麻生氏発言 首相の責任も問われる - 信濃毎日新聞(2109年2月9日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190209/KP190208ETI090004000.php
http://archive.today/2019.02.09-041420/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190209/KP190208ETI090004000.php

暮らしや人権に関わる問題について正しい理解ができない人を、なぜ政権の中枢に起用し続けるのか。安倍晋三首相の責任も問われる事態だ。
副総理兼財務相麻生太郎氏が、支持者らを集めて開いた地元・福岡での会合で少子高齢化に関連して「子どもを産まない方が問題だ」と述べた。自身が生まれた頃と比べ平均寿命が30歳長くなったと指摘し、「年寄りが悪いみたいなことを言う変なのがいっぱいいるけど、それは間違いだ」とした上での発言だ。
少子化の責任は女性にある、と言いたいかのようだ。
少子化の背景には保育所不足、雇用の不安定化など産みたくても産めない事情がある。そんな世の中にした一番の責任は、長年政権の座にある自民党にある。
そもそも子どもを産むか産まないかは自己決定権の問題である。産まないことを「問題」だと批判するのは人権侵害につながる。発言に弁護の余地はない。
麻生氏は5年前にも同じようなことを言っている。選挙の応援演説で、少子高齢化に伴う社会保障費の増加について「高齢者が悪いというようなイメージをつくっている人が多いが、子どもを産まないのが問題だ」と述べた。
麻生氏はその時は、保育施設などの不足で産みたくても産めないのが問題との趣旨であり、「誤解を招いた」と釈明した。
同じ発言が繰り返されたことから見て、「問題」とするのは本音と受け止めるほかない。
麻生氏はこれまで、ほかにも暴言、失言を重ねている。
財務省幹部によるセクハラ問題では「はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」。医療費を巡る政府の会議では「たらたら飲んで、食べて何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」。そこには社会的弱者への共感がない。
そんな人が第2次安倍内閣の発足以降、副総理兼財務相のポストに居座り続けている。足元で森友学園問題が起きても責任を取らず、留任した。
「女性は産む機械」「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれればいいなと思う」…。政府・自民党幹部が過去に重ねてきた発言の数々を思い出す。
一人一人の個性を大切にし、権利を保障するよりも、国のために国民を動員する発想がにじむ。党の体質も問われている。

 

「中学教師から性被害を受けてPTSDに」教え子女性が札幌市を提訴、実名で会見 - 弁護士ドットコムニュース(2019年2月8日)

https://www.bengo4.com/c_1009/n_9216/
http://archive.today/2019.02.09-041759/https://www.bengo4.com/c_1009/n_9216/

中学3年から、当時在校していた札幌市の公立中学の男性教師にわいせつな行為をされて、その後にPTSD心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、41歳の女性が2月8日、教師と札幌市を相手取り、約3000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

提訴後、会見した女性は自分の実名を公表し、「今も教師は学校にいます。こういう問題があるのを知っていただき、安心して生徒が通えるようになってほしいです」と時折涙で声を詰まらせながら、その思いを語った。

●「美術教師に呼び出され、卒業式の前日から被害」
訴えたのは、フォトグラファーの石田郁子さん。訴状などによると、1993年3月の卒業式前日、通っていた中学校の美術担当だった男性教師が、当時中学3年生で15歳だった石田さんを美術展に誘った。その際、キスをするなどわいせつな行為に及んだという。

卒業後もたびたび、石田さんを呼び出し、嫌がって抵抗したにも関わらず、わいせつな行為をした。その後、石田さんが大学1年生になる18歳まで、こうした行為を繰り返した。石田さんは性的被害を受けた後、精神的に混乱し、不安や生きづらさを感じるようになり、2016年2月にフラッシュバック症状が起きてPTSDを発症した。

石田さんは2016年2月から、札幌市教委に教師の行動を報告。その後、調査と処分を求めたが、札幌市教委は教師が否認しているとして、現在まで処分をおこなっていない。

石田さんの代理人である小竹広子弁護士、河邉優子弁護士によると、教師は調査の際に「高校時代に(石田さんと)進路相談やドライブに行ったことはあるが、性的な接触はない。当時から精神的に不安定で、あたかも高校時代に自分と性的なことをしたと妄想のような話を当時から何度も繰り返していた」と話していたという。

●「未成年は被害が被害だとわからない」
会見に臨んだ石田さんは、「自分が教師から性的被害に遭っていたと気づいたのは3年前でした。男性とお付き合いしたこともなかったので、それが普通の恋愛だと大人の先生に言われれば、疑うという発想がありませんでした。でも、一方的に呼び出されて、その日に何をするかを知らない状態でついていく。相手が先生だから言うこときいてしまっていました。卒業してからもその延長でした」と当時を振り返った。

石田さんは2015年、養護施設に通っていた16歳の児童が職員に性暴力を受けていた事件の裁判を傍聴したことをきっかけに、自分が経験したことが犯罪かもしれないと気づいてショックを受けたという。

実名を公表して被害を訴えたことについては、「被害者に対する偏見があるからです。私は普通の人間ですし、自分は悪くないと思っています。15歳から19歳まで被害に遭っていた自分を守れるのは、自分しかいない。堂々と出て話したほうがいい」と語った。

河邉弁護士は、「呼ばれて自分で行ったのでは、女性に非があるように言われますが、それが未成年に対する性犯罪の恐ろしさです。被害が被害とわからない未成年に教師という立場でおこなう。相手からすれば、嫌がっているように見えませんが、性犯罪に遭ったことが後からわかり、被害が出てくることもあります。まだまだ世の中に知られていないので、そうした実態をわかっていただければ」と話した。

札幌市教委は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「経緯を調べ、訴状をみてから対応を協議します」とコメントした。

 

伊方原発、消火ガス5トン放出 操作ミス、トラブル相次ぐ - 共同通信(2019年2月6日)

https://this.kiji.is/465792113566450785?c=39546741839462401
http://web.archive.org/web/20190209014740/https://this.kiji.is/465792113566450785?c=39546741839462401

愛媛県四国電力は6日、伊方原発(同県伊方町)の低レベル放射性廃棄物の焼却施設で、操作ミスがあり、誤って消火用ハロンガス約5トンを施設内に放出したと発表した。ハロンガスは常温の大気中では無色無臭で毒性が少ないといい、作業員の人体や原発への影響はない。
県と四国電によると、5日午後、協力会社の社員が別の施設の消火設備を点検中、誤って焼却施設の消火設備を作動させ、ハロンガスを放出させた。
国電は今年1月、原発敷地でクレーン付きトラックの横転事故が起きた。今月4日には、3号機の作業服などを洗濯する設備で、乾燥機の配管から水漏れするなどトラブルが相次いでいる。

 関連サイト)

伊方発電所3号機 補助蒸気配管からの水漏れについて」 - 四国電力(2019年2月4日)

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https://www.yonden.co.jp/press/2018/__icsFiles/afieldfile/2019/02/04/pr002_1.pdf

通常運転中の伊方発電所3号機(加圧水型、定格電気出力89万キロワット)において、本日15時08分、原子炉補助建屋内(管理区域)において、洗濯設備に補助蒸気※を供給している配管の保温部より、水が漏れていることを、運転員が確認しました。
このため、当該補助蒸気配管への蒸気の供給を停止するとともに、保温材を取り外して確認したところ、補助蒸気復水配管に小さな穴が開いていることを確認しました。
現在、水漏れは停止しています。また、漏れた水に放射能は含まれていません。
今後、原因について詳細調査を実施します。
本事象によるプラントへの影響はありません。また、環境への放射能.影響もありません。

発電所の付属設備(洗濯設備、空調設備など)に供給する蒸気のこと
以 上

 

 

ここが変だよ、統計不正の報告書 専門の弁護士が解説 - 朝日新聞デジタル(2019年2月9日)

https://www.asahi.com/articles/ASM277TPNM27ULFA046.html
http://archive.today/2019.02.09-004534/https://www.asahi.com/articles/ASM277TPNM27ULFA046.html

厚生労働省による「毎月勤労統計」の不正調査を検証した第三者委員会「特別監察委員会」(樋口美雄委員長)の中間報告書が、国会で批判を浴びています。どこが問題なのでしょうか。日本弁護士連合会が2010年に出した第三者ガイドラインの作成に携わり、有志でつくる「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長も務める久保利英明弁護士にお話をうかがいました。

――第三者委員会の特別監察委の中間報告書を読んだ印象を教えてください。

「内容以前に調査期間が約1週間と、あまりに短い。全29ページという分量も少なすぎる。日弁連ガイドラインを作ってから8年半経ちますが、全く参考にされていないと感じます」

ガイドラインや格付け委の評価ポイントでは、第三者委のメンバーは独立性、中立性、専門性が重要としています。特別監察委の報告書を読んでも、そこがわからない。インターネットで名前を検索して調べれば優れたメンバーだとわかりますではなくて、報告書に書かないといけない。厚労省からお金はもらったことはありませんとか、これまで厚労省関係の事件に携わったことはありませんとか、誰がどんな基準でこの人選をしたのかをまず、しっかり記入しないといけないのです」

――確かに最近の企業不祥事などの第三者委報告書を見ると、メンバーの説明にかなりのスペースを割くものが多いです。

「報告書を何百ページ書いても、この委員会は信用ならんとなったら、終わりだからです。報告書を出した後に内容への批判はもちろん出てくるわけですが、大前提として『これは第三者委員会ではない』と批判されることはないという点をまず押さえないといけない。調査費用もいただくわけですから。企業なら株主のお金。国の問題なら国民の税金を使うわけです。それなのに、そもそも誰もお前らに頼んでいないよ、あんたらにそんな資格ないよと思われてしまったら、どんないいものを書いてもだめになってしまいます」

――特別監察委の樋口委員長は、厚労省の外郭団体「労働政策研究・研修機構」の理事長です。厚労省労働政策審議会の会長でもあります。

 

特別監察委の調査法、問題 外郭団体からトップ、疑問 統計不正検証、専門家は - 朝日新聞デジタル(2019年2月9日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13886087.html
http://archive.today/2019.02.09-014646/https://www.asahi.com/articles/DA3S13886087.html

厚生労働省による「毎月勤労統計」の不正調査を検証する「特別監察委員会」について、8日の衆院予算委員会で改めて第三者性への疑義が浮かび上がった。特別監察委は再検証を進めているが、第三者による報告書に詳しい久保利英明弁護士は朝日新聞のインタビューに対し、委員長が厚労省の外郭団体理事長である時点で「信用ならない」と指摘。国会に調査委員会を設けるべきだと訴えた。▼1面参照
久保利氏は、日本弁護士連合会が2010年に出した第三者ガイドラインの作成メンバー。有志による「第三者委員会報告書格付け委員会」を14年につくって委員長を務め、企業などの不祥事を調べた20近くの報告書を評価してきた。
特別監察委は1月16日の設置から6日後に全29ページの中間報告書を公表。厚労省の不正が長く続いたことを「言語道断」とする一方、担当職員らに意図的な不正行為や隠蔽(いんぺい)する意図は認められなかったと認定した。公表後、職員らへの聞き取りの約7割を「身内」がしていたことが判明した。
久保利氏はこの報告書について、「調査期間があまりに短く、分量も少なすぎる」とする。通常、第三者委の報告書の作成は数カ月かかり、数百ページに及ぶのも珍しくないという。
内容も、認定の前提となる報告書の「事実関係」が「社内調査でもわかる事象の推移を並べただけ」とした。電子メールなどを分析する「デジタルフォレンジック」(電子鑑識)、アンケート、内部通報窓口の設置といった別の手法で証拠を補強せず、聞き取りに頼って意図の有無を認定したことを「ありえない」と批判した。
また、聞き取り対象に厚労相事務次官といった首脳級が入っていないことも「組織を揺るがす案件が出たとき、歴代トップにヒアリングしない第三者委は考えられない」と話した。
そして、「内容以前にこの委員会は信用ならないとなったら終わり」と述べ、委員会メンバーと厚労省の利害関係に触れる記述がないことを問題視。樋口美雄委員長が、厚労省所管の「労働政策研究・研修機構」の理事長である時点で「資格はない」と語った。同機構は例年、国から約25億円の補助金を得ている。
厚労省は7日、特別監察委の事務局に元最高検検事ら3人の弁護士を迎えると発表し、再検証の第三者性をアピールする。ただ、久保利氏は福島第一原発事故を検証した国会事故調査委員会のように「国会に調査委を作るべきだ」と主張。「うその統計で説明されてきた国会の名誉にも関わる。超党派の委員会で、専門性の高い弁護士を雇えばかなり良い調査が出来るはずだ。3カ月、半年かけても、きちんと調査して再発を防ぐことが国の将来のために必要だ」とした。(志村亮)

 

【アベノミクス偽装】 森ゆうこ議員「議事録、絶賛改ざん中」 厚労省「修正意見も頂いている」- 田中龍作ジャーナル(2019年2月8日)

http://tanakaryusaku.jp/2019/02/00019621

アベノミクス偽装でも、いやアベノミクス偽装だからか。安倍首相に都合の悪いものは公文書中の公文書である議事録でさえ改竄されたり非公開となったりする・・・きょう8日、開かれた野党5党による政府(厚労省総務省内閣府など)からのヒアリングで、明らかになった。
今、問題となっている議事録とは、学識経験者などの委員からなる「毎月の勤労統計の改善に関する検討会」(通称:検討会)の第4回(2015年7月24日)から第5回(2015年9月16日)にかけて、委員の発言を記した文書のことだ。もちろん公文書である。
経済財政諮問会議の席上、麻生太郎財務大臣が「統計数字を改善するように」と鶴の一声をあげたのが2015年10月15日。「検討会」はこれを機会に開催されなくなった。学識経験者たちが麻生大臣とは逆方向の見解を示していたからだ。
議事録が公開されていない第4回から第6回の検討会は、そうした見解が続出したものと見られている。4年も前の会議の議事録が公開されていないのはあまりにも不自然だ。厚労省によると議事録は通常、翌月か翌々月に出来上がり、同省のHPにアップロードされる。

森ゆうこ議員(自由)が厚労省に迫った―

「専門家検討会議の議事録、何が原因で出せないんですか?委員の方からこういう内容じゃない、修正してほしいという要請があったんでしょうか?」
屋敷次郎・大臣官房参事官は「修正意見も頂いております」と答えた。これは驚くべき話だ。修正意見が委員の間から出たということは、官邸の意向を忖度した厚労省の表現に、委員が異論を唱えたことになる。

4日の衆院予算委員会アベノミクス偽装の本丸に踏み込んだ小川淳也議員が、きょうも鋭い質問を投げ掛けた。「政治家や政権幹部の名前が出てくることはあるか?」と。
厚労省の屋敷参事官は「(議事録を)十分読めていないので、少なくとも私の記憶にはない」とかわした。

森ゆうこ議員がたたみ掛けた―

加計学園の時も同じ。関与示す重要なところが改ざん、修正されていた。(議事録が公開されていない)3回分というのは小川議員が指摘するように政治家の名前が書いてあってその部分がヤバいから削除しなければならないとか、改ざんしている最中、議事録絶賛改ざん中という風に受け取らざるを得ない」。

森ゆうこ議員はダメを押した―

「修正する前の原本と正式なもの両方出して頂いて結構ですが、修正前のものただちに出して頂けませんか」。
改竄前の発言は委員たちが知っている。しかしそのまま出すと、政治によって統計手法が歪められていったことが明らかになる。官邸にとって都合のよい議事録を出すと改竄がモロバレとなる。
議事録は出せないだろう。安倍政権が続く限り。

 

水面下90m杭打ち船、国内になし どうする?新基地の大浦湾地盤改良 - 沖縄タイムス(2019年2月9日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/383172
https://megalodon.jp/2019-0209-0905-18/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/383172

沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、大浦湾の護岸予定地付近で確認されている水面下最大90メートル(水深30メートル、地盤60メートル)の軟弱地盤を改良工事するための作業船が国内に存在しないことが8日、分かった。日本作業船協会(東京)によると、国内で確認されている作業船が地盤改良のために砂杭(すなぐい)を打ち込める深さは最大で70メートルで、最新の資料で70メートルに対応する船は2隻。政府は大浦湾で約6万本の砂杭を打ち込む検討をしているが、現時点で国内の船で90メートルまで打ち込むことは事実上不可能となっている。

最深は70m 2隻のみ

土木の専門家からは「深さ90メートルの軟弱地盤の改良の実績は国内で聞いたことがない」との指摘が上がっており、対応可能な作業船が国内に存在しないことが裏付けられた。政府は大浦湾で4年間で最大70メートルまでの地盤改良を検討しているが、不完全な改良のまま新基地建設を進める可能性がある。
日本作業船協会が2年おきに作成している企業などが所有する船を集計する「現有作業船一覧」の最新の2017年版では、護岸予定地の軟弱地盤に砂杭を打ち込む「サンドコンパクションパイル工法」が可能な船は19隻。改良が可能な最大深度は70メートルまでとなっている。
埋め立て地部分では最大深度80メートルの軟弱地盤が見つかっており、液状化対策で砂杭を打ち込み水分を抜く「サンドドレーン工法」が可能な船は8隻で最大深度は60メートルにとどまる。
同協会は沖縄タイムスの取材に対し「現在、19年版を作成中だが、国内の船でサンドコンパクションが可能なのは70メートルまでで間違いない」とし、海外の作業船の状況については「分からない」とした。同時に「深さが90メートルとしても、全て砂杭を打ち込まないといけないかは設計や上に載せる構造物による」とも述べた。
また、政府は護岸周辺の地盤改良のためサンドコンパクション船11隻を同時に投入することを想定しているが、軟弱地盤の問題を指摘してきた沖縄平和市民連絡会のメンバーで土木技師の北上田毅氏は「現有19隻の数を見ても11隻同時に稼働するのはあり得ない」として工事の長期化を指摘した。

 

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18年実質賃金、0.2%増 参考値非公表、実態見えず - 東京新聞(2019年2月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019020802000297.html
https://megalodon.jp/2019-0208-1455-00/www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019020802000297.html

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厚生労働省は八日午前、毎月勤労統計の二〇一八年の年間結果(速報)を発表した。一八年に賃金の算出基準を変えたために伸び率が過大になり、ボーナスなどを含めた現金給与総額ベースで名目賃金は前年比1・4%増、物価の変動の影響を除いた実質賃金は同0・2%増となった。実質のプラスは二年ぶり。
算出の基準を前年とそろえた「参考値」は、これまで名目賃金で毎月発表していたが、今回年間では名目、実質ともに示さなかった。参考値は公表値よりも低くなる傾向があり、実態隠しとの反発を招きそうだ。
一三年からの名目賃金の前年比の推移をみると、マイナス0・2%▽0・5%▽0・1%▽0・6%▽0・4%だったが、一八年になると1・4%に急伸した。一八年に調査サンプル企業を入れ替える際に算出の基準を変え、賃金が伸びやすくなっているため。しかし、公表資料には基準が違う他の年と並べて載せている。
実質賃金については先月、野党と専門家が各月の参考値をもとに一八年はマイナスに陥ると試算し、厚労省も妥当性を認めていたが、この日の発表では0・2%のプラスと明記した。同じく参考値をもとにした数字ではないためだ。
根本匠厚労相は同日の閣議後記者会見で、今回参考値を示さなかった理由を「統計技術的な問題」などと説明。1・4%増など過大な賃金の伸びについての見解を問われると「前年と今年で同じ形での比較をした」と主張した。

名目賃金と実質賃金> 基本給や残業代、ボーナスなどを合計した名目賃金を基に、物価の影響を考慮して算出したのが実質賃金。名目賃金が変わらなくても、物価が上昇すると目減りして下がる。購入できる商品やサービスの減少につながるなど、個人消費動向に影響を与える。

 

過大な伸び率を放置 勤労統計 参考値非公表 - 東京新聞(2019年2月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019020802000296.html
https://megalodon.jp/2019-0208-1453-17/www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201902/CK2019020802000296.html

<解説> 賃金の伸びを知る唯一の道しるべを消した-。厚生労働省が毎月勤労統計の二〇一八年実績で参考値の伸び率を示さなかった意味は、この一点に集約される。一八年にどれだけ賃金が伸びたのか、基幹統計の公表資料のどこにも載っていないという事態となった。
一八年の名目賃金伸び率は、1・4%増と急伸しているが、これは主に基準の変更によって伸びたものだ。注釈も付けず、基準が違う一七年以前と平然と並べている。
国会で政府は今、「参考値はあくまで参考」などと説明する答弁を繰り返しているが、そもそも公表値の伸び率が過大で役に立たないから、その推計をするために必要不可欠なものだ。エコノミストや学者は公表値を「こんな伸び率は使えない」と突き放している。
基準を変更した政府の言い分は「統計改革」だった。結果として伸び率が過大になり、失敗を認めてやり方を修正するなり説明を尽くすなりすれば、まだ信じられた。しかし、明らかに過大な数値を放置し、今回は年間伸び率の実態が分からないようにした。「意図的ではないか」と疑うのは野党だけではない。
「見かけの数字を良く見せたがる」。専門家にアベノミクスの評価を聞くたびに数え切れないほど同じ意見を聞いた。基準の変更による国内総生産(GDP)の増加が最たるものだが、一つ一つには苦しいながらも「大義名分」はあった。だがこの賃金の伸びは違う。開き直ったとみられても仕方がない。 (渥美龍太)

 

官房長官会見 「質問制限」容認できぬ - 朝日新聞(2019年2月8日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13884468.html
http://archive.today/2019.02.08-004843/https://www.asahi.com/articles/DA3S13884468.html

首相官邸の報道室長が昨年末、官邸を取材する記者が所属する「内閣記者会」宛てに、官房長官会見における東京新聞の特定の記者の質問を「事実誤認がある」などと問題視する文書を示した。
東京新聞に対し、これまで何度も「事実に基づかない質問は厳に慎んでいただくよう」求めてきたといい、文書を出した2日前の会見での質問も事実に反し「極めて遺憾」だと指摘している。
しかし、記者会見はそもそも、当局に事実関係を確認する場であり、質問に誤りがあったとしても、その場で正せばすむ話だ。特定の記者を標的に、質問の制限を求めるような今回のやり方は不当であり、容認できない。政権の意に沿わない記者の排除、選別にもつながりかねない。
文書の直接の契機となった質問は、安倍政権が沖縄の民意を顧みずに強行している米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に関するものだった。
記者は「埋め立ての現場では、いま赤土が広がっております」と、投入される土砂に環境に悪影響を与える赤土が混じっているなどとして、政府の対応をただした。
官邸の文書は、区域外への汚濁防止措置をとっているとして「赤土による汚濁が広がっているかのような表現は適切ではない」というが、赤土の混入は沖縄県も懸念している。事実誤認などを理由に、説明を拒む姿勢は誠実さを欠く。
文書が内閣記者会に「問題意識の共有」を求めたのも、筋違いだ。報道機関の役割は、権力が適正に行使されているかをチェックすることであり、記者会側が「質問を制限することはできない」と応じたのは当然だ。
官房長官は、平日は原則、午前と午後の2回、記者会見に応じている。政府のスポークスマンとして、国民への説明責任を重んじればこそではないのか。記者の自由な質問を阻害することは、国民の「知る権利」の侵害でもあると知るべきだ。
全国の新聞・通信社の労働組合が加盟する日本新聞労働組合連合新聞労連)は先日、厳重に抗議する声明を発表した。

首相官邸の対応が「悪(あ)しき前例として、日本各地に広まる」恐れも指摘している。
森友・加計学園の問題や統計不正など、不祥事が起きても、真相解明に後ろ向きな対応を繰り返しているのが安倍政権だ。今回の件も、国民の疑問に正面から向き合わない姿勢の表れにほかならない。

 

 

声明・見解「首相官邸の質問制限に抗議する」 - 日本新聞労働組合連合(2019年2月5日)
https://kodomo-hou21.hatenablog.com/entry/20190206/1549438770

本紙記者質問「言論弾圧にならぬよう」国民民主、官邸報道室長に要請 - 東京新聞(2019年2月7日)
https://kodomo-hou21.hatenablog.com/entry/20190207/1549539002

同性国際カップル「在留資格認めて」 日本人がパートナー 強制退去の台湾籍男性 - 東京新聞(2019年2月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020802000141.html
https://megalodon.jp/2019-0208-0950-18/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020802000141.html

日本人男性と二十年以上連れ添ったのにパートナーと認められず、国外退去を命じられた関東在住の台湾籍男性が、国に処分の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こしている。男女なら結婚すれば在留資格を得られるが、同性の結婚は認められていないため、判決によっては二人は離れ離れにされる。男性は「性的指向による差別だ」と訴える。 (奥野斐)
「一日でも長く、パートナーと一緒にいたい」。昨年十二月、四十代の原告男性が証人尋問で思いを語ると、傍聴席からすすり泣きが漏れた。日本人と外国人の同性国際カップルら四十人余が見守っていた。
弁護団などによると、男性は一九九二年に一年間の留学ビザで来日。ビザが切れると台湾に帰り、三カ月の短期滞在ビザで二回入国した。この間にパートナーと出会った。九四年から同居を始めたが、同年にビザが切れた。就労ビザを得られるような仕事には就けず、周囲にも相談できないまま不法滞在になった。
「前回台湾を出た際、不法就労目的ではと疑われた。また帰れば、次は日本に戻れないかもしれないと怖かった。パートナーと離れたくなかった」と男性は振り返る。高校生の時に同性愛者であることに苦悩して自殺未遂を起こし、台湾に住む家族とは疎遠だ。
九五年には男性のエイズウイルス(HIV)への感染が判明。高額な治療費をパートナーが工面し、治療を続けられた。一方、パートナーが抑うつ的になり働けなかった時は、男性が仕事をして支えた。法廷で、パートナーは男性のことを「生きていく上でなくてはならない存在」と語り、男性も「異性カップルに負けない絆がある」と訴えた。
近所や病院では「兄弟」と偽り、息を潜めるように生きてきたが、二〇一三年、HIV感染者の支援団体を通じて弁護士とつながり、不法滞在でも特別な事情がある場合に認められる「在留特別許可」を知った。許可を得ようと地方入国管理局への出頭を準備していた時、警察に職務質問され不法滞在が発覚し、逮捕された。在留特別許可は認められず、一六年十一月に退去強制命令を受けた。
男性は「性的指向による差別で、憲法が保障する法の下の平等に反する」として一七年三月に提訴。来月にも結審する見込みだ。
弁護団長の永野靖弁護士(59)は「異性カップルなら仮に不法滞在になっても結婚して在留特別許可が出るケースが多い。同性カップルも同様に助け合って生きている現状を見てほしい」と話している。

◆母国で婚姻なら受け入れ
日本は、先進七カ国(G7)で唯一、法律で同性カップルの結婚やパートナーシップを認めていない。
就労などで来日する外国人については、カップルの二人とも出身国で法的な婚姻関係を認められている場合、パートナーの日本滞在を受け入れている。しかし、「家族滞在」などの在留資格ではなく「特定活動」での入国・在留という扱いだ。
さらに、外国政府の外交官や大使館職員などは、法的な婚姻でなくてもパートナーだとする出身国の証明があれば滞在を認めている。
国士舘大文学部の鈴木江理子教授(移民政策)は「外国人の同性パートナーに対する人道的配慮は評価できるが、『特定活動』で受け入れている点に、日本の保守的な家族観への強いこだわりがうかがえる」と指摘。「外国人への配慮はあるのに、同様の立場の日本人の権利を守らないのはおかしい」と話す。
同性婚を巡っては、認められない現状は憲法違反だとして東京、名古屋など全国の同性カップル十三組が十四日、国に賠償を求め一斉提訴する予定だ。

 

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「言論萎縮させる嫌がらせ」 商品送りつけ被害 女性議員ら会見 - 東京新聞(2019年2月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020802000139.html
https://megalodon.jp/2019-0208-0951-46/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020802000139.html

女性差別などについて積極的に発言する女性の議員や弁護士、市民活動家らに、頼んだ覚えのない商品が送りつけられる嫌がらせが、全国で続出している。被害を受けた女性たちは東京都内で七日、記者会見し、「女性を黙らせたいという非民主的で差別的な動機を感じる。ひきょうな犯罪には屈しない」と訴え、被害者の連帯を呼びかけた。
会見したのは北九州市の村上聡子市議、フェミニストの作家北原みのりさんら七人。「女性の力で未来をひらく」がキャッチフレーズの村上さんは、昨年六月~先月、三万円相当の下着十六枚や健康食品など計十一件の送り付け被害があり、刑事告訴した。「前川喜平元文部科学次官の講演会で司会をした後から始まった。同じ被害が(ほかの人にも)同時多発していて驚いた。言論を萎縮させるような嫌がらせは許せない」と声を強めた。
それぞれ被害が始まったのは、「フェミニズムに関するシンポジウムの登壇が決まった時」(猿田佐世弁護士)、「麻生太郎財務相のセクハラへの無理解に抗議する集会での発言が報道されて」(市民活動家の濱田すみれさん)など、女性差別に関するイベントや発言で注目された時期だという。
太田啓子弁護士は「女性を黙らせたいという差別的動機を感じる」と指摘。偽の注文はがきは山口県内の消印が多く「同一犯による被害が複数ある可能性が高い」と推測した。
会見したメンバーらは被害者の連帯を呼びかけている。問い合わせは「送りつけ被害者の会」=okuritsuke@gmail.com=へ。 (出田阿生)

 

[広がる制服選択制]全ての学校での導入を - 沖縄タイムス(2019年2月8日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/382703
https://megalodon.jp/2019-0208-0953-06/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/382703

県立高校で、性別に関係なく自由に制服を選べる制服選択制が広がっている。
昨年から導入した浦添高校を皮切りに、今年に入ってから那覇高校と西原高校が事前申請なしで制服を選ぶことができるようになった。
教育庁によると、県立高校では20年以上前から、申し出を受けた場合は個別に制服選択を認めてきた。
しかし周知は十分とはいえず、多くの生徒は制服が選択できることを知らない。心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」をはじめとするLGBT(性的少数者)など自身の性自認に人知れず悩む生徒にとっては、学校へ申告すること自体が壁にもなっていた。専門家は「性に悩む生徒は保護者や教師に相談できないことが多い。事前相談不要は画期的」と喜ぶ。
自由な制服の選択制導入が生徒へのアンケートを踏まえ、学校の自主的な取り組みであることも評価したい。学校生活を送る中で生徒や教師の実感に基づく改革は、より良い教育環境をつくる着実な一歩となるに違いない。
他県でも制服の自由化は進んでいる。昨年4月に開校した千葉県柏市柏の葉中学校は、スラックスやスカートなどを自由に選べる制服を導入した。男子用と女子用どちらを選んでもよく、ネクタイかリボンなどの組み合わせも自由にした。LGBTの生徒にとどまらず、全ての生徒が自由に選択できる制服だ。
北九州市教育委員会は2020年度から、市内の中学校で性別に関係なく選択できる「標準服」を導入する。LGBTへの配慮はもちろん、機能性の向上が目的という。

    ■    ■

学生服大手メーカーによると、女子生徒用ズボンは1990年代後半から、寒冷地を中心に採用が増加している。2016~18年度に制服を新調し同社へ発注した全国の中学校のうち42%がズボンを導入したという事実からは、多様な選択肢が制服着用の快適性にもつながっていることがうかがえる。
男女はもちろん、LGBTや外国人、障がいの有無など社会に多様な人がいるように、学校にもさまざまな背景を持つ生徒がいる。
制服に悩む県内の生徒たちの声からは、制服を着ることで、固定化した「男らしさ」や「女らしさ」を押し付けられていると感じていることが分かる。生徒一人一人の「自分らしさ」を保障する意味でも、自由に制服を選べることは重要だ。

    ■    ■

「子どもの貧困」が社会問題として認識されている現在、高額な制服のあり方も問われている。県内でもすでにそもそも制服を着るか否かを選べる学校もあることを考えれば、統一した制服着用そのものを考え直す必要もある。
赤と黒の2色だった小学生のランドセルが、カラフルになって久しい。選択肢の多様性は、子どもたちが自由な学校生活を楽しむ基盤ともなっている。そうしたことを考えれば、自由な制服選択制の導入は快適な学校生活を担保する第一歩ともいえる。制服を着用する全ての学校で導入してほしい。

 

[大弦小弦]四国の最南端、太平洋に突き出す足摺岬… - 沖縄タイムス(2019年2月8日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/382707
https://megalodon.jp/2019-0208-0955-04/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/382707

四国の最南端、太平洋に突き出す足摺岬がある高知県土佐清水市が生まれ故郷。幕末から明治にかけて、討幕運動や自由民権運動が盛んだった土着の気風が駆り立てるのか

参院議員を2期務め、自由党小沢一郎共同代表の知恵袋として知られる平野貞夫さん(83)が安倍晋三首相を内乱罪で告発した。名護市辺野古の新基地建設の強行が、憲法の定める統治の秩序を壊しているというのが理由だ

参院議員の前は衆院事務局に長く勤め、政界の裏も表も知り尽くす平野さんが人生の集大成で世に問う。その過去には、砂川事件で裁判史上初めて米軍を違憲とした伊達判決(1959年)を書いた伊達秋雄さんとの出会いがあった

▼判決の3年前。法政大生の平野さんは、最高裁調査官をしながら教壇に立つ伊達さんから刑事訴訟法を学ぶ。「裁判官の判断は刑法の厳格な解釈と認識に基づかないといけない」。語り口は情熱的だった

▼伊達判決を覆した最高裁判決は、高度に政治性を持つ問題は審査対象から外す「統治行為論」で米軍を合憲と認定。基地絡みの訴訟は門前払いが定着した。ここに一石を投じたい思いがある

▼「内乱罪は統治行為そのものに関わるが、刑法は罰則のある実定法。その判断を迫りたい」。齢(よわい)80を超えて首相を訴える。そこには恩師の教えが息づいている。(西江昭吾)

 

増え続ける児童虐待 加害者の更生が防止策だ - 琉球新報(2019年2月8日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-872689.html
https://megalodon.jp/2019-0208-0958-01/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-872689.html

何度かSOSが出されながら、大人がミスを重ね、救える命が救えなかった。そうとしか思えない事件だ。
千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅浴室で死亡した事件で、心愛さんが虐待を否定する文書を児童相談所に提示し、児相は2日後に心愛さんを自宅に戻す決定をしたことが新たに分かった。後日、心愛さんから文書は父親に書かされたと打ち明けられたが対応せず、一度も家庭訪問をしていなかった。
心愛さんは学校のアンケートに「お父さんにぼう力を受けている」と書き、児相は2017年11月に一時保護し、親族宅での生活を条件に12月に解除した。
その後、父親が「お父さんにたたかれたのはうそです」「お父さんに早く会いたい」「児相の人にはもう会いたくないので来ないでください」などと書かれた文書を示し、心愛さんを家に連れ帰ると迫り、「名誉毀損(きそん)で訴える」と職員を脅した。
この時点で、親と離した上で心愛さんの真意を確認することはできなかったのか。
さらに翌月、学校での面談で心愛さんから父親に文書を書かされたと聞いた後も、対応しなかった。父親に強要され文書を書かされた時点で虐待と捉えるべきだ。児相の対応が及び腰だったことは否定できない。
そもそも心愛さんに対する虐待の疑いは学校のアンケートで訴えたことで発覚した。しかし、その後の対応は不手際続きだ。市教育委員会は父親のどう喝におびえ、アンケートを虐待の加害者とされる父親に渡してしまった。
父親に文書を書かされたことを打ち明けても児相は動かなかった。その後、心愛さんは学校のアンケートに虐待を訴えることはなかった。誰も信じられなくなり、深い絶望感を抱いたのではないか。
虐待の情報は引っ越す以前の糸満市在住時からあった。父親による母親へのDVと心愛さんへの虐待疑いがあり、市の児童家庭相談室が対応する事例とされたが、心愛さんについては学校に見守りの協力を依頼しただけだった。
警察庁によると、18年に虐待疑いで児相に通告した子どもは前年比22%増の8万104人で、統計のある04年以降、初めて8万人を超えた。児相も多くのケースを抱え、対応に苦慮している。
虐待の加害者の多くが「しつけ」と称して正当性を主張する。しかし、暴力で言うことを聞かせようとするのは虐待であり、しつけとは明らかに違う。
子どもの見守りを強化するのはもちろんだが、加害者が暴力を振るわないよう更生のための教育を施すことが不可欠だ。増え続ける虐待事案は、学校や児相に頼るだけの虐待防止策が限界にある証拠ではないか。
加害者への更生教育プログラムを含めた総合的な虐待防止対策が求められている。