官房機密費 文書を初開示 支払先不明、不透明運用裏付け - 毎日新聞(2018年3月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180321/k00/00m/040/082000c
http://archive.today/2018.03.20-130901/https://mainichi.jp/articles/20180321/k00/00m/040/082000c

官房長官が情報収集などに使う内閣官房報償費(官房機密費)を巡り、政府は支出に関する文書を初めて、市民団体「政治資金オンブズマン」に開示した。文書の一部開示を命じた今年1月の最高裁判決を受けた措置で、団体の弁護団が20日、大阪市内で内容を公表した。支出の9割は官房長官が自ら管理し、領収書が不要な「政策推進費」だったことが判明した一方、支払先などは明らかにされなかった。機密費の不透明な運用実態が改めて裏付けられた。
政府が3月16日付で開示したのは、

  1. 機密費の支出額を月ごとにまとめた「出納管理簿」
  2. 政策推進費への繰入額や残額を記した「政策推進費受払簿」
  3. 大まかな使途別に分類した「支払明細書」

の3種類94ページ。団体側が請求したのはいずれも自公政権下の2005年10月〜06年9月(安倍晋三官房長官)▽09年9月(河村建夫長官)▽13年1〜12月(菅義偉長官)の3期間分。
支出総額は約26億6500万円で、91%の約24億2600万円を政策推進費として支出。国は「高度な政策的判断により機動的に使用する」としており、官房長官が自ら管理し、直接相手に支払うとされる。
民主党への政権交代が確実になった09年9月、麻生内閣の河村官房長官(当時)が2億5000万円を引き出していたことが既に判明しているが、この支出も全て政策推進費だった。
弁護団によると、政府はこれまで、国庫から機密費への入金額が分かる「請求書」などの文書は開示してきたが、機密費の支出に関する文書は「支払い相手が特定されかねない」として開示に応じなかった。1月の最高裁判決は、「支払い相手の特定は困難」として3種類の文書について一部開示を命じる一方、領収書などの開示は認めなかった。
神戸学院大教授で政治資金オンブズマンの上脇博之共同代表は「機密費の大半が官房長官が自由に使える『闇ガネ』になっている実態が分かった。機密費を直ちに廃止するか、支払先から領収書を徴収すべきだ」とコメントした。【原田啓之】

「適切な執行を徹底したい」
菅義偉官房長官は20日、内閣官房報償費(官房機密費)の関連文書の一部を開示したことに関し、「最高裁の判決に従って適切に対応していきたい。国民の不信を招くことがないよう引き続き適切な執行を徹底していきたい」と述べた。「判決では協力者の特定につながる情報や具体的な使途は引き続き不開示だ。こうした判決に従って適切に対応していく」とも述べ、開示範囲の拡大には慎重な姿勢を示した。【高橋克哉】

【ことば】官房機密費
正式名称は内閣官房報償費。国の施策を円滑に進めるため機動的に使う経費とされ、官房長官の判断で支出される。年間予算は2017年度で約12億3000万円。国内外の情報収集が主な目的とされるが、使途の公表や領収書の提出義務はない。国会対策など目的外使用があるとの指摘も出ている。