http://mainichi.jp/articles/20170211/ddm/005/070/038000c
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少年法が罪を犯した少年の立ち直りに果たしてきた役割を踏まえ、丁寧に議論していく必要がある。
少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げるかについて、法相が法制審議会に諮問した。
選挙権年齢が18歳に引き下げられ、民法の成人年齢も引き下げの議論が進む。少年法も連動させ、大人の年齢をそろえるのが合理的だとの意見がある。一方、18、19歳について、更生のための教育が不十分になってしまうとの懸念は依然、根強い。
少年法を巡っては現在、厳罰化が迫られるような事情があるわけではない。2015年に罪を犯して検挙された少年は6万5950人で、20年前の3分の1に減っている。重大犯罪を犯した16歳以上の少年は原則検察に逆送され、成人と同じように処遇される仕組みも整っている。
引き下げありきではなく、少年犯罪の現状を押さえて、制度のあり方を考えていくべきだろう。
少年法が規定する保護処分の過程では、家庭裁判所や保護観察所が成育歴をたどって非行の背景を調査する。また、少年院では生活指導や学習、職業訓練が中心で、教官が付きっ切りで少年に反省を求める。
こうして丁寧に処遇することで、退院後に再び少年院に入る割合は、成人が刑務所へ再入所する割合より大幅に低くなっている。
比較的軽い非行の場合でも、現状では家裁の調査の対象になり、少年院に入るケースもある。だが、18、19歳が少年法の適用から外れれば、起訴猶予や罰金刑になるとみられる。教育的な措置を受ける機会が失われ、再犯のリスクが高まるとの指摘が出ている。
近年では貧困や虐待など社会的な要因が非行に結びついていることが少なくない。少年院で矯正教育を受けて社会に出ることの効果を十分に検証すべきだ。少年が更生し再び罪を犯さなくなれば、社会の安全や安心にもつながるだろう。
仮に少年法の適用年齢を引き下げても20歳前後の若年層に対しては、更生や教育を主体とした特別な刑事手続きを考えるべきだとの意見が専門家からは出ている。その場合、20代前半まで広げて、現行制度の利点を生かすことを検討すべきだろう。
今回は、刑務作業が義務となっている懲役刑の代わりとして、再犯防止の教育などに力点を置いた新たな刑の創設についても諮られた。受刑者の特性によって処遇を柔軟にしていこうとの狙いで、少年法の適用年齢の引き下げの議論の延長線上で出てきた。
社会に戻って再び罪を犯すことなくどう安定した生活をおくるか。更生のあり方が問われる時代だ。