少年法適用年齢 引き下げ議論は慎重に - 北海道新聞(2020年1月22日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/385384
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少年法の目的は、矯正教育などを通じて立ち直りを支え、再犯を防ぐことである。
多感で未熟な時期に犯した過ちと向き合い、社会に復帰させることが、安全な社会づくりに寄与していることに異論はあるまい。
その適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満に引き下げるかどうかを巡る議論が、法相の諮問機関、法制審議会で大詰めを迎えている。通常国会での少年法改正案の提出も検討される。
18、19歳は、環境が整えば生まれ変わったように更生する可能性が高い時期だ。犯罪の背景には虐待の経験などがあり、専門的な支援を必要とする例も少なくない。
保護観察や少年院送致など教育的な機会を奪えば、再犯防止に向けた十分な処遇を受けられずに放置されることになる。
少年犯罪に対する厳罰化を求める世論は根強い。過剰に保護されているのではないかという処罰感情の高まりも無視はできない。
だが、18、19歳が起こした事件のうち、殺人などの重大犯罪は1%に満たず、現行法でも家庭裁判所から検察官に原則逆送されて、大人と同様の刑事事件となる。
安易な引き下げは、更生を阻害し社会を不安定化させる。法改正にあたっては冷静な現状認識に基づき、議論を深めてもらいたい。
最大の論点となっているのは、検察官が家庭裁判所を経ずに起訴できる事件を認めるかどうかだ。
現行制度では少年事件は原則として家庭裁判所に送致。16歳以上が故意の犯罪で人を死亡させた場合を除くと、家裁が刑事処分相当と判断した場合のみ検察官に逆送される。
法務省は昨年12月、原則逆送する事件の対象を拡大する案と、重大事件については検察官が起訴するかどうかを判断するという2案を法制審の部会に示した。
いずれも、重大犯罪は刑事事件としている現行制度と大差なく、法改正が必要なのか疑問だ。
そもそも少年による刑法犯の摘発人数は減少傾向にあり、警察庁によると、一昨年は戦後最少を更新する2万3489人だった。更生支援を受ける少年の再犯率も低く、制度の有効性を示す。
改正論議は、選挙権年齢の18歳以上への引き下げが発端だった。18歳を成年とする改正民法との整合性を問う声もあるが、飲酒や喫煙は20歳以上が維持されている。
引き下げありきの法改正は容認できない。少年法の理念を念頭に、必要な施策を検討すべきだ。