衆院選無効訴訟 平等への道はまだ半ば - 東京新聞(2018年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018122002000152.html
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一票の格差が最大で一・九八倍。二〇一七年の衆院選をめぐる一票の不平等訴訟は「合憲」と最高裁大法廷が判断した。二倍ラインを切ればいいのではない。投票価値の平等への道はまだ半ばだ。
代表民主制の基盤は選挙である。国政選挙では、議員一人あたりの有権者数・人口ができる限り、平等に保たれねばならない。それは憲法上の要請である。
そうでないと、ある有権者は一票なのに、ある有権者は〇・五票しかない不平等が生じる。これは違憲の選挙であって、選挙自体を無効にすべきだ−。原告はそう訴えていた。
それゆえ〇九年、一二年、一四年の三回の衆院選はいずれも「違憲状態」と最高裁は判断した。今回は合憲となり、ようやく違憲状態から脱した。だが、格差は前回の二・一三倍が一・九八倍へとわずかに縮小しただけだ。それで合憲とはすんなり納得できない。
最高裁の前提は法改正でアダムズ方式と呼ばれる人口比を反映しやすい議席配分の導入を決めていることだ。その上で〇増六減の定数配分が「漸進的な是正を図ったものと評価できる」と述べた。
甘くはないか。二倍ラインを切ったとはいえ、ほぼ二倍の格差を許容することは看過できない。何しろ二百八十九の選挙区のうち、格差が一・八倍以上の選挙区が九十九もある。反対意見で「違憲」とした鬼丸かおる判事はそれを指摘した。
さらに「違憲・無効」と判断した山本庸幸判事は「法の下の平等を貫くためには格差を生じさせないのが原則。区割りの都合で一、二割の格差が生ずるのはやむを得ない」としている。
さらに言えば、アダムズ方式の手法では、本来は七増十三減の定数是正をしなければいけなかったはずだ。この方法だと自民党が強い地方ほど人数を削られる。だから結果的に〇増六減の小手先の是正に終わったのではないか。
〇増六減が司法の「お墨付き」となる懸念がある。しかもアダムズ方式は万能でないから、格差の縮小には限界がある。だから、立法府はたえず選挙制度の改革には取り組まねばならない。
人口が少ない県の声が届きにくくなるとの懸念もある。だが、通信技術が進歩した現代では杞憂(きゆう)であろう。
何より国会議員は全国民の代表だと憲法がいう。国民の意思を正しく反映する、その精神に基づく選挙でなければならない。