<子どものあした>「妊娠期から成人まで支援」 「成育基本法案」衆院通過 - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120702000149.html
https://megalodon.jp/2018-1207-0917-43/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120702000149.html

衆院は六日の本会議で、全ての妊婦・子どもに妊娠期から成人になるまで切れ目のない支援体制を保障する議員立法「成育医療等基本法案」を全会一致で可決した。相次ぐ児童虐待事件を受け、自民、立憲民主など超党派議員連盟が、社会全体で親子らを育む機運を高めようと策定。一致協力して提出にこぎ着けた。今国会の成立を目指す。
基本法案は、国や市町村、関係機関の責務として子どもの健全な成育を明記。保護者の支援を含め、教育、医療、福祉などの分野での連携を規定した。
具体策では、国に基本方針の策定や必要な財政措置を義務付け、実施状況を毎年公表するよう定めた。保護者や妊産婦の孤立を防ぐため、健診や相談支援を通じ、虐待の予防と早期発見も促す。虐待や事故などで亡くなった子どもの死因を公的機関が検証し、真相究明や再発防止につなげる体制の整備も求めた。
議連は、東京都目黒区で三月に起きた五歳女児の虐待死事件を受け、本格的な立法作業に着手。事件を防げなかった一因として、児童相談所など関係機関の連携不足が指摘されたことから「縦割り行政」の是正にも力を入れた。将来的な「子ども家庭庁(仮称)」の創設も視野に、さらなる法制化を検討していく方針。

◆虐待死根絶へ行政の分断解消
成育基本法案の超党派議連の事務局長で、小児科医でもある自民党自見英子(じみはなこ)参院議員=写真=に法案の意義を聞いた。 (大野暢子)

−法案には妊娠期からの支援を明記している。

「虐待死で最も多いのは、病院外で生まれ、その日に実母の虐待で亡くなる子どもだ。親は妊娠期に適切な受診をしていないことが多い。日本では現在、妊娠期は妊娠期の施策、出産後は出産後の施策と分かれているが、分断された取り組みでは虐待死はなくならない。親の妊娠期から子が成人するまで、切れ目のないサポートを目指すべきだ」

−子どもだけでなく、親の支援も重視した理由は。

「子どもを守るには、親を孤立させないことが大事だ。最近の研究では、体罰や暴言を受けた子どもの脳が萎縮することが明らかになってきている。精神論で親を追い詰めるのではなく、科学的知見に基づいた子育ての知識を伝えることで、子どもの適切な成育環境の整備につなげたい」

−法案は縦割り行政の弊害も意識している。

「子ども関連の施策の所管は内閣府厚生労働省文部科学省に分かれ、誰が最終責任者か分からない。法案には、ゆくゆくは『子ども家庭庁』をつくってほしいとの意味も込められている。基本法の制定はあくまでスタートだ」

◆切れ目のない医療、教育、福祉の提供
成育基本法案のポイントは次の通り。

一、妊娠期から成人までの切れ目のない医療、教育、福祉の提供

一、政府は毎年一回、施策の実施状況を公表

一、保護者や妊産婦の孤立を防ぎ、虐待の予防、早期発見

一、科学的知見に基づく子育ての知識や食育の普及

一、予防接種や健診記録のデータベース整備

一、子どもの死因を検証する体制づくり