(政界地獄耳) 日露交渉失敗も大ニュースだが - 日刊スポーツ(2019年7月16日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201907160000058.html
http://archive.today/2019.07.16-012841/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201907160000058.html

参院選の最中でなければもう少し大きなニュースになっていただろう。日露平和条約交渉はついこの間のG20の日露首脳会談でも「継続」が確認されたばかりだが、首相・安倍晋三が平成の後期に「新しいアプローチ」とした1956年の日ソ共同宣言に明記された歯舞島と色丹島の2島返還論も、露プーチン大統領に協議入りも拒否された。ロシアサイドが北方領土返還に難色を示したのは日米安保がどっかりと横たわっている問題をどうするかとの問いに日本政府がゼロ回答だったからだろう。

★ところが、同じくG20で米トランプ大統領は「日米安保は不公平だ」と言い出すとともに「破棄する考えは全くない」とした。これでは北方領土問題は振り出しだ。いや、ロシアの機嫌を取るために外相や首相が「4島返還」「北方領土は我が国の固有の領土」と言わなくなった分、領土問題はマイナスにまで引き下がった。昭和、平成、令和と日露交渉を続けてきた中で一番の失敗といえよう。25回の会談は何の役にも立たなかった。なぜなら2島返還交渉も、拒否された理由はプーチンの支持率低下だという。

★長期にわたるプーチン政権の強権政治に期待した首相だったが、その長期強権政権への批判が強く、昨年6月には政府が年金受給年齢を5年遅らせたことや石油のだぶつき、政権批判のジャーナリストや政敵の相次ぐ暗殺や攻撃など、権力を利用した政権運営が批判された。秋には統一地方選挙を控え、そんな時にわざわざ領土を譲る(ロシアサイドから見れば返還ではない)相談の必要はないということになる。長期政権の腐敗、日露交渉の失敗、いずれも大ニュースだが、日本では響かないのか。(K)※敬称略