教員の働き方見直し案 実現するには課題が多い - 毎日新聞(2018年12月7日)

https://mainichi.jp/articles/20181207/ddm/005/070/052000c
http://archive.today/2018.12.07-002123/https://mainichi.jp/articles/20181207/ddm/005/070/052000c

長時間労働が問題になっている教員について、働き方の見直しを議論してきた中央教育審議会が答申の素案をまとめた。
教員の時間外労働の上限を原則、民間と同様に「月45時間」とするよう、数値目標を定めた。さらに、夏休みなどに長期休暇を取ることで労働時間を年単位で調整する「変形労働時間制」の導入を盛り込んだ。
教員の残業時間には基準がなかっただけに、政府が教員に働き方改革の網をかぶせたことは評価できる。
文部科学省の調査では、小学教員の3割、中学教員の6割が過労死ラインとされる月平均80時間以上の時間外労働をしている。
これまで「自発的行為」としていた部活動指導や、授業準備についても素案は勤務時間と認定した。これも実態に即した判断だ。
ただし、この見直しを教育現場が実現できるかについては、少なからぬ疑問がある。
時間外労働の上限「45時間」は現実的な目標だろうか。この基準をあてはめると、現在の教員の大半が超過するとみられる。早朝、放課後に部活の指導をすれば、軽く制限枠を超えてしまうだろう。
このため、素案は部活指導については教員以外の外部人材の活用などを勧めている。だが、地域によって人材探しは容易であるまい。相当の環境整備が必要になる。
長時間労働を是正するため、教員が担う仕事を明確にしようとする方向は理解できる。だが、部活などが教員の守備範囲なのかをもっとはっきりさせないと、結局掛け声倒れに終わりはしないか。
「変形労働時間制」の効果にも疑問がある。教員が夏休みなどにまとまった休みを取ることで、学期中の平日に所定の勤務時間を超えることを許容する狙いがある。
年単位の労働時間調整には有効かもしれないが、学期中の過重労働の解決にはつながらない。夏休みは教員研修などに重なる時期でもある。
教員の長時間労働に本当に向き合うのであれば定数、教員の支援態勢なども幅広く見直す必要がある。
教員の残業代を認めず、基本給の4%を一律上乗せしている現行の給与制度が妥当かも再点検すべきではないか。さらなる議論を求めたい。