玄海原発 再稼働差し止め認めず 地裁、仮処分申請を却下 - 毎日新聞(2018年3月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00e/040/228000c
http://archive.today/2018.03.20-134150/https://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00e/040/228000c

九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働を巡り、佐賀地裁(立川毅裁判長)は20日、運転差し止めを求めた市民団体の仮処分申し立てを却下した。申し立てでは阿蘇カルデラ阿蘇山熊本県)の噴火リスクが最大の争点となったが、立川裁判長は「破局的噴火が発生する可能性が高いとはいえず、生命、身体に重大な被害が生じる具体的な危険は認められない」と判断した。九電は計画通り23日に3号機を、5月に4号機を再稼働させる見込み。
仮処分は、市民団体「原発なくそう! 九州玄海訴訟」のメンバーで、九州・山口5県の73人が昨年1月に申し立てた。市民団体側は福岡高裁に即時抗告する方針。
原子力規制委員会の「火山影響評価ガイド」は原発から160キロ圏内の火山から火砕流が到達する可能性があれば立地不適とする。昨年12月の広島高裁決定は伊方原発3号機(愛媛県)の運用期間中に約130キロ離れた阿蘇カルデラ破局的噴火の可能性を認め、同原発の運転を差し止めた。
玄海原発阿蘇からほぼ同じ距離。立川裁判長はガイドの合理性を認めた上で、破局的噴火は「社会通念を踏まえれば相応の根拠を示さなければ立地不適とならない」と判断。阿蘇については「大規模なマグマだまりはなく、破局的噴火直前の状態ではない」とした九電側の判断を評価した。
想定する最大の揺れである基準地震動の策定方法については「現在の科学技術水準を踏まえた科学的合理的な基準として策定された」と判断。市民団体側が指摘した活断層も「客観的な証拠はない」と退けた。
市民団体側が問題視した避難計画についても「原子力防災会議で合理的なものと了承され、具体的内容に不適切な点はない」と述べた。【関東晋慈、平川昌範】

参院予算委 太田氏攻撃の和田氏発言、議事録から削除 - 毎日新聞(2018年3月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180321/k00/00m/010/151000c
http://archive.today/2018.03.20-133236/https://mainichi.jp/articles/20180321/k00/00m/010/151000c

参院予算委員会は20日の理事会で、財務省の太田充理財局長を攻撃するような質問をした自民党和田政宗氏の発言について、議事録から削除することで与野党が一致した。
和田氏は19日の予算委で、太田氏に対し「安倍政権をおとしめるために意図的に変な答弁をしているんじゃないか」などと質問した。
理事会では、自民党渡辺美樹氏の発言を削除することも併せて決めた。渡辺氏は13日の中央公聴会で、公述人の過労死遺族を前に「週休7日が人間にとって幸せなのか」などと発言した。和田、渡辺両氏とも削除を申し出ていた。【高橋恵子

官房機密費 文書を初開示 支払先不明、不透明運用裏付け - 毎日新聞(2018年3月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180321/k00/00m/040/082000c
http://archive.today/2018.03.20-130901/https://mainichi.jp/articles/20180321/k00/00m/040/082000c

官房長官が情報収集などに使う内閣官房報償費(官房機密費)を巡り、政府は支出に関する文書を初めて、市民団体「政治資金オンブズマン」に開示した。文書の一部開示を命じた今年1月の最高裁判決を受けた措置で、団体の弁護団が20日、大阪市内で内容を公表した。支出の9割は官房長官が自ら管理し、領収書が不要な「政策推進費」だったことが判明した一方、支払先などは明らかにされなかった。機密費の不透明な運用実態が改めて裏付けられた。
政府が3月16日付で開示したのは、

  1. 機密費の支出額を月ごとにまとめた「出納管理簿」
  2. 政策推進費への繰入額や残額を記した「政策推進費受払簿」
  3. 大まかな使途別に分類した「支払明細書」

の3種類94ページ。団体側が請求したのはいずれも自公政権下の2005年10月〜06年9月(安倍晋三官房長官)▽09年9月(河村建夫長官)▽13年1〜12月(菅義偉長官)の3期間分。
支出総額は約26億6500万円で、91%の約24億2600万円を政策推進費として支出。国は「高度な政策的判断により機動的に使用する」としており、官房長官が自ら管理し、直接相手に支払うとされる。
民主党への政権交代が確実になった09年9月、麻生内閣の河村官房長官(当時)が2億5000万円を引き出していたことが既に判明しているが、この支出も全て政策推進費だった。
弁護団によると、政府はこれまで、国庫から機密費への入金額が分かる「請求書」などの文書は開示してきたが、機密費の支出に関する文書は「支払い相手が特定されかねない」として開示に応じなかった。1月の最高裁判決は、「支払い相手の特定は困難」として3種類の文書について一部開示を命じる一方、領収書などの開示は認めなかった。
神戸学院大教授で政治資金オンブズマンの上脇博之共同代表は「機密費の大半が官房長官が自由に使える『闇ガネ』になっている実態が分かった。機密費を直ちに廃止するか、支払先から領収書を徴収すべきだ」とコメントした。【原田啓之】

「適切な執行を徹底したい」
菅義偉官房長官は20日、内閣官房報償費(官房機密費)の関連文書の一部を開示したことに関し、「最高裁の判決に従って適切に対応していきたい。国民の不信を招くことがないよう引き続き適切な執行を徹底していきたい」と述べた。「判決では協力者の特定につながる情報や具体的な使途は引き続き不開示だ。こうした判決に従って適切に対応していく」とも述べ、開示範囲の拡大には慎重な姿勢を示した。【高橋克哉】

【ことば】官房機密費
正式名称は内閣官房報償費。国の施策を円滑に進めるため機動的に使う経費とされ、官房長官の判断で支出される。年間予算は2017年度で約12億3000万円。国内外の情報収集が主な目的とされるが、使途の公表や領収書の提出義務はない。国会対策など目的外使用があるとの指摘も出ている。

(政界地獄耳)自民党は壊れたのか…ベテラン秘書嘆く - 日刊スポーツ(2018年3月20日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201803200000213.html
http://archive.today/2018.03.20-040756/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201803200000213.html

★19日、参院予算委員会で質問に立った自民党和田政宗は「『やましいことがあれば国会議員を辞める』という決意は、政治家として肝に銘じておくべきこと。その覚悟が褒められるなら分かるが、批判される意味が分からない」、財務省に対して「書き換えでどれだけ国民を怒らせどれだけ国会を空転させたか」「自民党にも官邸にもうそをつき通した」と攻め上げ、また、理財局長・太田充が民主党政権時代に前首相・野田佳彦の秘書官を務めていたことに触れ「安倍政権をおとしめるために意図的な答弁をしているのではないか」と嫌みで攻めた。
★さすがに太田も「私は公務員として一生懸命お仕えするのが仕事。それはいくら何でもご容赦ください」と反論した。このやりとりを聞きながら自民党ベテラン秘書がため息をつく。「13日に開かれた参院予算委での中央公聴会で、自民党は過労死自殺事件を過去に起こした居酒屋チェーン『ワタミ』を展開する創業者の参院議員・渡辺美樹を質問者に選び、『働くのは悪いことか』とか『週休7日が幸せなのか』と過労死した労働者のご遺族ら公述人に問うた。なぜ渡辺を充てたのか。渡辺は後日謝罪したものの、もう自民党は壊れてしまったのではないか」と嘆く。
★また別の秘書は「自民党は2000年の小泉政権のころから、『いいからやれ』といった高圧的な指示が増えてきた。権限を持てば選挙で勝っているのだから何でもできると勘違いする幹部が増えてきた。こんな党ではなかったはず」と解説する。穏健な保守をひとつの柱としていた自民党はどうしてこうなってしまったのか。どの秘書たちに聞いても「選挙制度」という声が返ってくる。確かに得票以上の議席を取ることが出来ることは政権交代を可能にしたが、選挙区や有権者の関係を壊した部分もある。公認を取るため執行部には頭が上がらず、守ってくれるはずの派閥も壊れた。新人は2世、3世ばかり。与党の人材不足も叫ばれる。どうなる自民党。(K)※敬称略

前川氏授業 自民 赤池、池田氏が照会 質問内容 事前に修正 - 東京新聞(2018年3月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201803/CK2018032002000246.html
https://megalodon.jp/2018-0320-1526-44/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201803/CK2018032002000246.html

文部科学省前川喜平・前事務次官名古屋市立中学での授業内容を同省が市教育委員会に報告を求める前、同省に問い合わせをしたのは、自民党赤池誠章参院議員(比例)と池田佳隆衆院議員(比例東海)だったことが二十日、分かった。林芳正文科相が同日午前の記者会見で明らかにした。赤池氏が藤原誠官房長に事実確認を求め、池田氏には質問内容を事前に見せて意見を聞いて修正していたことも判明した。
赤池、池田両氏はそれぞれ自民党文部科学部会長、同代理。林氏は「問い合わせがあったことは事実だが、省の判断に影響を与えていない」として、調査は同省が主体的に行ったと強調した。赤池氏も同日午前、自民党本部で会見し、照会は「不当な支配ではなく事実確認」とした上で「日常業務の一環。圧力には全く当たらない」と主張した。
林氏や赤池氏によると、前川氏の授業があった二月十六日の翌十七日、赤池氏が愛知県を訪問した際、池田氏から授業に関する中日新聞の報道を知らされた。赤池氏が同日、藤原官房長に「法令違反をした人が教壇に立てるのか」と事実確認を求めるショートメールを送ったところ、十八日に「対応します」との返信があった。十九日には池田氏も新聞記事を同省に提供して問い合わせた。二十日には自民党総務会でも高橋道和(みちやす)初等中等教育局長に確認した。
同省は今月一日、前川氏が天下りあっせん問題で引責辞任していることなどに言及した上で、前川氏を招いた理由や授業内容について十五項目にわたって尋ねるメールを市教委に送った。この質問内容も事前に池田氏に提示し、池田氏からの意見を基に修正したという。
文科省は当初、調査のきっかけについて、職員が新聞記事で前川氏が講師に招かれたことを知ったと説明。林氏は「メールの表現ぶりにやや誤解を招きかねない部分もあった」として、高橋局長を口頭で注意していた。市教委への質問内容を池田氏に事前に見せて修正したことは「あくまでも文科省の主体的な判断で行った。議員の指示ではない」と述べた。
赤池、池田両氏の「参考人招致を」
立憲民主、希望、民進、共産、自由、社民の野党六党の国対委員長らは二十日、国会内で会談し、前川喜平前文部科学事務次官の授業内容を巡り、文科省に照会していた自民党赤池誠章参院議員と池田佳隆衆院議員を、衆院文部科学委員会参考人招致すべきだとの認識で一致した。
池田氏が問題提起 赤池氏「確認のため」
二十日に会見した自民党赤池誠章参院議員は、前川喜平氏の講演があったことを文部科学省に照会したことを認めた。その上で、文科省の組織的な天下り問題を念頭に「法令違反をした人が公立中学の教壇に立つことは問題がないのか、確認するためだった」と繰り返し説明した。赤池氏によると、二月十七日に、中日新聞の記事を見た池田佳隆衆院議員から「これはどうなのか」と問題提起を受け、同日中に藤原誠文科省官房長にメールでただした。
記事を確認した文科省は質問状を作成。池田氏のチェックを経て、名古屋市教委にメールで送った。赤池氏がメールの内容を確認したのは送信後だったといい、内容を知って驚き「やりすぎだ」との懸念を文科省に伝えた。池田氏は会見に出席しなかったが、赤池氏が三月十九日に聞き取ったところ「文科省から(質問状の内容の)確認を求められたので、感想を述べた。圧力をかけてはいない」と答えたという。

「必要最小限度の実力組織」削除 自民党、自衛隊明記の9条改憲案 - 東京新聞(2018年3月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018031901002297.html
https://megalodon.jp/2018-0320-0920-53/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018031901002297.html

自民党細田博之憲法改正推進本部長らがまとめた憲法9条改正の修正条文案が19日、判明した。戦力不保持などを定めた9条2項を維持しつつ「必要な自衛を目的として、自衛隊を保持する」と明記した。これまでは内閣法制局の国会答弁などを踏まえ「必要最小限度の実力組織」として自衛隊を保持するとの案で取りまとめる方針だったが、党内から定義があいまいなどの異論が出たため削除した。党関係者が明らかにした。
政府は自衛隊に関し「自衛のための必要最小限度の実力組織」で戦力には当たらず、合憲と解釈してきた。この表現に疑問を呈する石破茂元幹事長らの理解を得る思惑もあるとみられる。(共同)

木村草太教授と読み解く自民党の改憲7案 安保法制を無理に通したツケが回ってきた - 日経ビジネス(2018年3月20日)

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071000146/031900025/

自民党憲法改正推進本部が3月14日の役員会で、9条に関する7つの改憲案を示した。3月25日の党大会に向けて、意見集約が進められる。それぞれの案がどのような意味を持ち、どんな違いがあるのか。新進気鋭の憲法学者、木村草太・首都大学東京教授に聞いた。(聞き手は、森 永輔)

木村草太:大きく言えるのは、安全保障法制*を2015年に無理に成立させたツケが回ってきたということです。安保法制を成立させる前なら、自衛隊憲法に位置づけるのは今より容易でした。「日本が武力攻撃を受けた場合にこれを阻止するため自衛隊を置く」とすればよいわけですから。しかし、安保法制があるがゆえに、こうした書き方ではすまなくなっている。
一方、安保法制の合憲性を明確にするには、集団的自衛権行使の限定容認を明示する文言にしなければならない。それは国民投票において国民の理解を得られない可能性が高い。かといって、あいまいな表現を取れば、憲法による統制が意味を成さなくなってしまう。


森 永輔:なるほど。今のお話をふまえて、7つの案を順に見ていきます。まずは「有力案」とされるものから。
.......

前川氏授業 市教委への質問、添削も 自民文科部会の幹部 - 毎日新聞(2018年3月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00m/040/170000c
http://archive.today/2018.03.19-212545/https://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00m/040/170000c

池田佳隆議員、複数回照会 部会長の赤池議員も照会
文部科学省前川喜平・前事務次官の授業内容を報告するよう名古屋市教育委員会に求める前、文科省に照会したのは自民党文科部会長代理の池田佳隆衆院議員(比例東海)で、市教委への質問項目の添削もしていたことが取材で明らかになった。文科部会長を務める赤池誠章参院議員(比例代表)が文科省に照会していたことも判明した。【伊澤拓也、西田進一郎、山衛守剛】
前川氏は先月16日、名古屋市立八王子中で総合学習の授業として講演した。政府関係者によると、同市を地盤とする池田氏は2月中旬から下旬にかけ、複数回にわたって文科省初等中等教育局に電話し、授業の内容や経緯の説明を求めた。赤池氏も照会したという。
文科省は今月1日、天下りあっせん問題による引責辞任や「出会い系バーの利用」に言及して前川氏を招いた経緯や理由を尋ね、録音データの提供を求めるなど15項目の質問を市教委にメールで送信。6日には校長の認識など11項目の追加質問を送った。関係者によると、池田氏は質問項目を事前に確認し、修正を求めたという。林芳正文科相は12日、「メールの表現ぶりにやや誤解を招きかねない部分もあった」として高橋道和・初等中等教育局長を口頭で注意していた。
毎日新聞の書面での質問に対し、池田氏の事務所は回答していない。赤池氏の事務所は20日に開かれる文科部会終了後に赤池氏が取材に応じるとしている。
一方、文科省は19日の野党合同ヒアリングで、前川氏の授業があったと把握したのは、翌日の先月17日にあった外部からの照会がきっかけだったと明らかにした。これまでは同日付の新聞記事で知ったと説明していた。この日は土曜で、「外部は政治家か」との質問には、市教委に問い合わせると決めた省の判断に影響を与えていないとして「答えは差し控えたい」と繰り返し、議員の複数回の照会についても答えなかった。
19日の参院予算委員会の集中審議で、安倍晋三首相は「今後とも文科省で法令に基づきしっかり対応してもらう」と述べ、市教委への問い合わせに問題はなかったとの認識を示した。民進党難波奨二氏への答弁。

「介入は極めて異例」前川氏 文科省が授業内容確認でコメント - NHK(2018年3月19日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180319/k10011370891000.html

文部科学省が、授業の講師に前川前事務次官を招いた中学校に対し、内容の確認や録音の提出を求めていた問題で、前川氏は19日、弁護士を通じてコメントを出しました。

内容は次のとおりです。

2月16日に私が名古屋市立八王子中学校で行った授業について、文部科学省から名古屋市教育委員会及び同校に対し、極めて詳細な質問状が送られてきたこと及び当該授業の録画等の提出を求められたことは、同校からの連絡で知りました。

このような個別の学校の授業内容に対する国の直接的な介入は極めて異例であり、教育基本法が禁じている「不当な支配」に当たる可能性が高いと思います。

文部科学省の求めに応じて録画等を提出することは悪しき前例を作ることにもなりかねないため、私の方から提出を控えるよう要請しました。

文部科学省がこのようなことを自ら行うとは考えられないため外部から何らかの強い政治的な働きかけがあったのだと思います。

本来、教育に対する政治の不当な介入を阻む役割を負う文部科学省が、逆にそうした政治の介入に屈してしまったことは残念に思います。

平成30年3月18日 前川喜平

昭恵氏「登場」 交渉進む 国有地取引 決裁文書で経緯削除 - 東京新聞(2018年3月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018032002000130.html
https://megalodon.jp/2018-0320-0926-14/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018032002000130.html

学校法人「森友学園」との国有地取引を巡って十九日開かれた参院予算委員会の集中審議。安倍晋三首相は妻昭恵氏が「関与した事実はない」と改めて強調した。ただ改ざんされた決裁文書では、昭恵氏の記述五カ所がすべて削除され、削られた部分をたどると、昭恵氏の登場後、交渉は学園側有利に大きく前進していることが浮かび上がった。 (岡本太)
「昭恵氏を現地に案内し、『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉を頂いた」
学園理事長だった籠池泰典(かごいけやすのり)被告(詐欺罪などで起訴)は二〇一四年四月二十八日、近畿財務局との打ち合わせでこう述べ、昭恵氏と一緒に撮った写真を示した。学園は当時、新たな小学校用地として、大阪府豊中市の国有地取得を検討。資金の問題でまず土地を借り受け、約八年後をめどに購入したいと希望していた。
ところが近畿財務局は、府の審議会で小学校設置の認可答申が出ないと契約できないと回答。一方の府は、用地確保を審査の必要条件としており、小学校新設計画は難航していた。


「ニワトリと卵の話。何とかしてや」。当時、籠池被告が相談していた鴻池祥肇(こうのいけよしただ)参院議員事務所のメモにも籠池被告の言葉が残されている。近畿財務局は四月十五日、「認可答申前の契約はできない」と学園に伝えた。
籠池氏が昭恵氏に言及してから三十五日後の六月二日。近畿財務局は学園側にこう回答した。「売り払いを前提とした貸し付けについて協力させていただく」。このころを境に、交渉は一気に進展していく。
一五年一月、府の審議会は用地確保がされないまま、条件付きで認可を答申。府は近畿財務局から契約締結が確実との情報を得ており、これが答申につながったとされる。五月、学園と近畿財務局は貸し付け契約を結んだ。
契約では「軟弱地盤」との学園の主張をもとに貸付料も減額された。決裁文書では「特別に軟弱とは思えない」という地質調査会社の意見が「新たな価格形成要因であり、賃料に影響する」との専門家の見解に書き換えられた。国有地はその後、ごみ撤去費として約八億円を値引きして学園に売却。籠池被告は一連の取引について「神風が吹いた」と表現した。

森友文書改ざん 首相の影響排除できぬ - 東京新聞(2018年3月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018032002000173.html
https://megalodon.jp/2018-0320-0927-17/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018032002000173.html

森友学園への国有地売却に関する決裁済み文書を、財務省がなぜ改ざんしたのか。安倍晋三首相自身は否定するが、内閣総辞職議員辞職に言及した首相答弁の影響は排除できないのではないか。
学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐり、参院予算委員会できのう集中審議が行われた。
しかし、誰が何の目的で文書を改ざんしたのか。そもそも八億円もの値引きがなぜ行われたのか。政治家らの関与は直接的にも間接的にも全くなかったのか。官僚らによる忖度(そんたく)はなかったのか。問題解明には程遠い。
真相を明らかにするため、国会は国政調査権を発動すべきだ。財務省前理財局長の佐川宣寿前国税庁長官に加え、首相夫人の安倍昭恵氏、夫人付き政府職員だった谷査恵子氏の証人喚問も求めたい。
きのう、特に追及されたのは、文書改ざんに、首相の答弁が影響したのか否かである。
首相は昨年二月十七日の衆院予算委で森友学園への国有地売却に「私や妻が関係していれば、私は間違いなく首相も国会議員もやめる」と答弁している。財務省が文書改ざんに手を染めたのはこの後の二月下旬から四月にかけてだ。
首相は削除された内容が「答弁をひっくり返すような記述では全くない」として、改ざんへの自身の影響を否定したが、財務省の太田充理財局長は「首相なり大臣なり、政府の答弁は気にしていないと言えるほどの材料は持ち合わせていない」と述べた。
首相が直接指示していないにしても、財務省にとって首相答弁が文書改ざんの主要な動機になったと考えるのが自然ではないか。
首相が自らの影響力をことさら小さく見せようとするのは、問題の核心である八億円もの値引きを含めて学園に異例の対応が繰り返し行われていたことへの関わりを否定するためでもあるのだろう。
しかし、首相自身が認めるように昭恵氏が一時、学園の名誉小学校長を務めたことに国民は疑いの目を向けている。首相により近い立場の官僚たちが、首相らの圧力を感じ取って当然だ。
文書改ざん公表後に行われた報道各社の世論調査では、内閣支持率が10ポイント程度急落し、軒並み30%台になった。いずれも第二次安倍政権発足後、最低レベルだ。共同通信社の調査では「首相に責任がある」と答えた人は66%に上る。国有地売却問題に対する国民の目は厳しい。誰かに責任を押し付けて乗り切れるような話ではない。

安倍首相の「関係ない」答弁 保身だけでは不信拭えぬ - 毎日新聞(2018年3月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180320/ddm/005/070/134000c
http://archive.today/2018.03.20-002833/https://mainichi.jp/articles/20180320/ddm/005/070/134000c

国民は行政中枢でのでたらめにいら立っているのに、行政の最高責任者が「自分は関係していない」と言い募ることに強い違和感を覚える。
参院予算委員会できのう行われた森友学園問題の集中審議における安倍晋三首相の答弁である。
いま首相に問われていることは二つある。一つは「私や妻が関係していたなら首相も国会議員も辞める」という昨年2月の国会答弁と公文書改ざんの関係をどう考えるかだ。
一国の首相が「辞める」とまで言ったことが官僚組織に強いストレスを与えたことは想像に難くない。
首相の意向をそんたくした財務省の佐川宣寿前理財局長が無理な説明を重ね、その説明に合わせて文書が改ざんされたのではないか。そんたくを受ける側が「なかった」と否定する一方的な主張に説得力はない。
もう一つは、妻昭恵氏と学園との特別な関係がなければ、ここまでの事態に至っていないということに責任を感じているのかどうかだ。
首相は、改ざん前の文書に直接的な関与を示す記述がなかったとして「私や私の妻が関わっていないことは明らかだ」と繰り返した。
では、国会議員でもない昭恵氏が学園で講演したり土地を視察したりした記述がなぜ文書にあったのか。太田充理財局長は「総理夫人ということで(記載した)」と答弁した。
関係しているかどうかを決めるのは首相ではない。重要なのは、契約の過程で財務省が昭恵氏と学園の関係に注目していたことだ。
改ざん前の文書には学園側の発言として、昭恵氏から「いい土地ですから、前に進めてください」との言葉をもらったとの記述もある。
首相によると、昭恵氏は「言っていない」と話しているという。夫婦間の確認だけを根拠に学園側の言い分をはねつけても、財務省のそんたくまでなかったことにはならない。
自民党議員も質問に立ったが、財務省に責任を押しつける発言が目立った。民主党政権で首相秘書官を務めた経歴のある太田氏を「安倍政権をおとしめるために答弁しているのでは」と指弾する場面もあった。
責任逃れに走る安倍政権の姿勢に危機感は乏しい。首相が保身にきゅうきゅうとしている限り、真相究明も再発防止も進むまい。

(余録)「しきしまの倭の国はことだまの… - 毎日新聞(2018年3月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180320/ddm/001/070/141000c
http://archive.today/2018.03.20-003035/https://mainichi.jp/articles/20180320/ddm/001/070/141000c

「しきしまの倭(やまと)の国はことだまのたすくる国ぞまさきくありこそ」。やまとの国は言葉の霊力が物事をよい方向へ動かしてくれる国です、どうか無事に行ってきてください−−万葉集柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の送別歌である。
口に出した「言」は現実の「事」になるという古代の言霊(ことだま)信仰だった。うたげの終わりを「お開き」、刺し身を「お造り」などと、不吉な言葉を縁起よく言いかえる習慣もその名残といわれる。言葉の霊的な威力を信じたご先祖だった。
今も命令でもない言葉が人を動かす威力をみせることがある。では森友学園への国有地売却に「私や妻が関係していたとなれば首相も議員も辞める」と見えを切った安倍晋三(あべ・しんぞう)首相の答弁は財務省の決裁文書改ざんの引き金だったのか。
きのうの参院委の集中審議では改ざんへの答弁の影響を否定した首相だった。決裁文書から削られた首相の妻と学園の関係は答弁の時はすでに国会で議論されていたからだというが、影響の有無は改ざんの当事者に聞かねばなるまい。
今や改ざんの責任を一身にかぶせられそうな前理財局長がその筆頭だが、この虚偽答弁の張本人を国税庁長官にして「適材適所」とした政権である。その役人支配の手練手管(てれんてくだ)ならば、国民も十分見せてもらった森友・加計問題だった。
思えばこの問題が国政に居座った1年間、政権トップの言霊の威力はみごとに役所の文書管理のでたらめを浮き彫りにした。内閣支持率の急落となって表れた霊威の衰弱は自業自得(じごうじとく)というしかあるまい。

「森友」審議 首相の説明では足りぬ - 朝日新聞(2018年3月20日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13410612.html
http://archive.today/2018.03.19-222412/https://www.asahi.com/articles/DA3S13410612.html

財務省森友学園との国有地取引に関する決裁文書を改ざんしていた問題で、参院予算委員会の集中審議が行われた。
首相は「書き換え前の文書を見て、私や妻が払い下げや学校の認可に関与した事実はなく、関わったことにならないのは明らかだ」と繰り返したが、理解に苦しむ。
本紙の直近の世論調査では、こうした首相の説明に「納得できない」と72%が答えたが、首相は言いぶりを変えなかった。
改ざん前の文書には、学園側から「安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と伝えられたと記されていた。
首相は、昭恵氏は学園の籠池泰典前理事長に指示する立場にないとして「そういうことを言うはずがない」と答えたが、これも説得力を欠く。
「安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した旨が(新聞社のインターネットの記事に)記載される」との記述もあった。同じページには3人の政治家の名も書かれていたが、いずれも改ざんによって削られた。
なぜ国会議員でもない昭恵氏の動向が決裁文書に書いてあるのか。予算委でそう問われた財務省の太田充・理財局長は「それは基本的に総理夫人だということだと思う」と答えた。
昭恵氏の影響力を認めたとも取れる発言だが、首相は決裁文書の記載について「公開情報を事実として淡々と述べているのだろう」と述べた。
問題の核心の一つは、格安の国有地売却の背景に何があったのかだが、首相から聞きうることには限界があるようだ。
ならば当事者を国会に呼び、話を聴くしかない。昭恵氏はもちろん、学園との連絡を担った首相夫人付の政府職員、売却交渉時に理財局長だった迫田英典氏らの証言は欠かせない。
もう一つの注目点は「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」という昨年2月の首相答弁が改ざんの動機だったのか否かだ。
この件では太田局長が先週の予算委で「政府全体の答弁は気にしていた」と述べ、首相答弁の影響を否定しなかった。
改ざん当時の理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏だけでなく、他の財務省幹部や近畿財務局職員らからも事情を聴く必要がある。
「行政府の最高責任者として責任を痛感する」と首相は繰り返す。ならば立法府による調査に誠実に、全面的に協力する責任が首相にはある。

強制不妊 法務当局も容認 厚生省に「身体拘束、麻酔も」 - 東京新聞(2018年3月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018032002000147.html
https://megalodon.jp/2018-0320-0924-49/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018032002000147.html

優生保護法下で障害者らへの不妊手術が繰り返された問題で、一九四九年に法務府(現法務省)が厚生省(当時)に対し、本人同意のない強制手術の手段として「真に必要やむを得ない限度で身体の拘束、麻酔、欺罔(ぎもう)の手段を用いることも許される」との見解を示していたことが十九日、愛知県が開示した資料で分かった。旧厚生省も四九年に同様の通知を都道府県に出していたことが京都府の開示資料から判明。政府として強制手段を容認する姿勢が改めて明らかになった。
愛知県が開示したのは「強制優生手術実施の手段について」とのタイトルで、法務府が局長名で四九年に厚生省公衆衛生局長に宛てた資料。強制手術の手段について、厚生省が六二年に各都道府県知事に宛てた文書に、岐阜県の問い合わせに回答した際の文書が添付されていた。手書きで、公印は押されていない。
手術を受ける者が拒否した場合、身体拘束や麻酔、だますなどの手段で拒否できなくすることが許されるかとの厚生省の質問に、「最小限度であるべきはいうまでもない。具体的な場合に応じ、真にやむを得ない限度において許される場合があるものと解すべき」と条件付きで容認した。
この解釈について法務府は「基本的人権の制限を伴う」と認めながらも、旧法には「不良な子孫の出生を防止する」という公益上の目的があるとした上で「意思に反して実施することも、なんら憲法の保障を裏切るものということはできない」と結論付けた。
東大大学院の市野川容孝(やすたか)教授(医療社会学)は「愛知県の開示資料が強制手術の手段を定めたオリジナルの可能性がある。法務当局がお墨付きを与えていた格好で、通知に向けて国が準備を進めていたことがうかがえる」と話した。

「御殿場事件」裁判を10年近く取材したわたしが、ドラマ「99.9」に思うこと(長野智子さん) - HuffPost Japan(2018年03月19日)

https://www.huffingtonpost.jp/tomoko-nagano/gotenba-999_a_23388995/

サンデーステーション」が「日曜劇場99.9―刑事専門弁護士Ⅱ」(TBS系)の裏番組という大人の事情が(笑)ようやくなくなったので、思うところを書いてみたい。

「刑事事件の裁判有罪率は99.9%。つまり起訴されたら、99.9%は有罪になる」という日本において、わずか0.1%の可能性に賭け、被告人の無実を立証しようと奮闘する弁護士たちを描いたドラマ「99.9」。
私自身このドラマのファンなのだが、しつこいようだけど自分の担当する番組が同時間帯だったので、録画をして楽しんでいた。そして、シーズンⅡの第五話を録画視聴したとき、番組冒頭から画面にくぎ付けになった。その内容が2000年代に実際に起きた「御殿場事件」に酷似していたからである。

放送後からネット上には私と同じく、「御殿場事件」との類似性に気付いた視聴者を中心に、多くの反応が寄せられていた。主人公の深山大翔弁護士を演じているのが、嵐の松本潤さんということもあり、たくさんの若い人たちがこの裁判の異常性に驚き、矛盾について語っていた。

それを読みながら、私は若い視聴者がドラマ内容に似た裁判が現実に起きていることに驚愕していることを目にして感銘を受けた。それは、私自身が「御殿場事件」裁判を10年近くにわたり取材し、誰よりも多くの人にこの理解しがたい裁判について知ってほしかったからである。

「御殿場事件」は2001年に発生した複数の少年たちによる「女子高生強姦未遂事件」である。実際の事件経緯と裁判については、「踏みにじられた未来―御殿場事件・親と子の10年闘争」(幻冬舎)に裁判官への取材も含め、すべて書いてあるので興味のある方は参考にしてほしい。
ドラマの結末とは異なり、現実には少年たちの無実の訴えは却下され、有罪判決となり収監された。現在は出所し、悔しい思いを抱えながらもそれぞれの道を歩んでいる。

ドラマ「99.9」に描かれた少女・少年の設定、罪状(ドラマは強姦事件・御殿場事件は強姦未遂事件)、起訴された少年の一人が別件の被疑者だったといった細部は実際と異なる。

しかし、被害者とされる少女が、「当初の犯行時間帯に他の男性と会っていて、それを親に隠すためにウソをついた」こと。「携帯電話記録や会っていた男性の証言によってウソがバレると、犯行日は実は一週間前だと証言を変えたこと」「それを受けて、なんと裁判所が訴因変更をし、犯行日を変更したこと」などは現実の「御殿場事件」と同じである。

ちなみにやはり細部は違うが、少年の一人が当初の犯行時間に「焼肉屋」にいたというアリバイを立証するため、当時と同じ服を着たメンバーに集まってもらい検証をしたこともドラマを観て懐かしく思い出した。

「御殿場事件」では、犯行日が変わったがために、当初の少年たちの調書と明らかな矛盾が出てきた。例えばはじめの犯行日に現場の公園は工事中だったのに、変更後の犯行日に公園では工事が行われていない。
しかし、逮捕された少年は全員「現場が工事中だった」と証言している。彼らは「警察の言うとおりにうなずいているだけだったから」と話しているが、こうした矛盾にも関わらず、裁判はそのまま進められた。そして最大の矛盾は犯行日が一週間前倒しになったことによって生じた「天候の違い」である。

被害者とされる少女は「傘をさしたような記憶はない。服が濡れた記憶もない」と証言している。

しかし、変更後の犯行日は台風15号の接近により、東海地方に「大雨・洪水注意報」が出され、現場とされる公園付近では一時間に3ミリの雨が記録されているのだ。朝から断続的に降り続いた雨にも関わらず、「芝生に押し倒された」という少女に「服の濡れた記憶がない」という矛盾。
弁護側が深山先生なみの無罪立証データを揃えたにも関わらず、数々の疑問を放置したまま裁判は進行し、最高裁でも有罪判決が出された。物的証拠は何ひとつなく、はなはだ任意性の疑わしい自白調書を唯一の証拠としてである。

こうしたあまりにも理解しがたい裁判が現実に起きていることを、ドラマという形で多くの人に知ってもらえることが嬉しい。「御殿場事件」については有罪判決のため、私の立場で「冤罪」ということはできないが、今でも多くの疑問に答えが出ていない。

近年記憶に新しいところでも、大阪地検の郵便不正事件、足利事件志布志事件、富山氷見事件、布川事件、東住吉放火事件など、冤罪事件は枚挙にいとまがない。

冤罪の最大の罪は「無実の人の人生を、権力が根こそぎ奪い葬ること」である。よりたくさんの人がこうした事件や裁判に大きな関心を向けることで、次の冤罪を生むことを減らすことにつながると信じている。

関連サイト)
少年法「改正」と御殿場事件-子どもと法・21 通信(2009年6月号)
http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/20120509#p1