特別監察委の調査法、問題 外郭団体からトップ、疑問 統計不正検証、専門家は - 朝日新聞デジタル(2019年2月9日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13886087.html
http://archive.today/2019.02.09-014646/https://www.asahi.com/articles/DA3S13886087.html

厚生労働省による「毎月勤労統計」の不正調査を検証する「特別監察委員会」について、8日の衆院予算委員会で改めて第三者性への疑義が浮かび上がった。特別監察委は再検証を進めているが、第三者による報告書に詳しい久保利英明弁護士は朝日新聞のインタビューに対し、委員長が厚労省の外郭団体理事長である時点で「信用ならない」と指摘。国会に調査委員会を設けるべきだと訴えた。▼1面参照
久保利氏は、日本弁護士連合会が2010年に出した第三者ガイドラインの作成メンバー。有志による「第三者委員会報告書格付け委員会」を14年につくって委員長を務め、企業などの不祥事を調べた20近くの報告書を評価してきた。
特別監察委は1月16日の設置から6日後に全29ページの中間報告書を公表。厚労省の不正が長く続いたことを「言語道断」とする一方、担当職員らに意図的な不正行為や隠蔽(いんぺい)する意図は認められなかったと認定した。公表後、職員らへの聞き取りの約7割を「身内」がしていたことが判明した。
久保利氏はこの報告書について、「調査期間があまりに短く、分量も少なすぎる」とする。通常、第三者委の報告書の作成は数カ月かかり、数百ページに及ぶのも珍しくないという。
内容も、認定の前提となる報告書の「事実関係」が「社内調査でもわかる事象の推移を並べただけ」とした。電子メールなどを分析する「デジタルフォレンジック」(電子鑑識)、アンケート、内部通報窓口の設置といった別の手法で証拠を補強せず、聞き取りに頼って意図の有無を認定したことを「ありえない」と批判した。
また、聞き取り対象に厚労相事務次官といった首脳級が入っていないことも「組織を揺るがす案件が出たとき、歴代トップにヒアリングしない第三者委は考えられない」と話した。
そして、「内容以前にこの委員会は信用ならないとなったら終わり」と述べ、委員会メンバーと厚労省の利害関係に触れる記述がないことを問題視。樋口美雄委員長が、厚労省所管の「労働政策研究・研修機構」の理事長である時点で「資格はない」と語った。同機構は例年、国から約25億円の補助金を得ている。
厚労省は7日、特別監察委の事務局に元最高検検事ら3人の弁護士を迎えると発表し、再検証の第三者性をアピールする。ただ、久保利氏は福島第一原発事故を検証した国会事故調査委員会のように「国会に調査委を作るべきだ」と主張。「うその統計で説明されてきた国会の名誉にも関わる。超党派の委員会で、専門性の高い弁護士を雇えばかなり良い調査が出来るはずだ。3カ月、半年かけても、きちんと調査して再発を防ぐことが国の将来のために必要だ」とした。(志村亮)