[広がる制服選択制]全ての学校での導入を - 沖縄タイムス(2019年2月8日)

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県立高校で、性別に関係なく自由に制服を選べる制服選択制が広がっている。
昨年から導入した浦添高校を皮切りに、今年に入ってから那覇高校と西原高校が事前申請なしで制服を選ぶことができるようになった。
教育庁によると、県立高校では20年以上前から、申し出を受けた場合は個別に制服選択を認めてきた。
しかし周知は十分とはいえず、多くの生徒は制服が選択できることを知らない。心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」をはじめとするLGBT(性的少数者)など自身の性自認に人知れず悩む生徒にとっては、学校へ申告すること自体が壁にもなっていた。専門家は「性に悩む生徒は保護者や教師に相談できないことが多い。事前相談不要は画期的」と喜ぶ。
自由な制服の選択制導入が生徒へのアンケートを踏まえ、学校の自主的な取り組みであることも評価したい。学校生活を送る中で生徒や教師の実感に基づく改革は、より良い教育環境をつくる着実な一歩となるに違いない。
他県でも制服の自由化は進んでいる。昨年4月に開校した千葉県柏市柏の葉中学校は、スラックスやスカートなどを自由に選べる制服を導入した。男子用と女子用どちらを選んでもよく、ネクタイかリボンなどの組み合わせも自由にした。LGBTの生徒にとどまらず、全ての生徒が自由に選択できる制服だ。
北九州市教育委員会は2020年度から、市内の中学校で性別に関係なく選択できる「標準服」を導入する。LGBTへの配慮はもちろん、機能性の向上が目的という。

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学生服大手メーカーによると、女子生徒用ズボンは1990年代後半から、寒冷地を中心に採用が増加している。2016~18年度に制服を新調し同社へ発注した全国の中学校のうち42%がズボンを導入したという事実からは、多様な選択肢が制服着用の快適性にもつながっていることがうかがえる。
男女はもちろん、LGBTや外国人、障がいの有無など社会に多様な人がいるように、学校にもさまざまな背景を持つ生徒がいる。
制服に悩む県内の生徒たちの声からは、制服を着ることで、固定化した「男らしさ」や「女らしさ」を押し付けられていると感じていることが分かる。生徒一人一人の「自分らしさ」を保障する意味でも、自由に制服を選べることは重要だ。

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「子どもの貧困」が社会問題として認識されている現在、高額な制服のあり方も問われている。県内でもすでにそもそも制服を着るか否かを選べる学校もあることを考えれば、統一した制服着用そのものを考え直す必要もある。
赤と黒の2色だった小学生のランドセルが、カラフルになって久しい。選択肢の多様性は、子どもたちが自由な学校生活を楽しむ基盤ともなっている。そうしたことを考えれば、自由な制服選択制の導入は快適な学校生活を担保する第一歩ともいえる。制服を着用する全ての学校で導入してほしい。