7原発12基に腐食や穴 規制委が中央制御室のダクト全国調査 - 中国新聞(2018年5月23日)

http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=434395&comment_sub_id=0&category_id=256
https://megalodon.jp/2018-0523-1507-25/www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=434395&comment_sub_id=0&category_id=256

原子力規制委員会は23日、中国電力島根原発2号機(松江市)の中央制御室の空調換気系ダクトで2016年12月に腐食による複数の穴が見つかった問題を受け、全国の原子力事業者に昨年1月に指示した調査の取りまとめ結果を公表した。島根2号機を除き、7原発12基でダクトに腐食や穴が確認された。
腐食などが確認されたのは東北電力女川3号機(宮城県)、日本原子力発電東海第2(茨城県)、東京電力の福島第1の6号機と柏崎刈羽3、4、6、7号機(新潟県)、中部電力浜岡3〜5号機(静岡県)、北陸電力志賀1号機(石川県)、中国電力島根1号機(松江市)。
このうち柏崎刈羽3号機は腐食が大きく、中央制御室の性能に異常がある可能性がある。同7号機の影響も確認する。他の10基では性能異常はないという。
穴が開いていると、原発事故時に放射性物質が中央制御室に流入し、作業員が被曝(ひばく)する恐れがある。

県新文書、中村知事「職員 改ざん不必要」 - 愛媛新聞ONLINE(2018年5月23日)


https://www.ehime-np.co.jp/article/news201805230048
http://archive.today/2018.05.23-045056/https://www.ehime-np.co.jp/article/news201805230048

学校法人加計学園の加計孝太郎理事長と安倍晋三首相が2015年2月に面会したとする愛媛県の内部文書を巡り、双方が面会を否定したことを受け、中村時広愛媛県知事は22日、訪問先の高知市で取材に応じ「職員が文書を改ざんする必要はない」と述べ、改めて内容に間違いがないと強調した。
県が21日に参院予算委員会に提出した文書は、今治市加計学園とのやりとりをまとめた備忘録を含む計29枚。面会に関しては15年3月3日に行った学園関係者との打ち合わせでの伝聞として記載されている。
中村知事は「職員が3年前のことをすぐに文書で作れるはずがなく、聞いたことをありのままメモした」とする一方、学園側が虚偽の説明をした可能性はあるかもしれないとした。

(政界地獄耳)日大の対応が政府や官僚の弁明とダブる - 日刊スポーツ(2018年5月23日9時2分)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201805230000154.html
http://archive.today/2018.05.23-013911/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201805230000154.html

★悪質なタックルは悪質な命令で行われた。それをしないことも出来たのに、自分はやってしまった。その責任は自分にあるとした日大アメフト部の学生は最近の国家公務員の謝罪などとは全く違い、真摯(しんし)なものだった。彼の会見での発言は、彼がまだ経験しない日本のサラリーマンや公務員たちに与えた衝撃は大きい。理不尽なことを要求されてそれを断る勇気は彼にはなかったが、世間の注目を浴び幾多のフラッシュをたかれた学生はメディアの質問にも丁寧に答えた。
★日大も守ってくれない。周りの大人に見捨てられた孤立無援の学生は、霞が関で正直に答えたばかりに孤立無援の戦いを続ける前文科事務次官前川喜平をほうふつとさせる。正直な告白に「証拠はあるのか」「悪魔の証明はできない」「勝手にやったこと」「犯罪とは言えない」「全く問題ない」との反撃や答えに慣れてしまった国民には学生の行ったことは決して許されないものの、立派に謝罪した学生にむしろすがすがしさすら感じたのではないか。チームにはチームの理屈がある。まさに内部の論理の強さに対して社会では通用しない独自のルール。トップの尻拭いをこの学生がしていると感じたのは今の国会の状況と重なるからだ。
★アメフト部の監督、コーチは表に出てしっかり説明することなく、辞任で体裁を整えたつもりだろうが、代わりにテレビ中継で謝罪したのは学生1人だった。元首相秘書官や前国税庁長官のうんざりするような弁明と、日大中枢の対応がダブって見える。近畿財務局では関係者の死人が出ていても司直は動いてくれない。学生の謝罪に正義の居場所を見ながら、学校経営者・加計孝太郎がこの1年余りの騒動で1度も発言しないでいることを許していることを恥ずかしく感じる。今度は大人が答える番だろう。(K)※敬称略

「反則 監督らの指示」 アメフット日大選手、謝罪 - 東京新聞(2018年5月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018052302000149.html
https://megalodon.jp/2018-0523-1009-26/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018052302000149.html


アメリカンフットボールの定期戦での悪質な反則行為で関西学院大の選手を負傷させた日本大三年の宮川泰介選手(20)が二十二日、東京都内の日本記者クラブで会見し、危険なタックルについて内田正人前監督(十九日付で辞任届受理)と井上奨(つとむ)コーチの指示があったと説明した。宮川選手は「償いの一歩として、真実を話さなければならない」と述べた。 (木原育子)
宮川選手は会見冒頭で、関学大の選手や関係者に謝罪。経緯について、内田前監督から「やる気が足りない」と指摘され、実戦練習から外されていた今月五日、井上コーチから「相手のクオーターバック(QB)を一プレー目でつぶせば(試合に)出してやると(監督から)言われた」と伝えられたことを明かした。
試合当日の六日、井上コーチの指示に従い「相手のQBをつぶしにいくんで使ってください」と内田前監督に伝え、「やらなきゃ意味ないよ」と言われたと説明。「つぶせ」との指示について、「ケガをさせろという意味でしか捉えられなかった」と振り返った。
騒動が大きくなり、父親が「個人的にでも相手の選手、家族に謝りに行きたい」と監督、コーチに申し入れたが、「今はやめてほしい」と言われたことも説明。危険なプレーについて、監督、コーチの指示だったと公表するよう求めたが、拒まれたとも明かした。
会見を受け、日大広報部はコメントを発表し、コーチから「QBをつぶせ」という指示があったことは認めた。ただ、ゲーム前によく使う言葉で「最初のプレーから思い切って当たれ」という意味との見解を示した。
十五日に関学大側に提出した回答書では、「指導者による指導と、選手の受け取り方に乖離(かいり)が起きていた」と説明し、監督による指示を明確に否定していた。内田前監督は十九日、「全て私の責任」と辞任を表明したが、指示の有無については明らかにしなかった。大阪府警に提出された被害届は二十二日に警視庁調布署に移送されたことが分かった。警視庁が傷害容疑を視野に捜査する。

(筆洗)やくざ映画の言葉 - 東京新聞(2018年5月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018052302000150.html
https://megalodon.jp/2018-0523-1010-26/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018052302000150.html

斬られ役、殺され役から俳優としての地位を築いた川谷拓三さんに女優の梶芽衣子さんが、こんな質問をしたそうだ。「生まれ変わっても俳優をやりますか」
答えがふるっている。生まれ変わったときは「それはもう監督でんがな。それで深作を役者で使う」。深作とはもちろん「仁義なき戦い」などの深作欣二監督。川谷さんは深作さんお気に入りの俳優だったが、撮影では相当にしごかれたようで、お返しに役者として使いたいと。
半ば冗談であり、自分を厳しく育ててくれた深作さんへの愛情も感じられる言葉だが、この監督・コーチと選手の関係はどうだっただろうか。日大アメリカンフットボール部の悪質な反則行為。危険なタックルをした日大選手の昨日の記者会見からは監督・コーチがその選手に反則プレーをするように仕向けた過程が浮かんでくる。
「(相手を)つぶすんなら試合に出してやる」「できませんでしたではすまないぞ」「(相手が)けがをする方が得」
コーチの言葉にさむけがする。スポーツや大学とはあまりにかけ離れた冷酷な言葉。それは親分の指示で悪事をいとわぬ「鉄砲玉」の役で川谷さんが昔よく出演していた、やくざ映画の言葉であろう。
せめてもの救いはこの選手が反省し、事実関係を話す気になったことか。だが、生まれ変わったとしても、その大学のアメフット選手を選ぶまい。

(余録)是枝裕和監督の「万引き家族」は… - 毎日新聞(2018年5月23日)

https://mainichi.jp/articles/20180523/ddm/001/070/045000c
http://archive.today/2018.05.23-011158/https://mainichi.jp/articles/20180523/ddm/001/070/045000c

是枝裕和(これえだ・ひろかず)監督の「万引き家族」はカンヌ映画祭で「MANBIKI KAZOKU」のタイトルだったから、「マンビキ」は国際語になるかもしれない。過去にベネチア映画祭黒澤明(くろさわ・あきら)監督の「羅(ら)生(しょう)門(もん)」の例がある。
ラショーモン・エフェクトは、一つの出来事をめぐり矛盾する見方が併存する現象を指す国際的な心理学、社会学用語という。むろん一つの殺人に四つの異なる証言がなされる映画に由来する。原作は芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)の小説「藪(やぶ)の中」だ。
「真相はやぶの中」のたとえの方が日本人にはなじみ深いだろう。世の中には自分の支配下にある「やぶ」を利用して立場を守ろうとする人々がいる。たとえば、アメフットの試合の悪質なタックルをめぐる指導者の責任問題である。
何とも痛々しい空気のなかで行われた当の日大の選手の記者会見だった。当人は危険行為への責任を認めて謝罪しつつ、相手選手への害意のあったこと、それが監督・コーチらの指示と圧力にもとづくものだったのを赤裸々(せきらら)に語った。
日大の監督は辞任しながらも反則のいきさつには口をつぐみ、大学の常務理事にとどまっている。今回の選手の告白によって真相を覆い隠してきた「やぶ」はだいぶ小さくはなったが、この先は警察の捜査に委ねられるしかないのか。
どんな証言や文書がでてこようと真相をうやむやにする“力(ちから)業(わざ)”といえば、最近別のところでもあったような……。この国の言葉にもとづく相互信頼を根底から壊していく権力者の「やぶ」である。

(大弦小弦)タイトルには少々どきっとさせられる… - 沖縄タイムズ(2018年5月23日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/256013
https://megalodon.jp/2018-0523-1014-38/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/256013

タイトルには少々どきっとさせられる。第71回カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した是枝裕和監督の「万引き家族」。善悪が入り交じるような雰囲気が興味を引く

▼都会の片隅で、祖母の年金を頼りに暮らす「家族」の物語という。足りない分は万引で生計をつなぐ一家の日常。是枝監督の大きなテーマは「目をそむけてしまいがちの人々をどう可視化するか」だ

▼これまでもさまざまな家族の形を描いている。1988年に起きた巣鴨子ども置き去り事件を題材にした「誰も知らない」(2004年)は、育児放棄によって、社会に気付かれない子どもたちの姿を描いた

▼衝撃的な内容だが、映画化で社会に潜む問題を突きつけられた。だが、虐待の実態は後を絶たない。明らかなのは日常には気付きにくく、見えづらい問題が隣り合わせていること。気付いても目をそらしたくなる現実があること

▼「万引き家族」の製作も、年金不正受給事件がきっかけだったという。ただ、「裁く」ことだけに目を向けず、いびつながらも肩を寄せ合う家族のあり方や格差、貧困問題など社会全体を問う

▼是枝監督は映画のメッセージは「受け取る側が決めることなんじゃないかと思う」と言う。最高賞作品が映し出すのは、紛れもなく私たちが暮らす場所。直視することで家族の意味を考えたい。(赤嶺由紀子)

「残業代ゼロ」 議論尽くされていない - 東京新聞(2018年5月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052302000151.html
https://megalodon.jp/2018-0523-1012-23/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052302000151.html

「残業代ゼロ」との批判のある高度プロフェッショナル制度高プロ)を含む関連法案が衆院通過の勢いだ。修正が検討されているが、過重労働への懸念が消えない。やはり法案から削除すべきだ。
「働き方」関連法案は、安倍内閣が最重要法案と位置付ける。それだけに政府・与党の国会審議は結論ありきで進められてきた。納得できる審議ではない。
自民、公明両党は法案処理を加速させるため強気の国会運営も辞さない構えだが、働く人の命にかかわる法案だ。拙速な採決は慎むべきである。
高プロは法案の柱のひとつである。年収の高い専門職を労働時間の規制から外す全く新しい働き方だ。議論して詰める課題は多い。
与党と日本維新の会希望の党高プロの適用を受けた労働者が自らの意思で解除できる規定を新たに盛り込むことで合意した。
高プロ適用には働く本人の同意が必要だが、そもそも経営者と比べ立場が弱い労働者は求められれば同意させられる懸念がある。それを本人の意思で解除することはさらに難しいのではないか。
国会審議で問題になっているのは、長時間労働規制の枠から外す働き方になれば際限なく働くことになるという不安だ。野党が「働かせ放題」と批判する点はここにある。労働時間把握がされないと労災認定もされにくくなるとの指摘もある。
政府は、時間も含め仕事の進め方を自ら決められる裁量のある人の働き方だと言う。だが、多くの人に仕事量を自分で決められる裁量権はないことが実情である。
国会審議で加藤勝信厚生労働相は、高プロにもニーズがあると説明したが、そのヒアリング対象となった労働者は十数人だけだったと認めた。裁量労働制を巡る厚労省のずさんな調査といい、議論の前提となる情報も十分に提供されていない。
一方で、非正規雇用の待遇改善を進める「同一労働同一賃金」に関する議論は低調だ。
国会開会中にも、裁量制で働く二十代男性が過労死認定されていたことが分かった。長時間労働をさせる温床になっていないか。裁量制は法案から削除されたが過労死が起きている。働く人の健康をどう守るのかは今国会で議論すべき課題だろう。
論点の多い八本もの法案を一括提案した政府の責任も重い。
とても議論が尽くされたとは言えない。

加計新文書 首相答弁の根幹に疑義 - 朝日新聞(2018年5月23日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13506259.html
http://archive.today/2018.05.23-011354/https://www.asahi.com/articles/DA3S13506259.html

安倍首相の国会答弁の信憑(しんぴょう)性にかかわる重大事態だ。
加計学園の問題をめぐり、愛媛県が新たに国会に提出した一連の文書の中に、首相と加計孝太郎理事長が2015年2月25日に面会し、獣医学部新設についてやりとりを交わしていたと記録されていた。
首相はこれまで、学部新設を知ったのは、正式に決まった17年1月だと繰り返してきた。県の文書が事実なら、その2年前から知っていたというにとどまらない。「加計氏と獣医学部の話をしたことはない」という説明も偽りだったことになる。
首相はきのう、「ご指摘の日に加計氏と会ったことはない」と真っ向から否定した。ただ、官邸への出入りの記録は残っていないという。新聞が報じる首相の動静も、記者が確認できたものに限られる。気づかれずに会う手段はある。会っていない根拠の提示は全く不十分だ。
文書には、学園関係者からの報告として、国際水準の獣医学教育を目指すという加計氏の説明に、首相が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と応じたとある。首相も学園もともに、面会の事実を否定しているが、リスクを冒して虚偽のやりとりを書き留める動機が県職員にあるとは思えない。
県の文書の中には、首相との面会に先立ち、学園関係者が、当時、官房副長官だった加藤勝信厚生労働相と会った記録もあった。加藤氏はこの面会を認めており、文書の正しさの一端を示したとも言えよう。
これらの文書は、国政調査権に基づき、与野党が一致して県に提出を求めたものだ。自らの主張を言いっ放しにするだけでは、行政府の長として、不誠実というほかない。国民の納得が得られるよう、国会できちんと説明をしなければいけない。
一連の文書からは、競合する新潟市などに対抗するため、学園が政権への働きかけを強め、首相と加計氏の面会後に計画が加速化したという流れが見て取れる。
ますます深まる「加計ありき」の疑念を晴らすことができなければ、首相の政権運営に国民の信任は得られないだろう。
国会も問われる。立法府の求めに応じた県の文書を最大限生かし、行政への監視機能を発揮すべき時だ。
まずは、面会の当事者とされる加計氏、そして、官邸と学園側の接点となった柳瀬唯夫元首相秘書官の証人喚問を早期に実施しなければならない。愛媛県中村時広知事にも、参考人として説明を求めるべきだ。

社会保障推計 給付と負担の再構築を - 朝日新聞(2018年5月23日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13506260.html
http://archive.today/2018.05.23-011644/https://www.asahi.com/articles/DA3S13506260.html

年金、医療、介護などの社会保障給付費が2040年度に今の1・6倍の190兆円に達し、国内総生産(GDP)に対する比率は24%まで上昇する。政府がそんな推計を出した。
消費増税を決めた12年の「税と社会保障の一体改革」の際に、団塊の世代が全て75歳以上になる25年度までの社会保障の姿を示したが、その先は展望してこなかった。実は65歳以上の人口は25年度以降も増え、現役世代は減る。消費税率を10%まで引き上げれば制度はもう安心、という状況ではない。
今回の推計は、厳しい現実を直視する一歩だ。社会保障の給付と負担のあり方の再構築につなげなければならない。
高齢者人口がピークを迎える40年代に向けた「ポスト一体改革」の議論の必要性は、以前から指摘されていた。ところが安倍首相の2度にわたる消費増税延期で、「消費税を10%にするのが先決」と封印されてきた。
今回の推計は、そうした議論の出発点になり得る。
だが、来年の統一地方選参院選をにらみ、与党内には負担増を口にするのを避ける空気が広がる。近く決定する骨太の方針にも、新たな財政再建目標のもとで社会保障費をどの程度まで抑えるのか、具体的な数値目標は書き込まない方向という。
社会保障の改革は中長期のテーマだとして、またも議論を先送りする口実に、今回の推計が使われるようなことがあってはならない。
今回示された給付費は、今の制度や、医療・介護の計画をもとに割り出したものだ。これを賄うために税金や保険料の負担を増やすのか、それとも給付の伸びをもっと抑える方策を考えるのか。検討が必要だ。
医療や介護の改革では、原則1割になっている75歳以上の医療費や介護保険の利用者負担を2割に引き上げる、軽度の医療や要介護度の軽い人向けのサービスを保険の対象から外すなどの改革が、すでに政府の審議会などで取りざたされている。実際にどこまで踏み込むのか。それによって税金や保険料の負担はどう変わるのか。負担と給付の全体像、選択肢を分かりやすく示すことが不可欠だ。
推計は、医療・介護現場の深刻な担い手不足も浮き彫りにした。人材確保のための処遇改善にも財源が必要だ。制度を支える働き手を増やすため、高齢者や女性が働きやすい環境を整える方策も進めねばならない。
合意の形成には時間がかかる。社会保障の議論からこれ以上逃げている余裕はない。

<金口木舌>通じなかった「生め」の願い - 琉球新報(2018年5月23日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-723994.html
http://archive.today/2018.05.23-011843/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-723994.html

ハンセン病患者の苦悶(くもん)を描いた小説「いのちの初夜」で知られる小説家・北條民雄に「癩(らい)院受胎」という作品がある。身ごもった女性とその兄、女性の恋人が登場する。3人ともハンセン病患者である

▼苦悩の末、恋人は自死を遂げる。「この児が、この児が…」と悲嘆に暮れる身重の妹に向かって、兄は「生め!」「新しい生命が一匹この地上に飛び出すんじゃないか、生んで良いとも」と諭す
▼北條は10代の終わりにハンセン病を発症した。「死を思わない日は一日もない」という絶望と向き合いながら書かれた作品には、病に苦しみながら生きる意味を問う人物が出てくる。それは北條自身の姿であり、「生んで良いとも」は彼の思いでもあっただろう
▼全国各地のハンセン病療養所では1950年代まで断種や堕胎があったとされる。日本国憲法下で続いた重大な人権侵害だった。「生んで良いとも」という願いは通じなかった。それは米統治下の沖縄も同様であった
▼本紙連載「みるく世向かてぃ」は、沖縄のハンセン病患者の体験をつづった。子を生み育てる夢を断たれた患者がいた。生きながらえるはずの命が消えた。あまりの痛ましさに言葉を失う
▼患者への差別が払拭(ふっしょく)されたとは言い難い。多くの回復者と家族は今も口を閉ざしている。ハンセン病家族訴訟は差別の根深さを問い掛けている。その意味は重い。