ここが変だよ、統計不正の報告書 専門の弁護士が解説 - 朝日新聞デジタル(2019年2月9日)

https://www.asahi.com/articles/ASM277TPNM27ULFA046.html
http://archive.today/2019.02.09-004534/https://www.asahi.com/articles/ASM277TPNM27ULFA046.html

厚生労働省による「毎月勤労統計」の不正調査を検証した第三者委員会「特別監察委員会」(樋口美雄委員長)の中間報告書が、国会で批判を浴びています。どこが問題なのでしょうか。日本弁護士連合会が2010年に出した第三者ガイドラインの作成に携わり、有志でつくる「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長も務める久保利英明弁護士にお話をうかがいました。

――第三者委員会の特別監察委の中間報告書を読んだ印象を教えてください。

「内容以前に調査期間が約1週間と、あまりに短い。全29ページという分量も少なすぎる。日弁連ガイドラインを作ってから8年半経ちますが、全く参考にされていないと感じます」

ガイドラインや格付け委の評価ポイントでは、第三者委のメンバーは独立性、中立性、専門性が重要としています。特別監察委の報告書を読んでも、そこがわからない。インターネットで名前を検索して調べれば優れたメンバーだとわかりますではなくて、報告書に書かないといけない。厚労省からお金はもらったことはありませんとか、これまで厚労省関係の事件に携わったことはありませんとか、誰がどんな基準でこの人選をしたのかをまず、しっかり記入しないといけないのです」

――確かに最近の企業不祥事などの第三者委報告書を見ると、メンバーの説明にかなりのスペースを割くものが多いです。

「報告書を何百ページ書いても、この委員会は信用ならんとなったら、終わりだからです。報告書を出した後に内容への批判はもちろん出てくるわけですが、大前提として『これは第三者委員会ではない』と批判されることはないという点をまず押さえないといけない。調査費用もいただくわけですから。企業なら株主のお金。国の問題なら国民の税金を使うわけです。それなのに、そもそも誰もお前らに頼んでいないよ、あんたらにそんな資格ないよと思われてしまったら、どんないいものを書いてもだめになってしまいます」

――特別監察委の樋口委員長は、厚労省の外郭団体「労働政策研究・研修機構」の理事長です。厚労省労働政策審議会の会長でもあります。