(私説・論説室から)東方政策ヒントにしては - 東京新聞(2018年12月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018120502000178.html
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米軍基地の大幅な特権を認めた地位協定など、従属的な面も顕著な日米関係。トランプ大統領の登場で、合意をひっくり返されるリスクも高まる。米国依存からの脱却を進めていくことも必要だろう。
その方策を考えるための先例として、ドイツの週刊誌「シュピーゲル」アジア特派員のウィーラント・ワーグナーさんは、西ドイツの「東方政策」を挙げた。滞在十五年の日本通。離任会見も流ちょうな日本語だった。
東方政策は、冷戦時、一九七〇年代のブラント政権時代、ソ連、東欧との和解を図り、東ドイツとの条約では互いに国家として認め合い、関係を正常化した。ワルシャワユダヤ人慰霊碑前でひざまずいたブラント首相の姿は、西独の国際的イメージも高めた。
まだ、米ソが激しく対立する中、米国はじめ西側諸国の了解も取り付けながら、安全保障として武力行使の放棄を選んだ。後のドイツ統一の下地を作ったともいえる。
日本も地域の緊張を緩和し「米国リスク」を減らして、米軍基地による負担軽減などにもつなげていけないか。「もっと堂々と米国に発言したほうがいい。米国にもいろいろな勢力があり、ロビー活動はできる」。ワーグナーさんはアドバイスする。
来年は二十カ国・地域(G20)首脳会合の議長国。さまざまなチャンネルで、各国と絆を深めるチャンスでもある。 (熊倉逸男)