最高裁が衆院選「合憲」 既定の格差是正を着実に - 毎日新聞(2018年12月20日)

https://mainichi.jp/articles/20181220/ddm/005/070/034000c
http://archive.today/2018.12.20-001452/https://mainichi.jp/articles/20181220/ddm/005/070/034000c

昨年10月に実施された衆院選の「1票の格差」を巡り、最高裁が合憲の判定を下した。
最高裁は前回まで3回連続で「違憲状態」の判定を示していた。合憲判断は、2005年衆院選を巡る07年の判決以来、実に11年ぶりだ。
合憲と判定した一つ目の理由は、選挙区間の最大格差が1・98倍で、1996年の小選挙区制導入後、初めて2倍を切ったからだ。一昨年の小選挙区「0増6減」の定数是正に伴い、14年選挙の2・13倍から2倍以内に縮小したことを評価した。
最高裁は、憲法が定める投票価値の平等原則に反するかについて近年、2倍を少し超える格差でも違憲状態と判定してきた。ただし、これまで2倍以上の格差を放置してきたこと自体が異常だったといえる。
二つ目が、各都道府県の小選挙区の定数を人口比が反映しやすい方法で配分する「アダムズ方式」によるさらなる是正を、国会が立法化したことだ。再来年の国勢調査の結果に基づいて導入される予定で、いっそうの是正効果が期待される。
最高裁は、各都道府県に1議席をあらかじめ配分する「1人別枠方式」が、1票の格差を生んでいるとして、国会に見直しを求めてきた。今回の判決で、アダムズ方式によって「1人別枠方式」の定数配分の影響を完全に解消できると評価した。
衆院格差是正を巡ってはいくつかの案が議論されたが、比較的穏健なものとして、この方式が採択された。合憲判定の理由として、この部分こそ重視すべきであろう。
実施されれば相当規模の区割り変更を迫られるため、選挙地盤を守りたい現職議員には抵抗感がある。大都市圏で定数が増え地方に不利になるとして、自民党にはなお反発が根強い。だが、投票価値の平等を優先する以上はやむを得まい。
最高裁は、国会が「0増6減」とアダムズ方式を段階的に実施することについて「選挙制度の安定性を確保する観点から徐々に是正を図った」と理解を示した。
だが、そもそも一昨年の段階でアダムズ方式を直ちに採用すべきだった。あくまで条件付きの合憲判定だと受け止め、国会は既定方針通りに、国勢調査終了後にアダムズ方式を速やかに実現すべきだ。