国家権力=ライオン、憲法=ライオンの檻 ぬいぐるみ使った講演 全国で人気 - 東京新聞(2018年12月6日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120602000266.html
https://megalodon.jp/2018-1206-1815-36/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120602000266.html


国家権力が「ライオン」なら、ライオンが暴れないように枠をはめる「檻(おり)」が憲法−。広島市の弁護士楾(はんどう)大樹さん(43)が、動物のぬいぐるみを手に憲法を分かりやすく解説する講演が人気だ。二〇一五年から全国で約二百二十回登壇してきた。楾さんは「安倍政権下のここ五、六年、安全保障関連法の成立や改憲の動きなど問題が多い。最低限憲法の初歩を伝えたい」と訴える。 (山本哲正)
「ライオンを契約書で縛る。これが立憲主義。檻の範囲で政治をしてくれれば私たちは安心して暮らせます」。今月一日、埼玉県上尾市で講演した楾さんは、小学生の親子ら約五十人を前に、檻に見立てたかごをライオンのぬいぐるみにかぶせてみせた。
ぬいぐるみを使った講演を始めたきっかけは一三年、改憲発議の要件を過半数に下げる「九六条改憲」議論に危機感を抱いたからだ。SNSや講演で立憲主義の大切さを説いたものの、「難しいことを分かりやすく話すのは難しい」。悩んでいたある日、ふと「檻の中のライオン」が頭に浮かんだ。「これで語ると憲法や時事が一通り分かる」と喜んだ。
九六条改憲は「ライオンが自分の入れられた檻を軟らかくしたいと言ってる」「気を付けていないとライオンは檻の外に出たがる」。講演で実践すると笑いが起きた。こうしたたとえ話で構成した憲法入門書「檻の中のライオン〜憲法がわかる46のおはなし〜」(かもがわ出版)を一六年に出版した。初版は三千部だったが、簡明な内容が評判を呼んで現在十一刷約一万六千部に達する。
講演や出版活動の中で楾さんの関心は、憲法の初歩が広く知られない理由の探求に向かった。小学六年の社会科教科書を調べると気掛かりな点が幾つかあった。例えば、基本的人権を守らなければいけないのは誰か? 大手の教科書は「わたしたちは、憲法の定める権利を正しく行使するとともに(中略)国民としての義務を果たしていく必要があります」。楾さんは「別の教科書も『私たち』かのように書いていた。その前に国家権力に私たちの人権尊重を命じている点をきちんと書かなければならない」と批判する。
今年九月には、絵本「おりとライオン」(かもがわ出版)を出版した。文章は楾さん、絵はイラストレーターの今井ヨージさんが手がけた。全編ストーリー仕立てで、横暴なライオンを檻に閉じ込めるまでを描く。楾さんは「学校での主権者教育にも役立ててほしい」と期待する。
自民党は、自衛隊明記などの同党改憲案の今国会での提示を断念し、安倍晋三首相が目指す来年夏の参院選までの国会発議は困難な情勢になっている。楾さんは「政治家も国民も、憲法をよく知らないうちに変えるのは理性的ではない。ライオンが自ら檻を広げたがる動きに、国民の側は一人一人自分の頭で考え『大丈夫かな』という目を向けないと」と話している。

けんぽう絵本 おりとライオン

けんぽう絵本 おりとライオン

改正水道法成立=運営権の民間委託促進 - 時事ドットコム(2018年12月6日)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120600031&g=pol
http://web.archive.org/web/20181206054015/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120600031&g=pol

水道事業の経営基盤を強化する改正水道法が6日午後の衆院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。人口減少による収益減や施設の老朽化などで経営が悪化する水道事業について、自治体が運営権を民間企業に委託する「コンセッション方式」の導入促進が柱。立憲民主党など野党は、民間企業の参入により水道サービスの低下を招く恐れがあるとして反対していたが、与党側が押し切った。
同方式は、民間のノウハウを生かしてコスト削減につなげるのが狙い。同方式を導入しやすくする規定を盛り込み、自治体は国から水道事業を行う認可を受けたまま、民間に運営権を売却できるようにする。上水道事業で国内には導入実績はないが、宮城県浜松市が検討している。

(政界地獄耳)今国会で政権は何を目指したか - 日刊スポーツ(2018年12月6日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812060000162.html
http://archive.today/2018.12.06-010707/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812060000162.html

★10日に会期末を迎える国会は間もなく閉会する。自民党総裁選挙で圧勝の3選を果たし、向かうところ敵なしといった安倍政権だが第4次安倍改造内閣を発足させ、憲法改正への強い意欲を示し、側近の下村博文憲法改正推進本部長に据えたものの、今国会では野党はその誘い水に乗らず、連立を組む公明党も来夏の参院選を前に憲法改正が争点になってはたまらんと笛吹けど踊らず、当然自民党内もその機運は高まっていない。4日、参院憲法審査会は継続審議中の国民投票法改正案の来年以降への先送りが決まった。

★つまり憲法問題は来夏の参院選が終わるまで塩漬けが決まったといっていい。では10月24日からの48日間、今国会で政権は何を目指したのか。所信表明で首相・安倍晋三は「次の3年、国民と共に新しい国創りに挑戦する。挑戦者としての気迫は、いささかも変わらない」としたものの、既に憲法改正は出ばなをくじかれ、「今こそ、戦後日本外交の総決算を行う」といいながらロシアが1956年の日ソ共同宣言を認めるのならば2島は無条件で返還されると思い込み、北方領土4島のうち2島を捨てるという失策をやらかした。一方、トランプ政権には武器を大量に買うことで機嫌を取る。少なくとも外交に一貫性があるとはいえず、国会では自身のずさんな政治資金処理を巡り地方創生相・片山さつきや五輪相・桜田義孝の答弁能力ばかりが話題になった。

★結果、この国会で可決したのはさして審議もせずに通った水道民営化と入管法改正。野党も本気でつぶしにはかからなかった。国民生活に直結するテーマに自民党も野党も緊張感をもってあたらないのは、どうせ強行採決で可決するというあきらめがあるのだろうか。フランスの黄色いベストは日本にはなじまないか。(K)※敬称略

自民改憲4条文案 今国会提示見送り - 東京新聞(2018年12月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120602000139.html
https://megalodon.jp/2018-1206-0904-51/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120602000139.html

衆院憲法審査会の森英介会長(自民)と与党幹事らは五日、国会内で協議し、野党の反発を踏まえて六日の憲法審開催を見送ることを決めた。十日までの今国会の会期で、六日は最後の定例日。与党は会期を延長しない方針で、自民党が今国会で目指していた改憲四項目の条文案提示は、見送られることになった。 (清水俊介)
協議に先立ち、野党筆頭幹事の山花郁夫氏(立憲民主)は五日、与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)と会談。先月二十九日の衆院憲法審が野党六党派欠席で開かれたことから「憲法審を開く環境にない」と強く求めた。新藤氏は「重く受け止める。憲法審の運営を正常化させることは極めて重要なことだ」と応じた。
条文案の提示が見送られることについて、新藤氏は「憲法改正に向かって国民議論を深めていく方向に、何の変わりもない」と記者団に強調した。今国会は、衆参両院の憲法審で実質的な議論を一度も行わずに閉会する見通し。
改憲を巡り自民党は、今年中に改憲案を国会発議することを目指し、議論の加速を図った。野党や世論の反発が大きく、断念した。

<税を追う>取材班から 戦闘機で買えるもの - 東京新聞(2018年12月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120602000125.html
https://megalodon.jp/2018-1206-0906-34/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120602000125.html

「毎回、驚きと怒りをもって読んでいます。登場する数字が大きすぎて実感を持てません」「一般人は『兆』だとピンと来ないので、庶民目線で比較できるものを載せたらどうか」
複数の読者からそんな声が寄せられた。たしかに記事の見出しだけでも「兵器ローン残高5兆円突破」「米製兵器維持費2兆7000億円」「地上イージス6000億円超も」と、とてつもない数字が並ぶ。
たとえば米国製の戦闘機F35は一機百億円以上する。都市部で定員九十人の認可保育所を建てる場合、厚生労働省は建物費用を約二億円と想定しており、土地があれば一機分で少なくとも五十カ所、四千五百人分を建てることができる。
防衛省は二〇二四年度までに四十二機購入する予定だが、さらに約百機を追加購入する方針が五日、明らかになった。昨年度の保育所の待機児童は全国に二万七千人。六機で全員分の保育所を建てられる計算だ。
「日本から約束があったが、F35などを数多く購入することは非常に感謝している」。先月末、アルゼンチンでの日米首脳会談の冒頭で、トランプ大統領は安倍首相にお礼を伝えた。百機でざっと一兆円。ディール(取引)好きのトランプ氏のことだから大喜びするに違いない。
一機でも二機でも減らしてくれれば、大勢の子どもたちが保育所で元気に遊べるのに。母親たちの願いが聞こえてきそうだ。 (望月衣塑子)

漁業・水道・種子 誰のための改革か - 東京新聞(2018年12月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018120602000169.html
https://megalodon.jp/2018-1206-0909-03/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018120602000169.html

漁業法改正の審議大詰め。改正水道法は今日にも成立見込み。種子法は既に廃止になった。集約化、効率化、企業化の名の下に。どうなる海と水とコメ−。
十月、安倍晋三首相は臨時国会召集に伴う所信表明演説水産業改革に意欲を見せた。
七十年ぶりという漁業法の抜本的改革だ。規制改革推進会議がまとめた改革案に基づく改正法案が先月末、入管難民法の審議の陰で衆議院をひっそり通過した。

◆規模拡大と「生産性」
「漁獲量による資源管理を導入し、船のトン数規制から転換する。大型化を可能とすることで、漁業の生産性を高めます」
そして「漁業権の新たな付与について、法律で優先順位を廃止し、養殖業の新規参入、規模拡大を促してまいります」という。
水産資源が枯渇してしまわないよう規制を強めつつ、民間による漁業への参入を促す。外資が入る道も広がる−。安倍政権お得意の「成長産業化」。要は相変わらずの大型化、規模拡大による「生産性」の向上だ。
漁業権とは、沿岸漁場の一定の区画で独占的に漁業を営む権利のことだ。旧法でも企業は漁業権を獲得できた。しかし、地元漁師が優先権を持っており、漁協がそこで漁をしたいと言えば、企業側は引き下がらざるをえなかった。
優先順位を廃止して、漁協に未加入の民間企業も、沿岸漁業へ参入しやすくするのである。
果たして、それでいいのだろうか。漁師にとって漁場(ぎょば)は単なる「生産手段」ではないからだ。
岡山県備前市日生(ひなせ)。縄文時代から続くという瀬戸内屈指の漁のまち。身詰まりのよいカキの産地としても知られている。
高度経済成長期。干拓、沿岸開発、林立するコンビナート、そして人口増加に伴う生活排水の流入に痛めつけられて、水揚げは激減し、豊かな海は死にかけた。

◆浜の漁師は守りた
「アマモの種をまこうじゃないか」。「邪魔藻」とも呼ばれた海の雑草だ。起死回生の一手として、藻場の再生を提唱したのは、海辺に暮らす漁師の直感だった。
水産試験場と協力し、漁師たちが海で種をまく。アマモが成長するに連れ、好循環をもたらした。
酸素が豊富に供給されて、プランクトンが増殖し、魚が増えた。
「海中の森」が日差しを調節し、夏場のカキの斃死(へいし)は減った。
これまでにまいたアマモの種は、一億粒にも上るという。日々の手入れも怠らない。
「漁業とは、海の命を搾取し続けることではありません。海のお世話をすることです」と、日生の漁師に教わった。
浜の漁師は、そこで未来を生き続けるために種をまく。経済の原理、資本の論理だけでは、恐らく海を守れない。持続可能性を維持できない。
東日本大震災後の二〇一三年、宮城県は「創造的復興」を掲げて水産特区を導入し、沿岸漁業権を民間企業に開放した。
これを受け、地元漁業者と仙台市の水産卸業者が出資して、養殖ガキの生産、加工、販売を一括して手掛ける会社を起こしたが、巨額の公的資金を投入されながら、赤字が続き、これまでに手を挙げたのはその一社だけ、あとに続くものはない。
出荷解禁日を無視したり、産地ブランドを掲げながら他地区産を流用したり、功を焦るかのような、トラブルも起こしている。漁場の開放が、必ずしも沿岸漁業の活性化やコミュニティーの再興に、つながるものではないようだ。
もう一つ、成立予定の改正水道法。自治体が施設の所有権を持ったまま、運営を民間に委ねる仕組みが導入しやすくなる。世界中で失敗例ばかりが目立ち、公営回帰が進んでいるというのにだ。
そして種子法。コメや麦など優良な主要穀物の開発と安価な供給を都道府県に義務付けてきたが、民間の参入を妨げるからとして、この春既に廃止になった。公的機関のノウハウも民間に開放すべしというオプション付きで。こじ開けられた巨大市場を欧米の多国籍企業が虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。

◆考え続けていかないと
漁業生産量はピーク時の三分の一近くに減った。自治体の財政難で水道の維持管理が困難なのも確かである。だからといって市場開放一辺倒でいいのだろうか。
公営か、民営か、市民が直接選べる仕組みも必要だ。
海も水も主食の種も、いわば“命のインフラ”だ。だからこそ、法と政治の手厚い保護を受けてきた。その“シールド(盾)”が今次々と解かれていくのはなぜなのか。一体誰のためなのか。議論は全く足りていない。国会はもちろん、私たち消費者の間でも。

外国人共生、今も手探り 入管法改正案 慎重な議論望む声 - 東京新聞(2018年12月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120502000256.html
https://megalodon.jp/2018-1206-0907-53/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120502000256.html

外国人労働者の受け入れを拡大するため、与党は週内にも出入国管理法改正案成立を目指している。だが、外国人が多く住み、長年にわたり共生を手探りしてきた自治体や団地の住人からは慎重な議論を求める声が出ている。

◆群馬・大泉町 30年で人口2割 
「買える、買えない」「納豆が食べられる、食べられない」
群馬県大泉町の町立図書館で毎週土曜に開かれている町教育委員会主催の「多言語サロン」。住民有志らが外国人向けに日本語を教える活動で、子どもから大人まで学ぶ。

 身ぶり手ぶりを交えて指導する講師は日系ブラジル人三世の三沢巌さん(52)。日本語ができないまま二十五歳で来日し、苦労した。「生活の質を上げるには、日本語を身に付けることがとても大事」と強調。外国人受け入れ拡大については、国主導で対応を充実させないと「なじめない人が増える」と心配する。
町は自動車や電器関連などの工場が集積。日系外国人の就労を解禁した一九九〇年の入管法改正で日系ブラジル人らが増え、結婚や出産などを経て定住化が進んだ。今年九月末で人口約四万一千七百人のうち、外国人は18%の七千五百人。国籍は多様化し、ブラジルのほかペルー、ネパール、フィリピンなど四十四カ国にわたる。
町によると現在、ごみの分別などの苦情はあっても目立った摩擦はない。「三十年間かけ手探りで積み重ねてきた結果」(町多文化協働課)という。
外国人の生活支援は自治体にほぼ「丸投げ」されてきた。町は全国に先駆け町内の小学校に「日本語学級」を設置。外国人の犯罪が報じられると、町が各学校に差別防止に配慮するよう連絡している。役所での手続きのため通訳を採用し、ポルトガル語の広報紙発行、職員が外国人学校で日本の制度やマナーを説明する出前講座も開く。町の本年度当初予算約百二十七億円のうち、関連費用に約一億円を支出している。
それでも課題は多い。二十代の日系ブラジル人三世の女性は「日本語を学ぶには、吸収力のある子どもはともかく、仕事や育児で疲れている大人には大変」と明かす。中学の日本語指導助手でもある三沢さんは、日本語力が「派遣切り」などの際に雇用継続の鍵にもなるとしつつ、「吸収力や学力の差は(個人差が)大きく指導は難しい」と指摘する。
村山俊明町長は十一月下旬、外国人が多く住む他の自治体と共に、外国人の施策を推進する組織の創設を求める意見書を法務省に提出。「大泉町もまだ共生がうまくいっているとはいえない。国は労働者を求めるが、われわれは生活者として考えないといけない」と訴えた。
教育の拡充に加え、外国人の高齢化対策などの課題もあり、村山町長は「受け皿が未整備のまま入管法を変えると、混乱が起きる」と指摘している。 (池田知之)

◆埼玉・川口市 半数入居の団地 
五千人近い住民のうち、半数以上を中国人を中心とする外国人が占める埼玉県川口市芝園団地掲示板には日本語と中国語の案内が貼られ、敷地内の商店街には中華料理店や中国の食材が買える店が並ぶ。
都心へのアクセスの良さなどで九〇年代後半から中国人が増え始めたが、かつては日本人と中国人のトラブルが相次いだ。ベランダからごみを投げ捨てる住民が現れ、ベンチに「中国人帰れ」と落書きされた。団地自治会は「階段や玄関前に私物やごみを放置しない」など、中国語で生活マナーを紹介した冊子を配布。団地事務所に通訳を配置し、祭りなどの交流の場も増やし、目立ったトラブルはなくなってきた。
今年二月には「多文化共生の先進的事例」として、国際交流基金自治会を表彰した。しかし自治会事務局長の岡崎広樹さん(37)は「今は『共存』しているだけで、互いに協力し合える『共生』となると課題が多い。日本人と中国人の交流の場をつくっても、ごく一部の人しか参加しないのが実情だ」と話す。 (井上峻輔)

(言わねばならないこと)<特別編>特定秘密保護法きょう成立5年 「戦争する国」へ進む - 東京新聞(2018年12月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2018120602000138.html
https://megalodon.jp/2018-1206-0910-06/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2018120602000138.html

◆弁護士・海渡 雄一さん
特定秘密保護法が国民の「知る権利」を侵す恐れがあると指摘されながら、成立して六日で五年となる。社会にどんな影響を与え、どんな問題点をはらんでいるのか、この法律に詳しい弁護士の海渡雄一さんに聞いた。 (聞き手・清水孝幸)
特定秘密保護法が成立した後、安全保障関連法、「共謀罪」法が次々と成立し、この五年で日本が「戦争をする国」になるための法律がフルスペックの状態で整った。
まず国家安全保障会議(NSC)設置法ができ、戦争遂行の機関を作った。秘密法が続き、戦争準備の情報を隠す制度ができた。そして、安保法で海外での武力行使に道をひらき、共謀罪法は戦時の反対運動を抑える仕組みを作った。安倍政権はこの路線を突き進み、この先には九条改憲と緊急事態条項の新設がある。
秘密法が適用された刑事事件はまだない。制定時の大きな反対運動から慎重に運用しているのだろう。だが、見方を変えれば、機密の漏えいに最高懲役十年という厳罰によって、公務員の内部告発、報道機関や市民運動の情報収集を萎縮させる効果が強く働いている結果ともいえる。
この五年で行政機関の情報公開も後退した。各省庁が独自に判断して開示していた情報がなかなか開示されなくなった。特に首相官邸が絡んだ情報になると、顕著だ。無理に理屈をつけて非公開にするので、公開の例外が拡大している。国民の知る権利が制約されている。
秘密法の問題点も放置されたままだ。もし市民が摘発され、刑事裁判が行われても、どんな情報の漏えいにかかわって罪に問われたのか、具体的に示されない。何が秘密かも秘密だ。行政が恣意(しい)的に特定秘密を指定し、政権に都合の悪い情報を隠す恐れがあるが、特定秘密は件名しか示されず、チェックできない。
米国は機密情報の管理が厳しい国だが、数年すると、多くが解除され、公開される。日本では特定秘密の解除後も公開されず、廃棄される。秘密法は廃止すべきだが、せめて一定期間後に公開させる制度を必ずつくるべきだ。

<かいど・ゆういち> 1955年生まれ。弁護士。秘密保護法対策弁護団の共同代表。著書に「秘密保護法対策マニュアル」など。

特定秘密保護法> 防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、国の安全保障に関する重要な情報を特定秘密に指定し、保全を図る法律。2014年12月に施行され、公務員らが外部に漏えいした場合、最高で懲役10年が科される。指定の有効期間は原則最大30年で、内閣の承認があれば延長できる。

琉球新報教育賞 共に学ぶ姿勢たたえたい - 琉球新報(2018年12月6日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-844549.html
https://megalodon.jp/2018-1206-0911-10/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-844549.html

第4回を数える琉球新報教育賞がきょう6氏と1グループに贈られる。今回は、教員との関わりによって子どもたちがどう変容したのかにも注目して選考が行われた。模範となる実践として、受賞者らの一層の活躍を期待したい。
同賞は、琉球新報創刊120年を記念して創設され、2015年にスタートした。教育現場で真摯(しんし)に子どもたちと向き合い、意欲的に研究に取り組み、創意工夫を凝らしている教員に光を当て、たたえる賞である。各校の校長らから推薦を受け、7人の専門家が選考に当たった。華やかな成果が伴わなくても、地道な努力を評価しようというところにも特色がある。
今回は工藤かや(那覇市立石嶺小学校)、友利義明(宜野座村立漢那小学校)、仲里研一郎(伊江村立伊江中学校)、屋比久保(北部農林高校)、比嘉一史(宜野湾高校)の5氏と沖縄工業電気工事士育成特別委員会(沖縄工業高校)、さらに池松真也氏(国立沖縄工業高等専門学校・教授)に初めて選考委員特別賞が贈られる。
受賞者に共通するのは、児童生徒の成長を喜びとし、共に学ぼうという姿勢だ。
合唱指導に長年取り組み、赴任校を全国レベルに引き上げてきた工藤氏は「練習に向かう子どもたちに、私も真剣に向き合いたい」と語る。
理科教育の中で地域環境に子どもたちの目を向けさせようと努めてきた友利氏は「子どもたちに自発的な探究心が生まれる瞬間」に喜びを感じてきた。
楽しさを生徒と共有しながらロボコンに熱中してきた仲里氏は「子どもたちの努力が自分にも刺激になっている」と話した。
選手、プレーヤーから指導する立場になった受賞者もいる。レスリング選手として輝かしい実績がある屋比久氏は、マットを降りた時の人間性の大切さを強調する。
演奏家よりマーチングを教えることに魅力を感じ、天職になった比嘉氏は、部活動以外の生徒の日常にも向き合ってきた。信頼関係は生徒の卒業後も続く絆となっている。
沖縄工業高校の電気工事士育成特別委員会は初めてのグループでの受賞である。電子機械科、情報電子科の教諭らが早朝講座などで生徒の資格試験受験を支えた。生徒が教諭にライバル意識を持つようにと自らも受験に挑んだ教諭もいる。メンバーは「生徒たちからもらう達成感は何物にも代え難い」と話す。
遺伝情報を解析する技術者の養成に尽力して選考委員特別賞を受ける池松氏は、沖縄の将来を見据えて人材育成を進めてきた。進学して世界レベルの研究成果を出している教え子もいるという。
受賞者が児童生徒への向き合い方を語る言葉には深い愛情がある。賞の主役は子どもたちだともいえそうだ。受賞者の情熱をたたえ、努力に学びたい。

<金口木舌>ヘイトの源流とは - 琉球新報(2018年12月6日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-844548.html
https://megalodon.jp/2018-1206-0912-31/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-844548.html

予想通りと言うべきか。辺野古新基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票で正しくない情報がネット上に出てきた。県民投票が「民間団体主催」で、個人情報流出の恐れとも書き込む

▼これは正しくない。県民投票は県民投票条例に基づき県知事が執行し、実際の投開票事務は各市町村が担う。選挙での投開票と同じような手続きとなり、民間が関与する仕組みはない
▼9月の知事選でも正しくない情報が飛び交った。ほとんどは玉城デニー氏に関する、事実ではない情報や誹謗(ひぼう)中傷の書き込みだった。琉球新報は事実に即してそれらが正しいか検証するファクトチェックを初めて実施した
在日コリアンへのヘイトでもフェイクニュースで差別をあおる言説があふれる。見ていると妙な共通点に気づく。政府の方針に対峙(たいじ)したり、批判的だったりする発言に攻撃が集中するように見える
▼海外では政府が対策に乗り出している。マレーシアで今年フェイクニュース禁止法が成立、欧州でも立法化が進む。表現の自由から立法化に慎重な声もあるが、日本には民間のファクトチェック・イニシアティブがあるだけ
フェイクニュースによる世論操作の懸念も指摘される。放置すれば民主主義の崩壊につながる。いったん流れたフェイクを打ち消すのは容易ではない。だからこそファクトチェックが必要になる。

沖縄県側の控訴を棄却 辺野古工事差し止め訴訟 - 沖縄タイムス(2018年12月6日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/355273
https://megalodon.jp/2018-1206-0913-47/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/355273

沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、無許可での岩礁破砕は違法として県が国を相手に破砕を伴う工事の差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が5日、福岡高裁那覇支部であった。大久保正道裁判長は、裁判所の審判対象に当たらないとして訴えを却下した一審那覇地裁判決を支持した。差し止めの是非について実質的な判断はせず、県側の控訴を棄却した。
県側の代理人弁護士は「知事とも相談し、上告するか検討したい」と話した。
控訴審では、県側の訴えが裁判所の審判対象(法律上の争訟)に当たるかが主な争点だった。一審判決が根拠とした「国や地方公共団体が原告となった場合、行政上の義務の履行を求める訴訟は審判対象とならない」とした2002年最高裁判決の妥当性などが審理された。
大久保裁判長は県側の訴えを「行政上の義務の履行を求める、一般公益の保護を目的とした訴訟」と認定。裁判所の審判対象には当たらないと判示し、県側の訴えを退けた。法学者らから批判のある02年最高裁判決の内容は「必ずしも不当とは解されない」とした。
県側は、名護漁協の漁業権放棄を理由に知事の岩礁破砕許可は不要とした国の主張について「辺野古新基地建設を拙速に進めるため、漁業法の解釈が恣意(しい)的にねじ曲げられた」と訴え、裁判所に実態判断を求めていた。しかし、裁判所は一、二審とも同法の解釈には言及せず、門前払いとなった。
玉城デニー知事は「憲法により裁判所に与えられた司法の任務を放棄したものと言わざるを得ないもので、残念」とコメントした。

(土砂搬出 作業再開) 度を越す 強行一点張り - 沖縄タイムス東京新聞(2018年12月6日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/355271
https://megalodon.jp/2018-1206-0915-12/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/355271

法令の運用や解釈を都合よく変更し、反対行動を力ずくで排除して、しゃにむに埋め立てを進める。強引なその手法は、数のおごり以外の何物でもない。
防衛省は5日午後、名護市安和にある琉球セメントの桟橋を使い、埋め立て用土砂の船への積み込み作業を再開した。
県は、防衛省が搬出作業に着手した直後の3日、関係法令に違反する疑いがあるとして、作業に待ったをかけた。
県の公共用財産管理規則では、桟橋の設置工事について工事完了の届け出をしなければならないが、それが行われていなかった。
県は3日に琉球セメントに立ち入り検査を申し入れている。県赤土等流出防止条例に基づく事業行為の届け出も行っていなかったという。
県の指摘で防衛省は4日、土砂積み込みを一時中断したが、5日になって、桟橋工事の完了を届け出たとして積み込み作業を再開した。
赤土条例に基づく届け出については、県との認識の違いがあり、届け出を当面見送る考えを示した。
玉城デニー知事が指摘するように、少なくとも立ち入り検査が完了するまで積み込み作業を止めるのがまっとうなやり方である。
だが、辺野古埋め立てを巡っては一事が万事、こんな調子である。一体、この国で、政府による強権の行使をチェックするのは誰なのか。
立法や司法がチェック機能を高めなければ三権分立の形骸化は止められない。

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5日に控訴審判決が出た辺野古埋め立て訴訟で問われたのも、行政による法令の運用・解釈の変更が妥当かどうか、という点だった。
だが、司法は県が求めた判断を回避し、県の敗訴を言い渡した。
埋め立てのため海底の岩礁を破砕する場合、県漁業調整規則に基づいて県の許可を得る必要がある。
なのに無許可で岩礁破砕を伴う工事を実施したとして、国を相手に工事の差し止めを求める裁判を起こした。
福岡高裁那覇支部は、「裁判所の審理対象ではない」と県の訴えを棄却した。一審同様の敗訴である。
「地元漁協が漁業権を放棄しているので県の許可は必要ない」というのが国側の主張だ。
県の主張は退けられたが、福岡高裁の判決は、県の許可が必要な事案かどうかという肝心な点については触れていない。

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3月の那覇地裁判決は、最高裁判例を引用し、「県の訴えは不適法」と却下した。那覇高裁も同じ論法で、実質的な判断を避けたのである。
岩礁破砕の許可を巡っては、水産庁が従来の見解を変更したいきさつがある。県が強い不信感を抱いているのはそのためだ。
国は、国民の権利利益の救済を目的とした行政不服審査法を使って、県知事が行った埋め立て承認撤回の効力を一時的に停止し、司法判断を待たずに工事を再開した。
解釈権の乱用による工事の強行は度を越している。

非常用電源の配線、9年前から接続されず 泊原発3号機 - 朝日新聞(2018年12月6日)

https://www.asahi.com/articles/ASLD54J3LLD5ULBJ00G.html
http://archive.today/2018.12.05-223843/https://www.asahi.com/articles/ASLD54J3LLD5ULBJ00G.htm

北海道電力が再稼働をめざす泊原発3号機(泊村)で、非常用ディーゼル発電機1台の配線が2009年の運転開始時から正しく接続されず、起動しない恐れがあったことがわかった。泊原発では07、09年にも非常用発電機に不具合が見つかり、運転中の原発を停止させるなどした。原子力規制委員会は5日、詳しく調べる方針を決めた。
非常用発電機は、停電で外部電源を失ったときに原子炉などを冷やすのに欠かせない重要設備で、1基に2台ずつある。規制委によると、北電が11月9日、点検中に3号機の発電機を起動しようとしたところ、1台が動かなかった。配線の端子がビスで固定されておらず、何らかの原因で端子が外れて、起動スイッチの信号が伝わらなくなっていたらしい。
今年9月の北海道地震では、1〜3号機とも道内全域の停電(ブラックアウト)で外部電源を失ったが、全6台の発電機が起動し、プール内の使用済み燃料を冷やし続けられた。規制委の更田豊志委員長は「(過去のトラブルで)一度痛い目にあっているのに凡ミスが起きるのはおかしい」と述べた。(小川裕介