(放送芸能)向き合う過去 友情の行方 瀬々敬久監督 映画「友罪」あす公開 - 東京新聞(2018年5月24日)

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もし、心を許した友があの「少年A」だったら−。二人の男が出会い、それぞれの過去と向き合うヒューマンサスペンス「友罪(ゆうざい)」が二十五日、公開される。原作は薬丸岳(やくまるがく)の同名小説。瀬々敬久(ぜぜたかひさ)監督(58)は「友達が事件の加害者だったらどうするかという問いが出発点の作品。だけど、誰しも罪を犯している可能性があるという視点からも見てほしい」と語る。 (猪飼なつみ)
物語はフィクションだが、鈴木(瑛太)が過去に犯した罪は、一九九七年の神戸連続児童殺傷事件をモチーフにしている。事件から十七年後、元ジャーナリストの益田(生田斗真)は、同じ寮に暮らす鈴木が元少年Aとは知らずに、次第に友情を育んでいく。
瀬々監督は原作の中で、鈴木が人知れず暗い過去を抱える益田に「罪を聞かせてほしい」と言う場面が印象深かったという。「普通は一般の人が事件の加害者に問いたいことですよね。でも、犯罪者ではなかったとしても、人を傷つけていることはあり得る。この作品は、鈴木と益田の罪を同じくらいの重さで捉えているところがあって興味深かった」。二人以外の登場人物にも、それぞれの「罪」が描かれる。
他人との関わりをかたくなに拒む元少年Aという難役を瑛太と話し合いながら作っていった。「暗中模索でしたが、瑛太君は、鈴木は人から理解できない部分がなければならないと決めていた。だから、どう解釈したらいいか分からない表情が随所に出ている」
親しくなった二人を象徴するのが、益田が鈴木を飲みに誘う場面。「ささやかだけど、二人にとって宝物のような一瞬。罪を抱えて生きる人も、その瞬間が救いになると思った」
一方で「その幸せを感じられるなら、鈴木は被害者のその瞬間を奪ってしまった重大さも理解できるはず」。それが「友罪」という題名につながると感じ、ラストの鈴木の複雑な表情の中に、両方の意味を込めるよう瑛太に要求したという。
これまで「64−ロクヨン−」(二〇一六年)など、事件を題材にした映画を多く製作してきた瀬々監督。その理由を「僕らの周りには常に事件があるし、どうしてこんなことが起こったのかを知りたい。それは、人の生死の謎につながり、僕は製作しながらその謎を追究していくのが好きなんだと思う」と語った。