(政界地獄耳) 真の独立チャンスに変われない日本 - 日刊スポーツ(2019年9月7日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201909070000078.html
http://archive.today/2019.09.07-002429/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201909070000078.html

★5日、極東ウラジオストクでの東方経済フォーラム全体会合の討議でロシアのプーチン大統領は、米国が日本や韓国にミサイルを配備する意向に懸念を表明するとともに日本が導入する「イージス・アショア」についてけん制した。首相・安倍晋三は日ロ平和条約交渉について「締結という歴史的使命がある。未来を生きる人々をこれ以上もう待たせてはならない」と述べながらもイージス・アショアについて「北朝鮮のミサイルからわが国を守るため」日本が保有・運用し米国が運用するのではないと反論した。

★これが27回、胸襟を開いて議論をし、信頼関係の出来上がっている首脳同士のやりとりとは思えない。予備交渉の段階でロシアのラブロフ外相が「北方領土返還の時に日米安保はどうなるか」と聞いているが、当時対峙(たいじ)した国家安全保障局長・谷内正太郎は「それは変わらない」と返答、また、同国のパトルシェフ安全保障会議書記との会談では北方領土2島返還後の米軍の基地配備について問われ「あり得る」と答えたといわれている。

★ロシアが仰天したのはその中身こそが、安倍とプーチンという首脳同士で議論するべきことで、下打ち合わせでは「それは両国の首脳同士で話すこと」と言うべきところを谷内が回答したことと、(領土返還で日米安保も動かすことで)これでやっと戦後を終わらせられる、つまり真の独立になるのではと問うたロシアにいかに米国の属国慣れしてしまったかだろう。

★最近ではなんと米トランプ大統領からも日米安保見直し論が飛び出したし、今の韓国はまさに在韓米軍撤退の議論につながっている。つまり東アジアの安全保障の冷戦的秩序が崩壊しようとしている今、冷戦を維持し日米の戦後体制を維持したいと言い続ける日本という国に仰天したのだろう。真の独立のチャンス、または15年後には米中の食い物にされるのが分かっていながら変われない理由を外交関係者は「自分が関わっている間は何とか持つのではないかという考えの人たちがつかさどっているから」と説明する。それならば、期待を国民に抱かせたり、外交を売り物にするのはやめて欲しい。(K)※敬称略