一票の不平等 2倍は合憲ラインか - 東京新聞(2018年2月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018020202000168.html
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昨年十月の衆院選をめぐる一票の不平等訴訟で「合憲」の高裁判決が相次ぐ。格差は最大で一・九八倍。まるで二倍が合憲ラインのようだ。本来は限りなき平等を求め続ける選挙制度でありたい。
これまでに「合憲」判決を出したのは東京、大阪など六つの高裁だ。全国十四の高裁・高裁支部段階の判決は三月中にも出そろい、年内に最高裁が統一判断を示す見通しである。
最大格差の一・九八倍という数字に着目してみる。それ以前の二〇〇九年から一四年にかけての三回の総選挙では二・四三倍から二・一三倍の最大格差があった。そして、三回連続で最高裁が「違憲状態」と判断している。
二・一三倍と一・九八倍の差は、たったの〇・一五。これは裁判所が二倍という数字を「合憲ラインだ」というメッセージを発していると受け止められはしないか。もしそうなら〇・五票の人がいる矛盾を許すことになる。
かつて最高裁は格差の根源として「一人別枠方式」を指摘した。だが、法律から削除しただけで事実上、温存している。それをある高裁は「格差が二倍未満となった以上、そういう評価はできない」と述べた。本当なのか。
確かに一九九四年に小選挙区比例代表並立制が導入されて初めて二倍未満となった。選挙制度改革による一六、一七年の法改正で、小選挙区の定数を「〇増六減」し、九十七選挙区の区割りを見直した結果でもある。
どの判決もこれを高く評価しているが、わずか〇・一五倍しか減らなかった改革を抜本改革とは呼ぶに値しない。かつ、裁判所は今後の「アダムズ方式」と呼ばれる議席配分方法の導入に期待を寄せている。
都道府県の人口比を反映しやすいと言われている。だが、この方法は「ある数」で都道府県の人口を割り算する。その小数点以下を繰り上げるので、議席を「一つ」足すことと同じだ。
つまりあらかじめ議席を各都道府県に「一ずつ配分する」のが一人別枠方式。後から「一ずつ足す」のがアダムズ方式。これが本質ではないか。そうなら抜本改正になるとは限らない。
二倍ラインすれすれでも「未満」なら合憲? この説が跋扈(ばっこ)すれば、選挙制度改革の足取りは重くなる。選挙は民主主義の基礎であるから、それを問う裁判については、もっと厳格に審査すべきであろう。