一票の不平等「違憲状態」 昨年衆院選で初判断 - 東京新聞(2018年2月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020802000131.html
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一票の格差」が最大で一・九八倍だった昨年十月の衆院選は、違憲だとして、愛知、岐阜、三重の有権者が選挙の無効(やり直し)を求めた訴訟の判決が七日、名古屋高裁であった。藤山雅行裁判長は「一人別枠方式の構造上の問題点の抜本的解消に至っていなかった」として、不平等は「違憲状態」だったと判断した。選挙無効の請求は棄却した。
昨年の衆院選を巡っては、同様の訴訟が全国十四の高裁・高裁支部に計十六件起こされた。これまでの十件はすべて「合憲」の判断だった。
藤山裁判長は判決理由で、昨年の衆院選が、小選挙区の定数を「〇増六減」する区割り変更を経て、実施されたことに言及。一九九四年の小選挙区制導入後、初めて最大格差が二倍を下回ったが、「極めて二倍に近く、容易に看過しえない」と指摘した。
区割りの変更には、各都道府県にあらかじめ一議席を配分してから残りを人口比例で割り振る現行の「一人別枠方式」に代えて、人口比をより反映する「アダムズ方式」を導入することが明示された。
藤山裁判長は、アダムズ方式の導入が二〇二〇年の国勢調査後になることに触れ、「アダムズ方式による(定数の)再配分が行われるまでは、一人別枠方式の構造上の問題は解消されない」と強調。昨年の衆院選は「一人別枠方式を含む都道府県への定数配分に一部の修正を重ねた方法にとどまる」と指摘した。
一一年三月の最高裁判決で「一人別枠方式」廃止の必要性が促された点にも触れ、藤山裁判長は「国会には判決を尊重する意思があったか否かにも疑問が生じる」とした。最大格差を二倍以下に縮小したことやアダムズ方式導入を決めたことは評価し、選挙無効は認めなかった。
昨年の衆院選は、十九都道府県で選挙区が見直され、三重や青森など六県で定数が一つ減った。有権者数が最多の東京13区は最少の鳥取1区の一・九八倍だった。

衆院選一票の不平等訴訟> 国会議員1人当たりの有権者数が選挙区ごとに異なり、1票の価値に不均衡が生じるのは憲法に反するとして選挙無効を求める訴訟。不平等が著しい場合は「違憲状態」、合理的な期間内にその状態が是正されなければ「違憲」となる。