(筆洗)アダムズ方式は、なかなか意味深に思える - 東京新聞(2016年4月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016040902000144.html
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史上初の世論調査は、一八二四年に米国のデラウェア州で実施されたものだといわれる。第六代大統領にふさわしいのは、どの候補か。調査で首位に立ったのはジャクソン氏で、二位がアダムズ氏だった。
実際の選挙でも、ジャクソン氏が最も多くの票と選挙人を獲得したが、大統領になったのはアダムズ氏。ジャクソン氏の得た選挙人が過半数に届かなかったために議会下院での投票となり、下位の候補と政治的に取引をしたアダムズ氏が勝ったのだ。
民意が歪められたと批判も起き、アダムズ氏は再選を果たせなかった。その彼が後に下院議員となり、地元選挙区の定数を守るために提唱したとされる議席配分法が、アダムズ方式である。
一票の格差を改める衆院の選挙改革で、この方式が導入される見込みという。しかしアダムズ方式は、最高裁が「格差を生む主因」と断じた「一人別枠方式」と実質的に変わらない。衆院議長に出された識者による答申でも、そう言及された方式を採るとは、憲法の番人の警告も軽くみられたものだ。
ちなみに第六代米大統領のアダムズ氏は、第二代大統領の息子。当時の人々は、権力の世襲が始まるのではないかと危機感を持ったそうだ。
そんな歴史を考えると、アダムズ方式は、なかなか意味深に思える。それは実は世襲議員らの既得権益を守る策ではないのか、とは考えすぎだろうか。