で学園側に売却された。交渉記録では、首相の妻安倍昭恵氏に関する記述もあった。売却に先立ち財務局側と学園側が貸し付け契約を結んだ後の15年11月、学園側の要請で、昭恵氏付職員の谷査恵子氏が理財局に「安倍総理夫人の知り合いの方から優遇を受けられないかと総理夫人に照会があった」と電話。理財局側は賃料の減免には応じられないとしつつも「現行ルールのなかで最大限配慮をしている」と応じた。また16年3月15日の記録では、学校建設の過程で「新たなごみが見つかった」として、学園の籠池泰典理事長(当時)らが理財局を訪問し昭恵氏の名前を挙げて対応を迫った。
一方、あわせて提出した改ざん前の決裁文書は計14文書で約3000ページに上る。大阪地検から提供を受けたコピーなどをもとに、財務省が改ざん前の状態を復元した。【井出晋平、杉本修作】

森友交渉記録 佐川氏答弁後に廃棄 昭恵氏隠し 鮮明に - 東京新聞(2018年5月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018052490070448.html
https://megalodon.jp/2018-0524-0923-45/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018052490070448.html

学校法人「森友学園」を巡る国有地売却問題で、財務省が徹底して政治の関与を隠蔽(いんぺい)しようとしていたことが鮮明になった。同省は二十三日、「残っていない」と説明してきた約九百五十ページに上る交渉記録を国会に提出し、問題が発覚した直後の昨年二月下旬以降、理財局職員の指示で廃棄していたことを明らかにした。昨年二月に安倍首相が「妻(昭恵氏)が関与していたら首相を辞める」とした国会答弁の直後に、約三千ページの決裁文書の改ざんと記録の廃棄で、昭恵氏側の関与を隠そうとしたことになる。(桐山純平、白山泉)
大阪地検の協力などで復元した交渉記録は約九百五十ページで、二百十七件に上る。財務省職員が「手控え」として個人のパソコンなどに保管していた。財務省は昨年二月下旬以降、交渉記録を廃棄。決裁文書の改ざんも昨年二月下旬から四月に行っていた。いずれも佐川氏の答弁とつじつまを合わせるためだったと説明した。
交渉記録には、昭恵氏の名前が少なくとも九回登場した。このうち、昭恵氏付きの政府職員だった谷査恵子氏が二〇一五年十一月、森友側による国有地の賃料減額の優遇制度について財務省に問い合わせた、と記されている。安倍首相はこれまで谷氏の問い合わせを「自発的」と説明してきたが、記録には「優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、問い合わせた」との記載があった。
森友問題が発覚後の昨年二月十七日の衆院予算委員会で、安倍首相は「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」と強調。野党は記録の提出を求めたが、同月二十四日、佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官(当時は理財局長)は衆院予算委で「売買契約の締結をもって、事案は終了した。記録は速やかに廃棄した」と述べた。
野党は合同会合で「誰の指示で廃棄したのか」と財務省を追及。理財局の富山一成次長は「それは人事当局の調査で」と明言しなかったが、同省は今月中にも、文書改ざんや交渉記録の廃棄が行われた原因や責任に関する調査結果を公表する。
財務省は交渉記録のほか、森友学園に関する改ざん前の決裁文書全文(約三千ページ)と、「本省相談メモ」とされる資料も提出した。

◆「昭恵氏知人」の相談受け照会
交渉記録には、昭恵氏付きの政府職員だった谷査恵子氏が二〇一五年十一月、財務省理財局の担当課に、森友学園との土地取引について詳細に問い合わせていた状況が記されていた。
事案の背景として冒頭に「安倍総理夫人が名誉顧問に就任した開校予定の小学校から問い合わせがあった」と記載されていた。昭恵氏は一五年九月に名誉校長に就任し、財務省側は昭恵氏と学園側との関係を知った上で回答していた。
一五年十一月十日にまず谷氏からの連絡を受けたのは、財務省国有財産業務課の職員。谷氏は「安倍総理夫人の知り合いの方が、近畿財務局管内の国有地で、今年五月に定期借地契約を締結し、社会福祉法人同様、(借地料を減額する)優遇を受けられないかと照会があった。学校法人に拡大されるなど、今後の方針について教えていただきたい」と照会していた。
この二日後に、財務省の田村嘉啓国有財産審理室長(当時)が谷氏に電話で「学校施設まで対象とするものではない」と回答。「森友学園に対する国有地の貸し付け・売り払いは、最大限の配慮をして対応しているが、先方が理解してくれない」と話したという。(藤川大樹、岡本太)

(筆洗) - 東京新聞(2018年5月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018052402000134.html
https://megalodon.jp/2018-0524-0925-32/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018052402000134.html

どうしてもなくしたものが見つからない。こういう場合のおまじないに<清水の音羽の滝は尽くるとも失(う)せたるものの出ぬはずはなし>というのがある。若い方にはなじみはないか。これを三べん唱えると、あら不思議、こんなところに…というわけである。
「聖アントニオ、聖アントニオ」。欧米などでは、カトリックの聖人アントニオに失せ物発見を祈るのだという。恋愛、縁結びの聖人と聞いた覚えがあるが、失せ物や探し物の聖人でもあったか。なんでも、この聖人、大切にしていた本を何者かに盗まれたが、祈りによって無事戻った、という言い伝えがあるらしい。
<清水の…><聖アントニオ>の国民の祈りが通じたか。森友学園に国有地を破格の安値で売却した問題に絡んで、財務省森友学園側との交渉記録を提出した。野党の求めにも廃棄した、残っていないと、さんざん説明してきた文書も含まれている。で、結局は見つかった。
廃棄したという国会答弁とのつじつま合わせで、廃棄を指示していたとは、情けなさで震えてくる。
「残っていない」ではなく、政権にあだとなる不都合な記録を役所が隠し、国民をだましていたことに他ならぬ。この一件だけで政権が吹っ飛んでも不思議ではない。
さて政権は「清水の…」「聖アントニオ」と三べん唱えるか。見つかるまい。国民の信用という名の、その失せ物は。

森友文書公表 疑惑解明は国会の責務 - 東京新聞(2018年5月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052402000176.html
https://megalodon.jp/2018-0524-0926-48/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052402000176.html

財務省が公表した学校法人「森友学園」との国有地取引をめぐる交渉記録からは国会を欺き続けた重大な隠蔽(いんぺい)行為が浮かび上がる。何を隠そうとしたのか、国会は今度こそ真相解明を果たすべきだ。
「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」
安倍晋三首相が二〇一七年二月十七日に国会で発した言葉が、すべての始まりだったとの見方はますます強まったといえる。
今回明らかになった重大な事実は、佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長の「売買契約の締結をもって事案は終了し、記録は速やかに廃棄した」との国会答弁と整合性を図るために、理財局職員が九百五十ページに及ぶ交渉記録を廃棄するよう指示していたことだ。
国有地売買の決裁文書を改ざんしたのと同様、答弁とのつじつま合わせのためだったと理財局幹部はこの日、国会に説明した。
問題の核心は、佐川氏の国会答弁が、首相の「辞める発言」を受けて、「記録は残っていない」と急速に強弁に転じた点である。
交渉記録には、首相夫人付きの政府職員だった谷査恵子氏が、学園の要望を受け、「国有地の賃料に優遇が受けられないか」などといった問い合わせを財務省にしていたことが記されていた。
学園との交渉で安倍昭恵氏の関与を深くうかがわせるものではないだろうか。決裁文書改ざんで昭恵氏の名前が削除されていたのと併せ、疑惑はより深まったと思わざるを得ない。
交渉記録は、廃棄が進められたものの、近畿財務局の職員が個人的に「手控え」として保管していたものもある。いずれにしても財務省は国会を一年以上にわたり欺いてきたのである。国権の最高機関、国民の代表をだます行為は、国民全体を愚弄(ぐろう)するに等しい。
加計問題では、安倍首相が加計孝太郎理事長と一五年二月に面談したかが焦点となっている。愛媛県職員が学園からの報告として面談記録を文書に残しているにもかかわらず、首相は「会っていない」の一言で一蹴した。
これでは国民の納得はいつまでたっても得られるはずはない。真相解明を妨げているのは、加計氏や昭恵氏らの証人喚問に反対している与党に他ならない。
憲法で国会に付与された国政調査権がもはや死蔵された状態のままなのも自公の党利党略のせいである。首相の疑惑解明は与党の責務であると認識を改めるべきだ。

森友文書公開 国民あざむいた罪深さ - 朝日新聞(2018年5月24日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13508012.html
http://archive.today/2018.05.23-232435/https://www.asahi.com/articles/DA3S13508012.html

財務省が、森友学園との国有地の取引をめぐる交渉記録を国会に提出した。辞任した佐川宣寿・前理財局長が、昨年2月に国会で「残っていない」と答弁し、その後も「廃棄した」と繰り返してきた文書だ。
さらに驚くべき事実が明らかになった。財務省の説明によると、同月下旬以降、省内で保管されていた記録を、実際に廃棄していたというのだ。佐川氏の答弁とのつじつまを合わせるためだったという。
文書を隠し、改ざんし、捨てる。組織としてこの問題を闇に葬ろうという、明確な意図があったとみるべきだ。国会、そして国民は、1年以上にわたって財務省に欺かれ、裏切られてきたことになる。
官僚だけの問題ではない。「文書はない」の一点張りで野党の質問をはねつけ、人々の疑問に真摯(しんし)に答えようとしなかった佐川氏を、安倍首相や麻生財務相国税庁長官に登用した。国民の知る権利と、立法府の行政監視機能を軽んじた点で、首相らの罪も重い。
提出された文書には、3年前の秋、首相の妻昭恵氏付の政府職員から、国有地の貸し付けをめぐって問い合わせを受けたときの応答メモもあった。
職員は「安倍総理夫人の知り合いの方(学園の籠池泰典前理事長)から、総理夫人に照会があり」と説明したうえで、学園が求める優遇措置について財務省の担当課に尋ねていた。
同省は昭恵氏の具体的な関与や、首相への忖度(そんたく)を否定してきたが、昭恵氏と学園とのつながりを認識し得たことを示す記載だ。また、政府職員は「個人」として行動していたに過ぎないとする菅官房長官の従来の説明にも、改めて疑問符がつく。
首相もまた「妻は一切関わっていない」と繰り返している。しかし少なくとも国有地の売却がまとまる以前のこの時期に、昭恵氏が学園と財務省の橋渡しをしたことを、公開資料は物語る。昭恵氏や政府職員を国会に呼んで話を聞く必要がある。
財務省は3月から交渉記録の存否を調べてきたというのに、国会の会期末まで1カ月を切ったきのうになって、ようやく公表した。形ばかりの質疑をこなして逃げ切ろうという思惑があるとしたら、到底許されない。
官僚たちは、何のため、だれのために、事実と異なる答弁をし、文書の改ざん・廃棄までしたのか。そもそもなぜ学園に有利な取り計らいをしたのか。
それを明らかにしない限り、国政に対する国民の不信をぬぐうことはできない。

首相面会の解明 加計氏の喚問が必要だ - 東京新聞(2018年5月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052302000152.html
http://archive.today/2018.05.23-072538/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052302000152.html

加計孝太郎・加計学園理事長が安倍晋三首相と二〇一五年二月に面会し、獣医学部新設計画を説明したとする文書が残っていた。首相答弁とは矛盾する。事実解明には加計氏らの証人喚問が必要だ。
参院予算委員会に提出された愛媛県作成の文書によると、加計学園は一五年三月の同県との打ち合わせの際、同年二月二十五日に加計氏が首相と十五分程度面談し、加計氏が「今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指す」ことなどを説明、首相からは「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とのコメントがあった、と伝えていた。
首相はこれまで加計学園獣医学部新設計画を初めて知ったのは一七年一月二十日だったと、国会などで答弁してきた。文書の内容は首相答弁と明らかに矛盾する。
この文書の記述が正しいという前提に立てば、首相は国会で虚偽の答弁を繰り返したことになる。国権の最高機関に対する冒涜(ぼうとく)にほかならず、看過できない。
首相はきのう、愛媛県文書の内容について「ご指摘の日に加計理事長と会ったことはない。念のために官邸の記録を調べたが、確認できなかった」と否定した。
しかし、首相が加計氏との面会記録を確認できなかったのは、首相官邸への入邸記録が「業務終了後速やかに廃棄される取り扱いとなっている」(菅義偉官房長官)ためであり、面会を否定する根拠とするには無理がある。
指摘された二月二十五日以外や首相官邸ではなく私邸など、ほかの場所で加計氏と面会したことはなかったのか、疑問は残る。
愛媛県文書によると、首相と加計氏との面会後、一五年四月二日に学園側と会った柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が「総理案件になっている」と発言するなど、学部新設の動きが加速した。公平・公正であるべき行政判断が、首相の影響力で歪(ゆが)められたことになる。
愛媛県文書と首相答弁のどちらが正しいのかは、政権の信頼性や安倍内閣の存立に関わる重要な問題だ。その真偽を確かめるには、加計氏や柳瀬氏らの証人喚問が必要であり、中村時広県知事ら愛媛県今治市の関係者の参考人招致も検討すべきだろう。
与党側は加計氏らの証人喚問や中村知事らの参考人招致を拒否してきたが、この問題を解明できなければ、国会の存在意義が問われるという危機意識が希薄ではないのか。与野党を超え、国政調査権を果敢に行使すべき局面である。

(余録)「焼いてしまおうか」と英国首相チャーチル… - 毎日新聞(2018年5月24日)

https://mainichi.jp/articles/20180524/ddm/001/070/150000c
http://archive.today/2018.05.24-002912/https://mainichi.jp/articles/20180524/ddm/001/070/150000c

「焼いてしまおうか」と英国首相チャーチル。「取っておけばいい」。ソ連首相スターリンが答えた。卓上の紙にはチャーチル手書きの東欧分割案とスターリンの同意を示すチェックマークが記されていた。
第二次大戦後の東西両陣営の勢力範囲をめぐる1944年秋の会談である。東欧諸国民の戦後の運命を決めたメモ書きを今誰もが見られるのは英公文書館が保管しているからだ小林恭子(こばやし・ぎんこ)著「英国公文書の世界史」中公新書ラクレ
さすがのチャーチルも後ろめたかったようだが、歴史の真実はメモ1枚の形で後世に残された。こちらも後ろめたさからなのか。すでに「廃棄した」と答弁し、その答弁に合わせて実際に廃棄を進めた記録約1000ページの出現である。
むろん改ざん前の決裁文書約3000ページと共に国会に提出された財務省森友学園との交渉記録のことだ。提出にあたり財務省は、国会答弁とつじつまを合わせるため文書改ざんばかりか、記録の廃棄まで行ったことを明らかにした。
提出した文書は職員が手控えに保存していたもので、記録廃棄のいきさつは改めて調査して報告するという。文書には首相の妻安倍昭恵(あべ・あきえ)氏付の政府職員が理財局に土地貸付料の優遇措置について問い合わせた記録などが含まれていた。
もともとウソを許さぬための公文書を、ウソに合わせて改ざん・廃棄した近代国家のオキテ破りはどんな組織病理がもたらしたのか。財務省という国家中枢を腐らせたものの正体は今こそ見極めねばならない。

森友記録と自衛隊日報 うそと隠蔽の罪は大きい - 毎日新聞(2018年5月24日)

https://mainichi.jp/articles/20180524/ddm/005/070/068000c
http://archive.today/2018.05.24-003024/https://mainichi.jp/articles/20180524/ddm/005/070/068000c

財務省がきのう、森友学園との国有地取引に関する交渉記録などを明らかにする一方、防衛省陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報をめぐる問題の調査結果を公表した。
そもそも二つの重要発表を同じ日に設定したこと自体が、国民の理解を得ようという姿勢ではない。膨大な情報を一度に公表することで、個々の報道を減らし、国民の関心をそらす意図があるとしか思えない。
公文書は何のためにあるのか。いずれも政府側が理解していない実態を改めて示したと言えるだろう。
森友学園との交渉記録について、財務省の佐川宣寿前理財局長は昨年の国会で「残っていない」と再三答弁してきた。
ところが存在していることが報道されて国会が調査を要求。これを受けて同省は今回、職員個人の「手控え」などの形で残っていたことが分かって公表したと説明している。
財務省は森友問題に関する決裁文書の改ざんに手を染めた。しかも驚くことに今回、佐川氏の答弁に合わせるため、改ざんと同時に交渉記録の廃棄も進めていたことが分かった。この隠蔽(いんぺい)工作は誰の指示だったのか。さらに調査が必要だ。
国会に提出したのは、この交渉記録と改ざん前の決裁文書、近畿財務局が本省に相談した際の「本省相談メモ」で計約4000ページに及ぶ。
相談メモには、安倍晋三首相の妻昭恵氏付の政府職員だった谷査恵子氏が2015年秋、財務省理財局の担当課に対し、学園への土地貸付料について優遇措置が受けられるかどうか可能性を問い合わせたとする記述もあった。
今後も文書を精査し、国会で真相を解明していくのは当然だ。
一方、防衛省は存在しないとしていたイラク派遣部隊の日報が見つかった問題について、「組織的な隠蔽はなかった」と結論づけた。
情報が省内の一部にとどまっていたのは担当者の認識不足などが原因だったという。だとすれば、個人の認識不足でこれだけ公表が遅れた点に組織上の問題があろう。
両省とも隠さず情報を出していれば、国会審議は違った展開となっただろう。国民世論も変わっていた可能性がある。うそと隠蔽。安倍政権の罪は極めて重い。

イラク日報 情報隠しの悪弊を断て - 朝日新聞(2018年5月24日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13508013.html
http://archive.today/2018.05.24-003308/https://www.asahi.com/articles/DA3S13508013.html

「ない」とされた陸上自衛隊イラク派遣時の日報が見つかった問題で、防衛省がきのう、調査結果を国会に報告した。
最大の焦点は、昨年3月に陸自研究本部(現・教育訓練研究本部)で日報が見つかったのに1年近く、大臣らに報告がなかったことの経緯である。
防衛省自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質の根深さや、政治が軍事に優先するシビリアンコントロール文民統制)の不全を強く印象づけた不祥事だ。
イラク日報は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の日報をめぐる特別防衛監察のさなかに、研究本部の教訓課長が発見し、上司の総合研究部長に報告した。調査結果によると、両氏はともに、日報を探すようにという、当時の稲田防衛相の「指示」を認識しておらず、南スーダン以外は報告する必要がないと判断したという。
防衛省は組織的な隠蔽は認められなかったとしており、事務次官以下17人の多くは比較的、軽い処分にとどまった。
むしろ調査結果から浮き彫りになったのは、あまりにずさんな文書管理と、情報公開に後ろ向きな姿勢である。
日報の公開請求を受けた教訓課の文書公開担当者は十分に調べもせず、日報の存在を知っていた課長に相談・報告することもなく、「ない」と回答した。情報開示に向き合う意識の低さは信じがたい。
小野寺防衛相は再発防止策として、大臣の指示・命令を履行する体制の強化や、行政文書管理・情報公開のチェック体制強化などを発表した。これを、情報隠しを一掃する契機とできるか、その覚悟が問われる。
防衛省自衛隊の意識改革が急務だ。正しい情報がなければ政治家も国民も政策の是非を判断しようがない。情報隠しは文民統制の基礎を掘り崩すことを忘れてはならない。
イラク日報で公開されたのは2004〜06年の派遣期間全体の半分以下にとどまっている。まだ明らかになっていない関連文書も残っているはずだ。
当時の小泉首相はじめ、政府は自衛隊の活動範囲を「非戦闘地域」と説明してきたが、その実態はどうだったのか。イラクから帰国後、在職中に自殺した隊員は15年時点で29人にのぼる。イラク派遣の闇は、なお残されたままである。
日報に限らず、当時の記録をできる限り公開し、自衛隊初の「戦地派遣」の実相を徹底的に検証する必要がある。そのためにもまず、情報隠しの悪弊を断ち切らねばならない。

検証不十分 全容解明遠く あいまいな「指示」稲田氏に聴取せず - 東京新聞(2018年5月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018052402000141.html
https://megalodon.jp/2018-0524-0932-46/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018052402000141.html


防衛省がまとめたイラク日報問題の報告書は、陸上自衛隊研究本部(当時)の意図的な隠蔽を否定したものの、当時の稲田朋美防衛相の「指示」がなぜあいまいだったのか、日報の存在が判明後になぜ小野寺五典(いつのり)防衛相への報告が遅れたのかなどの検証は不十分だった。
イラク日報が陸自研究本部で見つかったのは、南スーダン国連平和維持活動(PKO)日報の隠蔽問題を巡って、防衛省が国会で厳しい批判を浴びていた昨年三月。同二月の稲田氏の「指示」が明確だったら、報告された可能性があった。イラク日報の発覚でさらなる問題を避けたかったためにあいまいにしていたのでは、との見方もある中、今回の調査では稲田氏に聴取はしていない。
稲田氏の「指示」を陸上幕僚監部などに送ったメールもあいまいだったが、その理由について、報告書は「当時、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の対応で疲弊し、つたない文面となった」との担当者の釈明を記載しただけ。どこまで統幕が本気で捜そうとしたのかを追及していない。
また、今年一月に研究本部が陸幕に日報保有を報告後、二月末には統幕が把握したのに、三月末まで小野寺防衛相に知らされなかった問題も消化不良だった。「内容を精査していた」「漏れがないか再確認」などの作業をしていたのが理由だったとされたが、予算案審議などへの影響を意識したのかなど、意図的な遅れの可能性の検証は盛り込まれなかった。
国会対応などへの懸念が影響した可能性をどこまで調べたかについて、防衛省担当者は「聞き取り内容は具体的に答えかねる」とにごした。
自衛隊日報問題に詳しいジャーナリストの布施祐仁(ゆうじん)さんは「報告書は南スーダン日報問題とのつじつま合わせの可能性などを掘り下げておらず不十分。情報公開請求に捜しもせず『ない』と答えた担当者についても個人としてだけの問題ではない。日報は開示しないもの、と扱ってきた長年の組織の対応が背景にあるだろう。そうした点の検証が必要だ」と話す。 (原昌志)

(放送芸能)向き合う過去 友情の行方 瀬々敬久監督 映画「友罪」あす公開 - 東京新聞(2018年5月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2018052402000198.html
https://megalodon.jp/2018-0524-0934-00/www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2018052402000198.html

もし、心を許した友があの「少年A」だったら−。二人の男が出会い、それぞれの過去と向き合うヒューマンサスペンス「友罪(ゆうざい)」が二十五日、公開される。原作は薬丸岳(やくまるがく)の同名小説。瀬々敬久(ぜぜたかひさ)監督(58)は「友達が事件の加害者だったらどうするかという問いが出発点の作品。だけど、誰しも罪を犯している可能性があるという視点からも見てほしい」と語る。 (猪飼なつみ)
物語はフィクションだが、鈴木(瑛太)が過去に犯した罪は、一九九七年の神戸連続児童殺傷事件をモチーフにしている。事件から十七年後、元ジャーナリストの益田(生田斗真)は、同じ寮に暮らす鈴木が元少年Aとは知らずに、次第に友情を育んでいく。
瀬々監督は原作の中で、鈴木が人知れず暗い過去を抱える益田に「罪を聞かせてほしい」と言う場面が印象深かったという。「普通は一般の人が事件の加害者に問いたいことですよね。でも、犯罪者ではなかったとしても、人を傷つけていることはあり得る。この作品は、鈴木と益田の罪を同じくらいの重さで捉えているところがあって興味深かった」。二人以外の登場人物にも、それぞれの「罪」が描かれる。
他人との関わりをかたくなに拒む元少年Aという難役を瑛太と話し合いながら作っていった。「暗中模索でしたが、瑛太君は、鈴木は人から理解できない部分がなければならないと決めていた。だから、どう解釈したらいいか分からない表情が随所に出ている」
親しくなった二人を象徴するのが、益田が鈴木を飲みに誘う場面。「ささやかだけど、二人にとって宝物のような一瞬。罪を抱えて生きる人も、その瞬間が救いになると思った」
一方で「その幸せを感じられるなら、鈴木は被害者のその瞬間を奪ってしまった重大さも理解できるはず」。それが「友罪」という題名につながると感じ、ラストの鈴木の複雑な表情の中に、両方の意味を込めるよう瑛太に要求したという。
これまで「64−ロクヨン−」(二〇一六年)など、事件を題材にした映画を多く製作してきた瀬々監督。その理由を「僕らの周りには常に事件があるし、どうしてこんなことが起こったのかを知りたい。それは、人の生死の謎につながり、僕は製作しながらその謎を追究していくのが好きなんだと思う」と語った。

<金口木舌>家族 - 琉球新報(2018年5月24日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-724736.html
http://archive.today/2018.05.24-003532/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-724736.html

カンヌ国際映画祭で、是枝裕和監督の「万引き家族」が最高賞のパルムドールに選ばれた。先立つ公式上演では約9分にわたりスタンディングオベーションがあった

▼描かれたのは、万引を「稼業」として生活していく5人の“家族”の物語。血のつながりなど家族の在り方を考えさせられる
▼19日から東京で上映が始まった「まぶいぐみ〜ニューカレドニア引き裂かれた移民史」もまた家族の形を追求した作品だ。明治時代に南洋のニューカレドニアに渡った沖縄系移民の歴史と、戦争で離散させられた家族がルーツを探る姿を追う
▼ニッケル鉱山で働き、現地の女性と結婚して子どもも生まれた。だが、第2次世界大戦で敵性外国人として拘束され、そのまま沖縄へと強制送還される。残された妻は「敵性外国人の妻」のレッテルを恐れて子らにすら沈黙を続けた
ニューカレドニアには沖縄だけでなく日本全国から移民が渡った。「まぶいぐみ」は沖縄に限った話ではない。プロデューサーの末吉真也さんは「戦争では、国の権力が目に見えない、か弱いところに覆いかぶさっていく」と指摘し、現代の政治のありようにも言及する
▼60年の時を経てつながる家族もある。血はつながってなくても本当の家族以上の家族もある。「まぶいぐみ」も「万引き家族」も、家族とは何か、血とは何かを問い掛けている。

「まぶいぐみ〜ニューカレドニア引き裂かれた移民史」公式サイト
https://mabuigumi.com/