(詳報)立憲「ややこしい質問ですが」 首相はゼロ回答 - 朝日新聞(2018年12月6日)

https://www.asahi.com/articles/ASLD64JFDLD6UEHF004.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0909-06/https://www.asahi.com:443/articles/ASLD64JFDLD6UEHF004.html

外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案をめぐり、安倍晋三首相に対する質疑が参院法務委員会で行われ、今国会のヤマ場を迎えました。野党の追及や首相の説明をタイムラインで追いました。

......


入管法改正、急ぐ与党に野党「やり直しを」 採決7日か
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)改正案について、与党は6日午前の参院法務委員会理事会で同日中の委員会採決を野党側に提案した。立憲民主党共産党は反対し、山下貴司法相の問責決議案の提出などを検討。採決は7日にずれこむ可能性がある。
同委は6日、6時間の審議を行い、午後には安倍晋三首相が2時間出席する。6日の審議終了時には審議時間は20時間45分となり、衆院の審議時間の17時間15分を上回る。与党側は「十分な審議時間を確保した」とみなし、首相出席の質疑終了後、採決する考えだ。
主要野党は、外国人労働者の受け入れ態勢が固まっていないなどとして、採決を急ぐ政府与党を批判。来年の通常国会で審議をやり直すべきだと訴え、今国会での成立に反対している。法務省による失踪した外国人技能実習生への聞き取り調査が実態と異なるなどとし、山下氏の問責決議案の提出を検討。委員会採決に先立ち、横山信一法務委員長(公明党)の解任決議案提出も検討している。

これが歴史的な政策転換の論戦か 記者が見た入管法審議 - 朝日新聞(2018年12月6日)

https://www.asahi.com/articles/ASLD56QVGLD5ULFA03V.html
https://megalodon.jp/2018-1206-2217-24/https://www.asahi.com:443/articles/ASLD56QVGLD5ULFA03V.html

内山修記者の目

安倍晋三首相が出席した6日の参院法務委員会。政府はこれまでの答弁を繰り返すばかりで、野党も攻め手を欠いたまま。およそ2時間の審議は、新味に欠けるやりとりばかりで埋め尽くされました。
なんでこれほど空疎な論戦が続くのでしょうか。実は、入管法改正案の条文には、雇用契約や受け入れ機関の基準など外国人労働者の受け入れにかかわる根幹の部分が書き込まれていません。成立後に、役所が裁量で決めることができる「省令」で定めるからです。受け入れる外国人の「上限値」となる業種別の見込み数についても、改正法の成立後に定める「分野別運用方針」に盛り込まれます。
入管法はこれまでも、すべての在留資格の詳細な運用方針は、法律ではなく省令で定めてきました。ただ、今回は訳が違います。改正案は外国人を「労働者」として正面から受け入れます。「国際貢献」という建前の裏で、30年近く技能実習生や留学生を低賃金で働く人材、いわば「単純労働者」として使ってきた政策を大きく転換するのです。にもかかわらず、法案の詳細が決まっていないことを受けて、政府は国会審議で「検討中」を繰り返してきました。
中身が生煮えのままですが、政府・与党は、あす7日に法務委員長の解任決議案などを否決したうえで、同日中に参院本会議で改正法を成立させる考えです。
そうなればあと半年もしないうちに、新しい在留資格外国人労働者がやってくることになります。政府は、どうしてこれほどまでに急ぐのでしょうか。
その理由をたどると、人手不足の解消を求めて首相官邸に「早期の成立」を要望する経済界の存在に行き着きます。10月の自民党法務部会では、来年4月の制度導入をめざす理由を問われた法務省幹部が「総理や官房長官の指示」と答えて、失笑を誘う場面もありました。
今国会中の成立を確実にするため、法案の詳細にはあえて踏み込まない。議論の深入りは避ける。野党が「白紙委任しろというのか」と批判しても、最後は数の力で採決を強行する。これが、担当記者として見た、歴史的な政策転換に対する審議の実態です。
首相官邸には、もしかしたら来年の統一地方選参院選が念頭にあるのかもしれません。「カネ」を握る経済界に大きな「貸し」ができるのだから、さぞ心強いことでしょう。でも、これは人にまつわる法案です。やってくるのも、迎え入れるのも人間です。「失敗したらやめる」とは簡単にいきません。
その覚悟が、政府・与党にはどれほどあるのでしょうか。今国会の審議をずっとウォッチしていますが、空しさばかりが募ります。(内山修)

実習生69人死亡を公表 15〜17年法務省資料 - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120702000161.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0912-21/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120702000161.html

外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案を巡り、外国人技能実習生が二〇一五〜一七年の三年間で計六十九人死亡していたことが、六日の参院法務委員会の審議で分かった。立憲民主党の要請を受け、法務省が関連資料を示した。実習生の劣悪な労働環境が改めて浮き彫りになり、野党が反発を強める中、与党は七日の参院本会議で改正案を採決し、成立を図る構えだ。 (木谷孝洋)
資料によると、死亡者の内訳は、男性が五十四人、女性が十五人。年齢別では、二十歳代が四十六人、三十歳代が十九人で十歳代も二人いた。出身国は中国が最多で三十二人、次いでベトナムが二十六人。
死因は心筋梗塞や急性心不全くも膜下出血などが目立ち、自殺は六人いた。実習後に船から落ちて死亡したり、現場に向かう車内で意識を失い亡くなった例もあった。同僚の実習生に刃物で刺された人もいた。
同省の集計では、日本に在留する外国人実習生は一七年末で約二十七万人。
参院法務委で安倍晋三首相は、資料の内容について「見ていないから答えようがない。今までの制度に問題がなかったと思っているわけではない」と語った。
山下貴司法相は、死亡に至った経緯などは「プライバシーの問題なので詳細は公表できない」とした。その上で「日本人でも、業務上の死亡や疾病はあってはならない。政府を挙げて(改善に)取り組まなくてはならない」と話した。
質問した立民の有田芳生氏は委員会終了後、死亡者数が明らかになったことを受け「二十代、三十代の日本人の若者に比べはるかに高い比率で亡くなっている。技能実習制度のきちんとした総括なしに新しい制度はあり得ない」と記者団に語った。
技能実習制度を巡っては、一七年に失踪した二千八百七十人に関する調査結果で、同省は当初、86・9%が「より高い賃金」を求めたとした後、67・2%に訂正。失踪の動機について最低賃金以下の低賃金と答えた失踪者は二十二人だったが、野党は聞き取り結果を記した「聴取票」を全て書き写した集計で、三分の二に当たる千九百三十九人が最低賃金以下だったと指摘した。

<税を追う>F35も補正で補填 「第2の財布」常態化 - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120702000159.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0914-07/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120702000159.html


防衛省が二〇一五〜一七年度の各補正予算で、戦闘機F35Aの一部を生産する国内企業の設備費計百八十八億円を計上していたことが、本紙の調べで分かった。いずれも防衛省が予算要求したが本予算には盛り込まれず、補正で事実上、補填(ほてん)していた。自然災害など緊急対応のための補正予算が「第二の財布」として常態化していることが改めて浮き彫りになった。(「税を追う」取材班)
補正予算に計上したのは、国内企業をF35Aの生産に参画させるための設備投資の一部。防衛省は二〇一五年度、次年度予算で七百二十三億円を概算要求したが、設備費が盛り込まれないと、次年度を待たずに一五年度の補正予算に計上した。一六、一七年度も同様に補正で計上した。
防衛省は三年間の合計で三菱重工業に百三十六億円、IHIに四十七億円、三菱電機に六億円を支出した。機体の最終組み立てや検査を行う施設の建設費や、エンジンなどの部品製造に使う専用工具の製作費に充てられた。
防衛省補正予算を組んだ理由を「国内企業の製造態勢の早期確立のため、事業を前倒しして予算化した」と説明。「F35Aを前倒しで配備でき、専用工具の納入も早まった」と成果を強調する。
しかし、納入を前倒しできた機体はわずか一機で、一カ月配備が早まっただけだった。国内の部品製造においても、生産ラインが動いたのは昨年末から。専用工具だけ先にできても製造に入れず、部品納入が早まることはなかった。
現在は一九年度の本予算の編成中。防衛省はF35Aの取得に絡み、一八年度も補正予算を組むかどうかは「未定」としている。
防衛省は米国政府の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づき、F35Aを取得中。全四十二機のうち、五機目以降は国内企業が製造に参画している。
防衛予算を巡っては、一四年度以降、本予算だけでは賄いきれず、補正予算を組んで兵器購入に充てるようなケースが目立つ。米国製兵器の購入が急増していることが背景にある。
本紙の調べで、護衛艦や潜水艦の建造費でも、本予算に盛り込まれなかった費用が補正予算で補填されていたことが明らかになっている。

<税を追う>支払い延期問題 防衛相「異例」と認める - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120702000136.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0915-22/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120702000136.html

防衛省が国内の防衛関連企業六十二社に、装備品代金の支払い延期を要請している問題が六日の参院外交防衛委員会で取り上げられ、岩屋毅防衛相は「過去にこのような事例はない」と異例の措置であることを認めた。
岩屋防衛相は「過去に契約した部品の調達量を追加するために契約変更を検討しており、六十二社に説明会をした」と述べた。
これに対し白真勲(はくしんくん)氏(立憲民主)は、岩屋防衛相が先月三十日の会見で「やりくりが大変なので、できれば調整に応じていただきたい」と企業に協力を求めたことを指摘。「いろんなもの(防衛装備品)をいっぱい買ったから、支払いを待ってくれないと予算がオーバーすると懸念しているのでは」と追及した。
岩屋防衛相は「会見ではありていに言いすぎてしまったと反省している。もし(支払い延期が)可能になっても、十億円ぐらいの金額ではないかと思っている」と答弁した。
防衛省は、六十二社に対し、部品の追加発注と抱き合わせで、来年度に納品される装備品の代金支払いを二〜四年延期するように求めている。同省は六十二社に支払う代金の総額を明らかにしていないが、企業側は延期の要請に反発しており、相当数の企業が応じていないとみられる。
防衛省は近年、米国製兵器の輸入を急増させ、毎年返済額を上回る兵器ローンが発生。来年度の返済額は約二兆五千億円と予算を圧迫している。

秘密保護法成立から5年 議員会館前で抗議活動 - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120702000146.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0916-25/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120702000146.html

特定秘密保護法が成立して五年となった六日、市民団体のメンバーら約五十人が、衆院第二議員会館前(東京都千代田区)で同法の廃止を求める抗議活動をした。雨が降る寒い中で横断幕を掲げ、「知る権利を侵害するな 疑惑の隠蔽(いんぺい)許さない」と声をそろえて訴えた。
「秘密保護法」廃止へ!実行委員会の前田能成(よしなり)さん(66)は「この問題への関心が薄まらないよう取り組もう」と呼び掛けた。民放労連の岩崎貞明書記次長(55)は「秘密保護法の後も入管難民法、水道法と数の力で押し切ることが繰り返され、この国はめちゃくちゃになり、国際社会の信頼を失う」と語気を強めた。
秘密保護法廃止をめざす藤沢の会の斎藤隆夫さん(81)は「政府が情報を隠し、でたらめな資料を提示して安泰でいられる。この政治状況を打破しないといけない」と呼び掛けた。 (山本哲正)


<子どものあした>「妊娠期から成人まで支援」 「成育基本法案」衆院通過 - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120702000149.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0917-43/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120702000149.html

衆院は六日の本会議で、全ての妊婦・子どもに妊娠期から成人になるまで切れ目のない支援体制を保障する議員立法「成育医療等基本法案」を全会一致で可決した。相次ぐ児童虐待事件を受け、自民、立憲民主など超党派議員連盟が、社会全体で親子らを育む機運を高めようと策定。一致協力して提出にこぎ着けた。今国会の成立を目指す。
基本法案は、国や市町村、関係機関の責務として子どもの健全な成育を明記。保護者の支援を含め、教育、医療、福祉などの分野での連携を規定した。
具体策では、国に基本方針の策定や必要な財政措置を義務付け、実施状況を毎年公表するよう定めた。保護者や妊産婦の孤立を防ぐため、健診や相談支援を通じ、虐待の予防と早期発見も促す。虐待や事故などで亡くなった子どもの死因を公的機関が検証し、真相究明や再発防止につなげる体制の整備も求めた。
議連は、東京都目黒区で三月に起きた五歳女児の虐待死事件を受け、本格的な立法作業に着手。事件を防げなかった一因として、児童相談所など関係機関の連携不足が指摘されたことから「縦割り行政」の是正にも力を入れた。将来的な「子ども家庭庁(仮称)」の創設も視野に、さらなる法制化を検討していく方針。

◆虐待死根絶へ行政の分断解消
成育基本法案の超党派議連の事務局長で、小児科医でもある自民党自見英子(じみはなこ)参院議員=写真=に法案の意義を聞いた。 (大野暢子)

−法案には妊娠期からの支援を明記している。

「虐待死で最も多いのは、病院外で生まれ、その日に実母の虐待で亡くなる子どもだ。親は妊娠期に適切な受診をしていないことが多い。日本では現在、妊娠期は妊娠期の施策、出産後は出産後の施策と分かれているが、分断された取り組みでは虐待死はなくならない。親の妊娠期から子が成人するまで、切れ目のないサポートを目指すべきだ」

−子どもだけでなく、親の支援も重視した理由は。

「子どもを守るには、親を孤立させないことが大事だ。最近の研究では、体罰や暴言を受けた子どもの脳が萎縮することが明らかになってきている。精神論で親を追い詰めるのではなく、科学的知見に基づいた子育ての知識を伝えることで、子どもの適切な成育環境の整備につなげたい」

−法案は縦割り行政の弊害も意識している。

「子ども関連の施策の所管は内閣府厚生労働省文部科学省に分かれ、誰が最終責任者か分からない。法案には、ゆくゆくは『子ども家庭庁』をつくってほしいとの意味も込められている。基本法の制定はあくまでスタートだ」

◆切れ目のない医療、教育、福祉の提供
成育基本法案のポイントは次の通り。

一、妊娠期から成人までの切れ目のない医療、教育、福祉の提供

一、政府は毎年一回、施策の実施状況を公表

一、保護者や妊産婦の孤立を防ぎ、虐待の予防、早期発見

一、科学的知見に基づく子育ての知識や食育の普及

一、予防接種や健診記録のデータベース整備

一、子どもの死因を検証する体制づくり

教員残業「月45時間以内」「繁忙期100時間未満」 中教審指針案 - 東京新聞(2018年12月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120602000278.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0919-08/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120602000278.html

小中学校などの教員の長時間労働是正策を議論する中教審の特別部会が六日開かれ、公立校の教員の残業時間を原則月四十五時間以内、繁忙期でも月百時間未満とする指針案を了承した。働き方改革関連法の上限に沿う内容。文部科学省は必要な制度改正に向け検討を始めるが、罰則は設けない方針で、実効性確保が課題となりそうだ。
特別部会では、長時間勤務の縮減策などを盛り込んだ答申素案も示され、労働時間を年単位で調整する変形労働時間制の導入を提言した。文科省は繁忙状況に応じて学期中の勤務時間を引き上げる一方、夏休み中の学校閉庁日を増やし長期休暇を取りやすくするなどの活用例を想定。導入する自治体が条例化できるよう教職員給与特別措置法(給特法)の来年度中の改正を目指す。
文科省の二〇一六年度教員勤務実態調査によると、残業時間が月四十五時間以上の公立小学校教諭の割合は81・8%、公立中学校教諭は89・0%に上る。
指針案は、民間企業の時間外労働の上限を定めた働き方改革関連法を参考に、教員の目安を原則月四十五時間、年三百六十時間に設定。特別な事情があっても月百時間未満、二〜六カ月の月平均で八十時間、年七百二十時間までとし、タイムカードなどで勤務時間を客観的に捉えるべきだとした。
ただ、同法にある罰則の導入は、答申素案で「慎重であるべきだ」と指摘した。公務員の扱いに合わせるためで文科省もその方向で対応する。
また、答申素案では改革の具体策で縮減できる一人当たりの年間勤務時間数の目安も提示した。
給特法では教員に給与月額の4%相当の「教職調整額」を支給する代わりに時間外手当の支給を認めておらず、残業の大半が自主的な労働とみなされていることに「勤務時間管理が不要との認識を広げている」との見方を記したが、抜本的な見直しには踏み込まなかった。

◆もっと現場に支援を
<教育評論家の尾木直樹さんの話> 教員の長時間労働は深刻な状況にあり放置できない。働き方改革に向けた中教審の議論の方向性は間違っていないが、現状の条件のもとで労働時間をいかにやりくりするかという内容に終始した印象だ。教員配置を充実させるなどの支援によって、現場にゆとりを生むという視点をもっと強く打ち出すべきではないか。中教審では残業時間の上限に関する指針案が示され、業務の見直しによりどの程度労働時間が減るかという目安も出たが、子どもと向き合う教育現場にとっては机上の空論で、現実味がない。

先生の残業減 仕事の「引き算」本気で - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018120702000172.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0920-14/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018120702000172.html

先生の働きすぎは解消できるのか。文部科学省中央教育審議会が負担削減の素案をまとめた。部活や会議など思い切った業務の削減とともに、学校を支える人材を分厚くする知恵や財源も必要だ。
子どもの未来を担う教育にはさまざまな立場の人がさまざまな理想を抱き、時代とともに変化もする。一つ一つはもっともなことでも、スクラップなきビルドの積み重ねで「聖職」の肩の荷は重くなりすぎたようだ。
二〇一六年度の教員勤務実態調査では、一日あたりの学内勤務時間は小中学校とも十一時間を超え、十年前と比べて増えた。若手教員の割合が増えていることや、授業時数の増加、中学では部活の長時間化もその背景にある。
今回、国は働き方改革関連法に沿う内容で原則月四十五時間以内など残業時間の上限をガイドラインで示した。中教審は、夏休み中などの休みを増やし、繁忙期の勤務時間を延長するなど年単位で労働時間を調整する変形労働時間制も選択肢として提言している。
部活動では外部の指導員も活用することなども盛り込まれた。ただ、ガイドラインには罰則は想定されておらず、教育委員会や管理職が本気を見せなければ、絵に描いた餅に終わるだろう。
教職員給与特別措置法は、月額の4%相当の調整額を支給する代わりに時間外手当は認めていない。このことが管理職の労働時間についての意識を希薄にしている側面がある。会議や書類などで無駄なもの、削れるものについて教員と話し合う良い機会にもなるのではないか。
文科省も新施策を打ち出すときには、労働時間に上限がある職場で対応可能か、これまで以上に慎重に支援策などを考えるべきだ。給特法が勤務実態に合っていないという批判にも誠実に向き合う必要がある。根本的には教員を増やしていくことが一番の解決策であることも忘れてはならない。
専門家や地域により深くかかわってもらうことで、学びを細らせない方策を編み出していくことも可能なはずだ。
話す力がより重視されるようになる英語は、特別免許状を活用し、英語が母語の外国人を積極的に教員に登用することも考えてもいいのではないか。
先生はスーパーマンじゃない。そのことを前提に、支えるすべを考えたい。先生に夢や希望がなければ、子どもたちにそれらを与えることもできない。

教員の働き方見直し案 実現するには課題が多い - 毎日新聞(2018年12月7日)

https://mainichi.jp/articles/20181207/ddm/005/070/052000c
http://archive.today/2018.12.07-002123/https://mainichi.jp/articles/20181207/ddm/005/070/052000c

長時間労働が問題になっている教員について、働き方の見直しを議論してきた中央教育審議会が答申の素案をまとめた。
教員の時間外労働の上限を原則、民間と同様に「月45時間」とするよう、数値目標を定めた。さらに、夏休みなどに長期休暇を取ることで労働時間を年単位で調整する「変形労働時間制」の導入を盛り込んだ。
教員の残業時間には基準がなかっただけに、政府が教員に働き方改革の網をかぶせたことは評価できる。
文部科学省の調査では、小学教員の3割、中学教員の6割が過労死ラインとされる月平均80時間以上の時間外労働をしている。
これまで「自発的行為」としていた部活動指導や、授業準備についても素案は勤務時間と認定した。これも実態に即した判断だ。
ただし、この見直しを教育現場が実現できるかについては、少なからぬ疑問がある。
時間外労働の上限「45時間」は現実的な目標だろうか。この基準をあてはめると、現在の教員の大半が超過するとみられる。早朝、放課後に部活の指導をすれば、軽く制限枠を超えてしまうだろう。
このため、素案は部活指導については教員以外の外部人材の活用などを勧めている。だが、地域によって人材探しは容易であるまい。相当の環境整備が必要になる。
長時間労働を是正するため、教員が担う仕事を明確にしようとする方向は理解できる。だが、部活などが教員の守備範囲なのかをもっとはっきりさせないと、結局掛け声倒れに終わりはしないか。
「変形労働時間制」の効果にも疑問がある。教員が夏休みなどにまとまった休みを取ることで、学期中の平日に所定の勤務時間を超えることを許容する狙いがある。
年単位の労働時間調整には有効かもしれないが、学期中の過重労働の解決にはつながらない。夏休みは教員研修などに重なる時期でもある。
教員の長時間労働に本当に向き合うのであれば定数、教員の支援態勢なども幅広く見直す必要がある。
教員の残業代を認めず、基本給の4%を一律上乗せしている現行の給与制度が妥当かも再点検すべきではないか。さらなる議論を求めたい。

教員の働き方 制度にもっと切り込め - 朝日新聞(2018年12月7日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13801521.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0922-44/https://www.asahi.com:443/articles/DA3S13801521.html

教員の長時間労働をなくす手立てについて、中央教育審議会の部会が答申素案をまとめた。
いま先生たちが担っている仕事の、いわば「事業仕分け」をおこなったのが目を引く。
給食費口座振替にして集金や督促は自治体に、登下校の見守りは保護者や地域に委ねよう。休み時間の子どもたちの相手も、必ずしも先生がしなくてよいのではないか。学校行事や進路指導でも外部の人の手を借り、先生の負担を減らそう――。そんな提案が並ぶ。
教員は過労死が多いとされ、心を病んで休職する人も例年5千人前後に及ぶ。「先生がするのが当たり前」と考えられていたものを、一つひとつ見直していかないと、いつまでも状況は変わらない。部会のそんな問題意識はうなずける。
ただ実現するには関係者・機関との対話が欠かせない。
保護者や外部の協力をどこまで得られるかは、地域で事情が異なる。教育委員会が入って学校、PTA、住民をつなぎ、納得ずくで進めなければ大きな混乱を招く。NPOとも連携し、放課後の子どもの居場所づくりや学習支援も進めてほしい。
一方で、より根幹にかかわる制度改革については、素案は切り込み不足の感が否めない。
従来「自発的な居残り」とされてきた部活動の世話なども勤務時間と認めたうえで、時間外の仕事は「月45時間まで」と目安を決めたのは前進だ。しかし自治体の判断で導入してよいとされた「変形労働時間制」には危うさがつきまとう。
勤務時間の総計が通年で一定の枠に収まれば構わない。学期中に忙しい分、たとえば夏に休みをまとめ取りすればいいという制度だ。だが人間は「休みだめ」が利くようにはできていない。出勤が続いたらとにかく休ませる。残業の多い学校の管理職には研修を義務づけ、警告する。そんな歯止めが必要だ。
基本給の4%を一律上乗せ支給するかわりに、何時間働いても追加払いはしないという、教員だけの特別法の見直しも、素案は先送りした。教員の「サービス残業」を金額に直せば年間9千億円に及ぶと推計される。
直ちに是正できないまでも、ただ働きの放置は許されない。役割に応じて支給する手当の拡充など、当面できる対策を講じつつ、働きに報いる制度への移行を今後も探るべきだ。
何より仕事量に見合う先生や職員を配置しなければ、残業はなくならない。対応が現場の業務改善や工夫にとどまっては、働き方改革の名に値しない。

(私説・論説室から)東方政策ヒントにしては - 東京新聞(2018年12月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018120502000178.html
http://web.archive.org/web/20181205072229/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018120502000178.html

米軍基地の大幅な特権を認めた地位協定など、従属的な面も顕著な日米関係。トランプ大統領の登場で、合意をひっくり返されるリスクも高まる。米国依存からの脱却を進めていくことも必要だろう。
その方策を考えるための先例として、ドイツの週刊誌「シュピーゲル」アジア特派員のウィーラント・ワーグナーさんは、西ドイツの「東方政策」を挙げた。滞在十五年の日本通。離任会見も流ちょうな日本語だった。
東方政策は、冷戦時、一九七〇年代のブラント政権時代、ソ連、東欧との和解を図り、東ドイツとの条約では互いに国家として認め合い、関係を正常化した。ワルシャワユダヤ人慰霊碑前でひざまずいたブラント首相の姿は、西独の国際的イメージも高めた。
まだ、米ソが激しく対立する中、米国はじめ西側諸国の了解も取り付けながら、安全保障として武力行使の放棄を選んだ。後のドイツ統一の下地を作ったともいえる。
日本も地域の緊張を緩和し「米国リスク」を減らして、米軍基地による負担軽減などにもつなげていけないか。「もっと堂々と米国に発言したほうがいい。米国にもいろいろな勢力があり、ロビー活動はできる」。ワーグナーさんはアドバイスする。
来年は二十カ国・地域(G20)首脳会合の議長国。さまざまなチャンネルで、各国と絆を深めるチャンスでもある。 (熊倉逸男)

辺野古に土砂投入へ 民意排除の露骨な姿勢だ - 毎日新聞(2018年12月7日)

https://mainichi.jp/articles/20181207/ddm/005/070/050000c
http://archive.today/2018.12.07-002420/https://mainichi.jp/articles/20181207/ddm/005/070/050000c

米軍普天間飛行場辺野古移設へ向け、政府は埋め立て工事の土砂投入を14日に始めると発表した。
政府と沖縄県は11月28日まで、杉田和博官房副長官と謝花喜一郎副知事の間で4回にわたり集中協議を行ったが、平行線で終わっている。
土砂投入の日程は12月3日、協議の終了を待っていたかのように県側に通知された。協議はむしろ、県の反対を押し切るためのアリバイづくりだったとしか思えない。
政府は辺野古のある名護市と隣接する本部町の港から埋め立て用の土砂を船で運び出す方針だったが、同町は台風で港が破損したとの理由で使用許可申請を受理していない。
公共の港湾施設から土砂を搬出できる見通しが立たないため、政府は民間企業の桟橋を利用する奇策に出た。そこまでして、なりふり構わず工事を急ぐのはなぜか。
辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票が来年2月にあることを意識しているのは間違いなさそうだ。
県知事選で玉城デニー氏が当選したのに続き、県民投票でも反対が多数を占めることが想定される。来年4月に衆院沖縄3区補選、夏には参院選も控え、「辺野古ノー」の民意が重ねて示される可能性がある。
それまでに埋め立てを既成事実化したいのだろう。いったん埋め立てた海を復元するのは難しい。後戻りできない状況をつくり、選挙で辺野古移設の是非を問う意味を薄れさせるのが政府の狙いではないか。
民意をはねつけ、露骨に国家権力の都合をゴリ押しする姿勢は「沖縄に寄り添う」と繰り返してきた安倍晋三首相の言葉と相反する。
埋め立て予定海域で軟弱地盤が見つかったことも政府の焦りを誘っているようだ。県側は工事完了まで13年かかると独自に試算する。そうだとすれば「一日も早く普天間返還を実現するため」という政府の大義名分が説得力を失いかねない。
首相は玉城知事と会談した際、「米側との計画通り移設作業を進めていきたい」と述べた。
日米政府間の合意は重いが、だからといって、地元の民意を無視してよいということにはならない。
移設実現の見通しが立たないまま、工事を進めることが自己目的化しては意味がない。

普天間意見書を可決 小金井市議会 国民的議論求め - 琉球新報(2018年12月7日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-845228.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0925-57/https://ryukyushimpo.jp:443/news/entry-845228.html

【東京】東京都小金井市議会は6日、米軍普天間飛行場の移設問題について全国で議論することなどを求める意見書を、旧民進党系会派や共産党会派などの賛成多数で可決した。辺野古新基地建設の阻止に向け有志が取り組む「新しい提案」の実践に基づくもので、意見書の可決は全国初。沖縄の基地問題についての世論を喚起し、全国各地での議論にも影響を与えそうだ。
意見書は辺野古新基地建設工事を中止し普天間基地の運用停止を求めると共に、普天間基地の代替施設が国内に必要かどうかを国民全体で議論するよう求めた。
代替施設が国内に必要だとの結論になった場合には「沖縄県以外の全国の全ての自治体を候補地」として検討し、基地が一地域に一方的に押し付けられないよう訴えている。宛先は衆参両院議長や首相など。
賛成討論に立った共産会派の水上洋志市議は「辺野古新基地建設の中止と普天間基地の運用停止を求め、国民的議論を提起していることに賛同した」と狙いを語った。片山薫市議は「意見書の提出は第一歩であり、この間に喚起された市民の関心をさらに広げる必要がある」と強調した。
反対討論はなく採決を行い、賛成13、反対10の賛成多数で可決した。
意見書のきっかけとなる陳情を提出した、小金井市在住で県出身の米須清真氏は「小金井市の市議たちが陳情内容に真剣に向き合ってくれた結果だ。全国各地で取り組みが広がれば、今後予想される司法の場でも(県内移設を止める)証拠の一つに活用できるのではないか」と可決を喜んだ。

<金口木舌>二風谷判決と沖縄 - 琉球新報(2018年12月7日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-845214.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0927-00/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-845214.html

「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み、独自の文化を保っており、先住民族に該当する」。1997年3月、札幌地裁で言い渡された判決に原告のアイヌ民族の人々は驚き、涙を流した

▼司法の場で初めてアイヌ先住民族と認めた、二風谷(にぶたに)ダム建設を巡る訴訟の判決だ。ダムに水没した地域を含め、平取町(びらとりちょう)二風谷の沙流川(さるがわ)沿いはアイヌの伝統的な舟下ろし行事「チプサンケ」が伝わる聖地だった
▼町出身でアイヌ民族として初めて国会(参院)議員も務めた萱野茂さん(故人)らが、土地の明け渡しを拒否して法廷で闘った。判決はダムが完成していたことから建設差し止め請求を棄却したが、土地収用の違法性を指摘した
▼判決の根拠の一つに、民族的マイノリティーの権利保護を定めた国際自由権規約27条があった。政府が2008年にアイヌ民族先住民族と認める前の画期的な判断だ。判例は4日に京都地裁に提起された琉球遺骨返還請求訴訟でも訴状に引用された
旧帝国大学の人類学者が持ち去った遺骨を取り戻す運動もアイヌ民族が先行し、一部で返還を勝ち取っている。近代以降の同化政策など、アイヌと沖縄に共通する点は多い
▼しかし政府は沖縄の人々の権利保護を求めた国連自由権規約委員会の勧告を無視している。米軍基地問題を含め、政府は沖縄に対する政策を見直す時期に来ている。