衆院選 三つどもえ、野党苦戦 - 毎日新聞(2017年10月23日)


https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171023/k00/00e/010/435000c
http://archive.is/2017.10.23-051251/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171023/k00/00e/010/435000c


今回の衆院選は「自民、公明両党」「希望の党日本維新の会」「立憲民主、共産、社民3党」の3極が全国で入り乱れる混戦となった。このため、野党が与党と事実上の一騎打ちに持ち込めたのは全289小選挙区のわずか5分の1の56選挙区。多くで野党が分裂・競合し、選挙結果には与党が「漁夫の利」を得たことが鮮明に表れた。【村尾哲】
批判票分散 勝率22%
小選挙区の対決構図を与野党の一騎打ち▽3極が対決した三つどもえ▽与党1人と野党3人以上による野党乱立型▽自民系が分裂−−に分類。与野党の勝敗を集計した。
一騎打ちの56選挙区は、23日に開票作業がずれ込んだ沖縄4区を除けば与党が37勝。野党は18勝(勝率32%)で、うち立憲や民進・自由両党出身の無所属候補が17人と健闘した。残り1人は社民で、希望の当選者はゼロだった。
三つどもえになった177選挙区をみると、開票がずれ込んだ佐賀2区を除いて与党137勝に対し、野党は39勝。野党の勝率は22%と一騎打ちよりも10ポイント低く、政権批判票が分散した影響が出た。内訳は希望・維新両党と希望に近い無所属が20勝、立憲・共産と民進系無所属が19勝。
野党が3人以上出馬した51選挙区では、与党が48勝と圧倒。3勝の野党は勝率も6%と極めて低い。勝ち残ったのはいずれも地盤の強い民進出身者で、無所属の野田佳彦前首相(千葉4区)、希望の泉健太氏(京都3区)と下条みつ氏(長野2区)だけだった。
2003年から5期続けて小選挙区で当選していた希望の馬淵澄夫国土交通相(奈良1区)と、小池百合子東京都知事の側近・若狭勝氏(東京10区)は落選に追い込まれた。
自民系が分裂した5選挙区はいずれも保守地盤が強いが、神奈川4区は立憲の新人が、逆に「漁夫の利」を得て勝利した。
全体に立憲が善戦したのは、多くの選挙区で共産、社民との協力が奏功したことが大きい。無所属を含む立憲系の候補などが出馬した67選挙区で、共産は候補を取り下げた。実際に立憲系が制した37選挙区のうち、31選挙区には共産、社民の候補がいなかった。
一方、希望は香川1区など3選挙区を除いて他の野党と競合。共産、社民は希望を「自民の補完勢力」と位置づけて対抗馬を下ろさず、逆に希望も、民進が公認予定だった立憲や無所属の候補がいる選挙区にあえて「刺客」を立てたことで勝率を落とした。希望が公認候補を立てた198選挙区のうち、勝ったのは17選挙区にとどまる。また共産、社民は沖縄の2選挙区でそれぞれ1議席を獲得した。

新潟一本化効果 6選挙区中4勝
全国的に自民党が大勝する中、北海道と新潟、沖縄両県では野党が善戦した。もともと野党の強い地盤があったり、選挙協力が成功したりしたためだ。
旧民主党民進党の「牙城」だった北海道は、希望の党に合流せず、立憲民主党や無所属での出馬を選んだ候補が、道内12選挙区のうち5選挙区で自民に競り勝った。立憲は2014年の前回衆院選で自民が勝った3、11区の議席を奪い、比例でも自民に並ぶ3議席を獲得。共産党は3、11区を含む7選挙区で候補を取り下げており、共闘の効果が鮮明だ。希望は小選挙区で全敗した。
新潟は、希望が小選挙区に候補を擁立できなかったこともあり、県内6選挙区のうち5選挙区で立憲、共産、自由などの野党が一本化に成功。複数の野党が無所属候補に相乗りする「新潟方式」が02年から続いており、16年参院選と知事選も自民系候補に勝つなど、野党共闘の下地がもともと整っていた。今回は4選挙区で自民を破り、特に前回自民が勝った1、2、4区は、民進系の無所属候補や立憲が接戦の末、議席をもぎ取った。
米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反発が強い沖縄は、県内の全4小選挙区で、移設反対を掲げる翁長雄志知事を支援する野党系の「オール沖縄」勢力と、移設容認の自民が対決。前回全勝した野党は今回も1〜3区で議席を確保した。4区は台風の影響で開票が23日にずれ込んだ。【田口雅士】

「高齢無党派層」、立憲を強く支持 野党分裂の選挙区 - 朝日新聞(2017年10月23日)

http://digital.asahi.com/articles/ASKBQ66YBKBQUZPS002.html
http://archive.is/2017.10.23-040852/http://www.asahi.com/articles/ASKBQ66YBKBQUZPS002.html


朝日新聞社が22日実施した出口調査によると、与党に対し、希望と立憲民主の2党がどのような形で対決したかによって、無党派層が全く異なる投票行動を示していたことが分かった。
希望と立憲がともに候補を立てて与党と対決した選挙区をA型、希望だけが出て立憲が出なかったのをB型、立憲だけが出て希望が出なかったのをC型と分類。各タイプの選挙区で、勝敗の行方を左右する無党派層がどの党の候補に投票したかを見た。
A型では立憲に46%だったのに対し、希望は17%にとどまり、2党の間でくっきりと違いが出た。立憲が出た選挙区に、当選の可能性が低い希望候補が送り込まれたケースも多く、そんな選挙区では結果的に与党を利する結果になった。
B型では、希望に投票したのは42%、与党には36%、共産には14%と分散。一方、C型では立憲が無党派層を引きつけて54%が集まり、共産には2%しか回らなかった。
さらに、与党支持層のA型での投票先を見ると、自民支持層は希望に7%、立憲に11%。公明支持層は希望に10%、立憲に12%回っていた。公明支持層では、どちらかといえば男性が希望、女性が立憲に多く投票していた。
共産支持層ではどうか。A型では立憲に52%が投票し、共産への30%を上回っていたほか、希望には8%。B型では、共産に71%と「内向き」の投票行動を示し、希望には15%にとどまった。C型では共産が立候補を取りやめた選挙区が多かったこともあり、立憲に68%、共産に21%と、立憲への肩入れぶりが際立っている。
A型で無党派層を年代別に見ると、希望への投票は各年代とも一様だった。しかし、立憲への投票は50代以上で50%を超えた一方、30代以下は30%台と、「高齢無党派層」に立憲は強く支持されていた。(峰久和哲)

安倍首相「信頼せず」51% 出口調査で - 日本経済新聞(2017年10月22日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22561700S7A021C1EA2000/
http://archive.is/2017.10.22-224652/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22561700S7A021C

出口調査で、比例代表投票先を回答した人に安倍晋三首相を信頼しているかどうかを尋ねたところ「信頼していない」が51.0%で「信頼している」の44.1%を上回った。首相の政治姿勢などを厳しい目で見ていることが浮かび上がった。
公明党に投票した人のうち58.3%は「信頼している」としたが、34.3%は「していない」と回答。自民党に投票した80.5%は「信頼している」と答えた。
「信頼していない」は、希望の党へ投票した人の74.3%、共産党では86.6%、立憲民主党では84.7%、日本維新の会では51.3%を占めた。
支持政党別で見ると「支持政党はない」とする無党派層の68.8%が「信頼していない」と回答し、「信頼している」は25.9%にとどまった。
男女別で見ると、男性は「信頼している」47.9%、「信頼していない」48.4%と拮抗した。女性は「信頼していない」が53.6%で「信頼している」の40.2%を上回った。〔共同〕

衆院選 無党派層、立憲後押し 「立・共・社」枠組み支持 出口分析 - 毎日新聞(2017年10月23日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171023-00000046-mai-pol
http://archive.is/2017.10.23-001840/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171023-00000046-mai-pol


共同通信社が22日に実施した衆院選出口調査によると、「支持政党はない」と答えた無党派層比例代表の投票先に挙げたのは「立憲民主党」が31%で最も多かった。共産、社民両党を加えると43%になり、「3極」構図が注目された今回の選挙で、無党派層は「立・共・社」の枠組みを支持したことが分かる。

主な政党支持率は、自民36%▽立憲14%▽希望12%▽公明5%▽共産5%▽維新4%−−など。無党派層は19%で、自民支持層に次いで多かった。

無党派層の立憲以外の主な投票先は、自民21%▽希望18%▽共産10%▽維新9%▽公明6%▽社民2%−−だった。「自・公」は27%、「希・維」は26%で、「立・共・社」と差がついた。

2014年の前回衆院選時の調査では、無党派層の投票先は自民21%、公明7%で、今回とほぼ変わらない。一方、前回は民主(当時)が21%だったのに対し、立憲と希望は今回、計49%。その分、投票先として共産と維新が減った形だ。
各党支持層とも8〜9割が比例代表で支持政党に投票したと答え、他党には大きく流れなかったようだ。
調査では、安倍晋三首相を信頼しているかどうかも尋ねた。「信頼していない」は51%で、「信頼している」の44%より多かった。
「信頼していない」と答えた人の比例代表の投票先は、立憲36%▽希望24%▽共産14%▽自民10%−−などの順。「首相は信頼していないが比例代表は自民」という投票行動は少数派だった。
逆に「信頼している」と答えた人の比例代表投票先は自民が64%に上り、公明の13%を加えて与党で8割近くを占めた。【吉永康朗】

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出口調査の方法
全国289の小選挙区で、それぞれ有権者の縮図となるよう投票所を選んだ。投票を終えた有権者に用紙を渡し、小選挙区で投票した候補者、比例代表で投票した政党、支持政党、安倍晋三首相を信頼しているかについて記入してもらった。回答者総数は男性12万9853人、女性12万6884人の計25万6737人。1小選挙区当たりの平均は約890人。

(政界地獄耳)野党崩壊後の共産党に問われる今後の姿勢 - 日刊スポーツ(2017年10月23日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201710230000219.html
http://archive.is/2017.10.23-043957/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201710230000219.html

自民党にとっての幸運はさして攻勢をかけるまでもなく、希望の党が自滅したこと。政策、首相指名と目標とするものがない政党に、国民は希望を持たない。都知事が党代表になるメリットを、都市部の有権者すら感じなかった。早速今日から母体である民進党希望の党の党内政局、お家騒動が始まるだろう。民進党参院が態度を硬化させ、民進党代表・前原誠司の扱いがまず焦点になる。続いて140億円からなる民進党の資産をどうするか。存続になるのか、解党するなら国庫に返却すべきだが、分党ということになるのか。既に前原らが希望のために運用しているという報道もあり、元代表岡田克也らが精査を求めている。また希望の党当選者の中からの離脱組も出るだろう。選挙の議席確定後も混乱が続きそうだ。
有権者から見れば、選挙直前に野党第1党が崩壊したという混乱の罪は重い。枝野幸男率いる立憲民主党が結党されたものの、野党共闘どころか、野党崩壊が自民党を助けたことは言うまでもなく、前原の言う「安倍1強を倒すため」は、共産党排除のための詭弁(きべん)でしかなかった。前原の責任を問う声が民進党から出た場合、前原はどう対応するのだろうか。野党共闘に可能性を見いだそうとしていた共産党は、前原の排除の論理によって野党共闘からはじき出されたが、立憲の候補者がいる選挙区から一斉に同党の候補者を降ろした英断が、立憲の躍進を導いた。野党崩壊後の共産党の在り方が今後問われる。
★今回の選挙で、希望の党は保守2大政党を模索したが、国民は第2自民党自民党の2軍は無用という判断を下した。では保守2大政党は日本では生まれないのか。政策の優先順位、予算の組み方、議論のプロセスの違う野党第1党、そして自民党政治を厳しくチェックできる野党への期待は強いとみるべきだろう。双璧の2大政党ではないが、新しい野党の枠組みが生まれれば、2つの巨大政党化に近づくことは可能だろう。
★そこにもう1つ、揺さぶりがかかるかどうかだ。それは巨大与党・自民党が、方向性の違いから分裂する覚悟があるかどうか、もう1つは共産党が党名、綱領、政策の転換によって、政党として次のステージに進む覚悟があるかどうかだ。次のハードルは、安倍政権がいよいよ仕掛ける憲法改正だろう。一部野党を巻き込む改憲派に対して、自民党内の反発が広がるか、共産党が護憲のために新たな提案を国民に示せるか。そこで与野党を巻き込んだ政界再編が起こり、希望、維新、公明の各党もその渦に巻き込まれるだろう。民進党と連合の解体は、55年体制の本当の終わりを示した。来る憲法改正へ向けた前哨戦が、この選挙だったのではないか。それまでに再度政界再編が起こるはずだ。(K)※敬称略

首相、改憲「自衛隊明記で議論」 立民がブレーキ役に - 東京新聞(2017年10月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102302000261.html
https://megalodon.jp/2017-1023-0934-20/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102302000261.html

安倍晋三首相は二十二日夜のNHKや民放番組で、自衛隊を明記する改憲について「そういう観点から議論を進めたい。(自衛隊の)違憲論争に終止符を打ちたい」と話し、衆院選改憲勢力が三分の二以上の議席を維持したことを受け、改憲論議を加速させる意向を表明した。
首相は「与党だけで(改憲案を)発議することは考えていない。希望の党をはじめ、他の政党とも話し、できるだけ多くの賛成を得るべく努力したい」と、他の改憲勢力との連携に意欲を示した。
二〇二〇年の改憲施行という目標については「スケジュールありきではない」と説明したが、撤回はしなかった。年内に自民党改憲案をまとめ、両院の憲法審査会で議論し、来年の通常国会での改憲案発議という日程を視野に入れているとみられる。自民党二階俊博幹事長はNHK番組で「ある程度時間をかけるが、あまり長くやるのもいかがかと思う」と話した。
一方、首相主導の改憲に反対する立憲民主党議席を大きく伸ばしたことは、改憲論議に大きく影響しそうだ。枝野幸男代表は二十二日夜「(与党側が)国会で具体的に議論しようとすれば、いかにおかしいかという論陣を張って、世論を喚起していく」と、性急な改憲論議にブレーキをかける考えを示した。
公明党山口那津男代表も「議論の深まりが重要。(今は)何をどう変えるか、各党ばらばらだ」と、拙速な議論に慎重な姿勢を表明。同党幹部は、立憲民主の躍進に関し「(改憲論議は)難しくなる」と話した。改憲勢力は、公明が賛成しないと参院で三分の二に届かない。 (新開浩)

(筆洗)有権者に別の道を選ばせるほどの勇気を与えなかった - 東京新聞(2017年10月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017102302000263.html
https://megalodon.jp/2017-1023-0933-18/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017102302000263.html

セールスマンの死』などの米劇作家アーサー・ミラーは遅筆で知られた。奇妙な習慣のせいである。朝、起きる。仕事場へ出かける。昨日までに書いた原稿を見る。破り捨てる。
時間がかかるはずである。ミラーによると破ることで心の中に何か引っ掛かるものが生まれ、それを追いかけることで自分の考えをまとめることができるのだという。
おそれいる。何にせよ、時間をかけて進んできた道を捨て「振り出し」に戻るには、よほどの覚悟と理由がいる。そんな気分で総選挙の開票速報を見つめる。与党の勝利。有権者は安倍政権の継続を選んだ。政権交代という別の道をためらった。
疑惑、強引な政治手法。問題の多い政権である。看板のアベノミクスにしても景気回復の実感は一向にない。それでもせっかくここまできた道。有権者はもう少しだけ進めばと信じ、政権継続に賭けてみたのである。
北朝鮮情勢の嵐も迫る。別の道を探している場合なのかという不安もあっただろう。政権交代の受け皿となる野党は混乱気味でその実力を見極めにくく、有権者に別の道を選ばせるほどの勇気を与えなかったのも事実である。仕方なく、政権継続を選ばざるを得なかった有権者の複雑な表情を想像する。
安倍政権は支持された。しかしよく見た方がいい。有権者が書いた「支持」という文字はどこか苦しそうで歪(ゆが)んでいまいか。

安倍政権が継続 首相は謙虚に、丁寧に - 東京新聞(2017年10月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017102302000264.html
https://megalodon.jp/2017-1023-0932-06/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017102302000264.html

衆院選結果を受けて、自公両党の連立政権が継続する。安倍晋三首相(自民党総裁)は続投するが、謙虚に、丁寧に国政に当たるべきは言うまでもない。
台風が接近し、雨の中、投票所に向かった有権者も多かったのではないか。離島などでは投票を繰り上げたり、即日開票を断念するなど、悪天候の影響もあった。
期日前投票が過去最高になったのも、天候悪化で投票所に行けない事態に備え、早めに投票したいとの思いもあったことだろう。
先人が勝ち得てきた貴重な選挙権だ。無駄にしてはならない、との熱い思いを感じざるを得ない。

◆国会は全国民の代表
選ばれた議員や、政権を託された政党が、こうした有権者の思いに誠実に応えるのは当然である。
その際、留意すべきは政権を支持しなかった有権者も含めて、政治はすべての国民のために行わなければならない、ということだ。
言うまでもなく、日本国憲法は国会議員を「全国民の代表」と定める。自らを支持した有権者だけの代表ではない。このことをまず肝に銘じるべきだろう。
安倍首相が消費税増税分の使途変更と北朝鮮対応のための政権基盤強化を争点に掲げて解散に踏み切った衆院選だった。
自民党は単独で過半数(二百三十三)を超えた。安倍首相は衆院選の勝敗ラインを、公明党の獲得議席を加えた「与党で過半数」としており、選挙結果を見る限り、消費税増税分の使途変更と、「対話」よりも「圧力」に重きを置いた北朝鮮対応は、形の上では有権者に支持されたことにはなる。
とはいえ、自公連立政権を率いる安倍首相が積極的に支持されたと断言するのは早計だろう。
報道各社の世論調査によると、総じて、安倍首相の続投を支持しないと答えた人は、支持すると答えた人を上回る。

◆続投不支持多数だが
今年七月の東京都議選で、自民党は歴史的惨敗を喫した。
このときの敗因には、学校法人「森友」「加計」両学園の問題をめぐる首相自身の不誠実な答弁や「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法成立を強行した強引な国会運営、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報隠しなど、安倍政権のおごりや緩みが挙げられた。
地方自治体の選挙だが、痛手だったのだろう。首相は八月三日、内閣改造後の記者会見で、深々と頭を下げ「さまざまな問題が指摘され、国民の皆さまから大きな不信を招く結果となった。改めて深く反省し、国民の皆さまにおわび申し上げたいと思う」と述べた。
しかし、今回の選挙戦の街頭演説では、森友・加計問題に自ら言及することはなかった。批判ばかりでは何も生み出さない、と言いながら、旧民主党政権時代をくさして、同党に所属していた議員がつくった新たな政党を批判する。
わずか二カ月前、深い反省やおわびを表明した首相の低姿勢は、どこに行ってしまったのか。
安倍首相の続投を支持しない人が多いにもかかわらず、自公両党が過半数議席を得るのは、一選挙区で一人しか当選しない小選挙区制を軸とした現行の選挙制度が影響していることは否めない。
小池百合子東京都知事が慌ただしく「希望の党」を結成し、民進党が事実上分裂して一部が合流する一方、これに反発する枝野幸男官房長官らは「立憲民主党」を立ち上げた。
野党勢力が分散すれば、与党が有利になるのは当然だ。
小池氏の準備不足や民進党の混乱を見越した解散なら、選挙戦略としては巧妙だが、国政全体に責任を負う首相としては誠実とは言えまい。希望の党は当初の見通しよりも勢いが失速したが、立憲民主党の伸長は、安倍政権に対する批判の強さと受け止めるべきだ。
自民党憲法改正を公約の重点項目に初めて掲げたが「改憲派」の各党間にも考え方や優先順位に違いがある。日程ありきで拙速に議論を進めるべきではない。
成長重視のアベノミクスや消費税増税も、支持されたとはいえ選挙戦で問題点も明らかになった。原発依存も同様だ。引き続き、幅広く国民の声に耳を傾け、柔軟な対応に努めるべきである。

◆森友・加計解明続けよ
そして政治に対する信頼の問題である。森友・加計両学園をめぐる問題がすべて解明されたわけではないし、選挙を経たからといって免責されるわけでもない。国会として引き続き解明に全力を挙げるのは当然だ。ましてや野党側がひるむ必要はまったくない。
首相自身、問題の解明に進んで協力し、丁寧な説明に努めるべきである。「謙虚に、丁寧に、国民の負託に応えるために全力を尽くす」。ほかならぬ、首相自身の言葉である。

日本の岐路 「安倍1強」継続 おごらず、国民のために - 毎日新聞(2017年10月23日)

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171023/ddm/012/070/097000c
http://archive.is/2017.10.23-003216/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171023/ddm/012/070/097000c

衆院選自民党がほぼ公示前の勢力を維持し、公明党を含む与党で3分の2に達した。
私たちは安倍晋三首相が抜き打ち的に衆院解散を表明して以来、「日本の岐路」と題して、この選挙を論じてきた。
従来にも増して、今回の選挙が日本の分岐点になると考えたからだ。具体的には首相に権力が集中する「安倍1強」を継続させるか否かの選択であった。
そもそも今回の総選挙には、安倍首相が来年秋の自民党総裁選で3選を果たすための実績作りという狙いがこめられていた。
首相が3選されれば、2021年秋まで政権担当が可能になる。第1次政権の1年分を含め、安倍首相の在任期間は憲政史上最長の10年近くに及ぶこともあり得る。
そうした前提のうえで有権者は継続を選んだ。

持続可能な社会保障
勝利した首相にはそれだけのエネルギーが補充されたと考えられる。ただし、首相の役割は特定のイデオロギーへの奉仕ではない。首相はおごることなく、恵まれた政治資源を国民のためにこそ活用すべきだ。

国民生活にとって、今、最も優先されるべきは、少子高齢化と財政危機の下で社会保障制度を持続可能にしてゆくことだ。
25年に団塊世代のすべてが75歳以上となり、大都市圏を中心に介護、医療の需要や財政負担が急増する。同時に若者、子育て支援など全世代型の施策も迫られている。
一方で、国と地方の借金は1000兆円を超す。社会保障の持続と財政再建を両立する「魔法のつえ」などない。給付と負担のバランスの必要を説くことは、強い基盤を持つ政権だからこそ可能なはずだ。
来週発足する第4次内閣にとって喫緊の課題は、北朝鮮危機への対応だ。トランプ米大統領が来月5日に訪日する。日米の連携は重要だが、軍事的圧力に傾斜するトランプ政権に同調して不測の事態を招かぬよう、細心の注意を払う必要がある。
安倍首相の最終目標が憲法改正にあることは疑いの余地がない。
選挙結果を受けて、首相は改憲についても国民の理解が得られたと強弁する可能性がある。
首相は9条に自衛隊の存在を明記したいと訴えてきた。実力組織を憲法にどう位置づけるかという問題提起を私たちは否定していない。
ただし、安全保障法制や特定秘密保護法の時のように性急に憲法を扱ったら、それこそ国の針路を誤らせる。国民に信頼されない改憲作業ほど、危険なことはない。
将来を見据えて、自衛隊の役割を冷静に論じ、広く国民の同意を得ていかなければならない。
憲法の論点は自衛隊に限らない。参議院の役割の見直しも含め、衆参両院の憲法審査会で建設的議論を深めるべきだろう。
緊張感ある国会審議を
着実な成果を上げていくためにはこれまでの「安倍政治」の手法や中身を改め、押しつけ型の政権運営を見直す必要がある。
衆院選中に実施した毎日新聞世論調査では、選挙後も安倍首相が首相を続けることに「よいとは思わない」との回答は47%で、「よいと思う」の37%を上回った。
それでも今回、安倍内閣が信任を得られたのは野党側の事情による。
小池百合子東京都知事が結成した希望の党は一時、与党を脅かす存在になりかけていた。
だが、民進党議員の参加をめぐる露骨な選別が逆風を呼んだ。公約や党内統治のずさんさも露呈し、急に失速した。
他方で小池氏の強引なやり方に反発して民進党の左派リベラル勢力は立憲民主党を結成し、両党は競合関係となった。
政権批判票の分散が、小選挙区制度の下で自民を利した。小池氏の劇場型手法に多くの有権者が不安を抱き、自民党を「よりまし」と判断したのではないか。
行政の公正さが疑われた「森友・加計」問題の解明作業は中断したままだ。首相は選挙での勝利を口実として、過去の問題だと片付けるべきではない。
野党では立憲民主党が公示前勢力を大幅に上回り、躍進した。
「安倍1強」が続く国会の審議を与党ペースにせず、緊張感を作り出すには野党の姿勢がカギを握る。建設的な政策論争を期待したい。

政権継続という審判 多様な民意に目を向けよ - 朝日新聞(2017年10月23日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13193375.html
http://archive.is/2017.10.23-001658/http://www.asahi.com/articles/DA3S13193375.html

衆院選は自民、公明の与党が過半数を大きく超えた。有権者は安倍首相の続投を選んだ。
森友・加計問題への追及をかわす大義なき解散――。みずから仕掛けた「権力ゲーム」に、首相は勝った。
ただ、政権継続を選んだ民意も実は多様だ。選挙結果と、選挙戦さなかの世論調査に表れた民意には大きなズレがある。

■選挙結果と違う世論
本紙の直近の世論調査によると、「安倍さんに今後も首相を続けてほしい」は34%、「そうは思わない」は51%。
国会で自民党だけが強い勢力を持つ状況が「よくない」が73%、「よい」は15%。
「今後も自民党中心の政権が続くのがよい」は37%、「自民党以外の政党による政権に代わるのがよい」は36%。
おごりと緩みが見える「1強政治」ではなく、与野党の均衡ある政治を求める。そんな民意の広がりが読み取れる。
ならばなぜ、衆院選自民党は多数を得たのか。死票の多い小選挙区制の特性もあるが、それだけではあるまい。
首相が狙った権力ゲームに権力ゲームで応える。民進党前原誠司代表と希望の党小池百合子代表の政略優先の姿勢が、最大の理由ではないか。
小池氏の人気を当て込む民進党議員に、小池氏は「排除の論理」を持ち出し、政策的な「踏み絵」を迫った。
それを受け、合流を求める議員たちは民進党が主張してきた政策を覆した。安全保障関連法の撤回や、同法を前提にした改憲への反対などである。
基本政策の一貫性を捨ててまで、生き残りに走る議員たち。その姿に、多くの有権者が不信感を抱いたに違いない。
例えば「消費増税凍結」「原発ゼロ」は本紙の世論調査ではともに55%が支持する。希望の党は双方を公約に掲げたが、同党の政策軽視の姿勢があらわになった以上、いくら訴えても民意をつかめるはずがない。
与党との一対一の対決構図をめざして模索してきた野党共闘も白紙にされた。その結果、野党同士がつぶし合う形になったことも与党を利した。

■筋通す野党への共感
その意味で与党が多数を占めた今回の選挙は、むしろ野党が「負けた」のが実態だろう。
旧民主党政権の挫折から約5年。「政権交代可能な政治」への道半ばで、野党第1党が散り散りに割れたツケは大きい。
与党の圧倒的な数を前に、野党が連携を欠けば政権への監視役は果たせず、政治の緊張感は失われる。その現実を直視し、選挙と国会活動の両面で協力関係を再構築することこそ、野党各党が民意に応える道だ。
留意すべきは、権力ゲームからはじき飛ばされた立憲民主党がなぜ躍進したのかだ。
判官びいきもあろう。そのうえに、民進党の理念・政策や野党共闘を重んじる筋の通し方への共感もあったのではないか。
「上からのトップダウン型の政治か、下からの草の根民主主義か」。枝野幸男代表が訴えた個人尊重と手続き重視の民主主義のあり方は、安倍政権との明確な対立軸になりえよう。

では、首相は手にした数の力で次に何をめざすのか。
自民党は公約に初めて改憲の具体的な項目を明記した。一方で首相は選挙演説で改憲にふれず、北朝鮮情勢やアベノミクスの「成果」を強調した。
経済を前面に掲げ、選挙が終わると正面から訴えなかった特定秘密保護法や安保法、「共謀罪」法を押し通す。首相が繰り返してきた手法だ。今回は改憲に本腰を入れるだろう。

白紙委任ではない
だが首相は勘違いをしてはならない。そもそも民主主義における選挙は、勝者への白紙委任を意味しない。過去5年の政権運営がみな信認され、さらなるフリーハンドが与えられたと考えるなら過信にすぎない。
首相の独善的な姿勢は、すでに今回の解散に表れていた。
首相は憲法53条に基づく野党の臨時国会召集要求を3カ月も放置した末、あらゆる審議を拒んで冒頭解散に踏み切った。
与党の多数は、そんな憲法と国会をないがしろにした政争の果てに得たものだ。そのことを忘れてはならない。
民意は改憲をめぐっても多様だ。本紙の世論調査では、自民党が公約に記した9条への自衛隊明記に賛成は37%、反対は40%だった。
短兵急な議論は民意の分断を深めかねない。主権者である国民の理解を得つつ、超党派による国会の憲法審査会での十分な議論の積み上げが求められる。
憲法論議の前にまず、選ばれた議員たちがなすべきことがある。森友・加計問題をめぐる国会での真相究明である。
首相の「丁寧な説明」は果たされていない。行政の公正・公平が問われる問題だ。勝ったらリセット、とはいかない。
民意の分断を防ぎ、乗り越える。そんな真摯(しんし)で丁寧な対話や議論が、いまこの国のリーダーには欠かせない。
政権のおごりと緩みを首相みずから率先して正すことが、その第一歩になりうる。

(衆院選 沖縄選挙区)反辺野古 民意揺るがず - 沖縄タイムズ(2017年10月23日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/159916
https://megalodon.jp/2017-1023-0929-43/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/159916

第48回衆院選は22日、投開票された。希望の党の突然の旗揚げと失速、民進党の合流と分裂。振りかえってみればそれがすべてだった。
今回ほど政治家と政党に対する不信感が広がった国政選挙はない。その責任は重大である。
自民党が圧勝した全国と比べ、県内の選挙結果は対照的だ。
名護市辺野古沿岸部への新基地建設に反対する「オール沖縄」の候補が1、2、3区で比例復活組の自民前職を振り切った。
前回2014年の衆院選に続く「オール沖縄」の勝利は、安倍政権の基地政策や強引な国会運営に対する批判にとどまらない。
不公平な扱いに対する強烈な異義申し立てが広く県民の間に共有されていることを物語っている。
とりわけ象徴的なのは、大票田の那覇市を抱える1区は、共産前職の赤嶺政賢氏(69)が接戦の末に自民、維新の前職らを制したことだ。
共産党候補が小選挙区で当選したのは全国で沖縄1区だけである。
翁長雄志知事のお膝元での勝利は知事の求心力を高めることになるだろう。

■    ■

1区の選挙情勢は、赤嶺氏にとっては、マイナスの要素が多かった。
高齢者に比べ若者には基地容認の傾向があること、保守層の中に根強い共産党アレルギーが存在すること、「オール沖縄」の一翼を担ってきた那覇市議会の新風会が割れたこと、などである。
1月の宮古島市、2月の浦添市、4月のうるま市の市長選で「オール沖縄」系候補が立て続けに敗れたことも、退潮傾向を印象づけた。
マイナスの要素を抱えながら、「オール沖縄」が1、2、3区の議席を死守することができたのはなぜか。
普天間飛行場など多くの米軍基地を抱える2区では、社民前職のベテラン照屋寛徳氏(72)が早々と当選を決め、北部の演習場が集中する3区では、無所属前職の玉城デニー氏(58)が当確を決めた。

いずれも危なげない勝利だった。
名護市安部で起きたMV22オスプレイの大破事故と、東村高江で起きた米軍ヘリCH53Eの炎上事故は、いずれも民間地で発生した「クラスA」の重大事故だった。
沖縄ではヘリ事故はどこでも起こりうる、という現実が浮き彫りにされたのである。
安倍晋三首相は、北部訓練場の約半分の返還を負担軽減の大きな成果だと主張するが、住民の苦境を考慮しない一面的な見方である。

 訓練場の「不要な土地」を返還する条件として、東村高江の集落を取り囲むように、6カ所のヘリパッドが建設された。周辺住民からすれば基地被害の増大にほかならないのである。

■    ■

県議会は高江周辺のヘリパッドの使用禁止を全会一致で決議した。当選した議員は、県議会とも共同歩調を取って政府と米軍に働きかけてほしい。
大事なことは、選挙公約を選挙の時だけの話に終わらせないこと、選挙で公約したことを軽々に破らないことだ。
台風21号の影響で一部離島から投票箱を開票所まで移送することができなくなり、うるま市南城市座間味村の3市村は開票作業を23日に持ち越した。

異例の事態である。
公職選挙法第65条は「開票は、すべての投票箱の送致を受けた日、またはその翌日に行う」と規定している。
うるま市津堅島南城市の久高島、座間味村阿嘉島慶留間島で投票箱の移送が不可能になったことから、これら3市村の開票作業が翌日に延びたというわけだ。
4区は無所属前職の仲里利信氏(80)と自民前職の西銘恒三郎氏(63)が激しく争っている。
大票田の南城市の開票作業が翌日に延びたため、午前零時半になっても当落の判定ができない、という事態が生じてしまった。
台風への対応が適切だったかどうか、県選挙管理委員会をまじえて早急に対応を検証し、台風マニュアルを整備してもらいたい。

「オール沖縄」3勝 それでも新基地造るのか - 琉球新報(2017年10月23日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-599262.html
http://archive.is/2017.10.23-002745/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-599262.html

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設を拒否する民意の根強さを改めて証明した。安倍政権が県民の意思を今後も踏みにじることは許されない。
前回2014年の全勝には及ばなかったものの、1〜3区で辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力が当選、当選確実とした。辺野古新基地を容認する自民党は1議席を獲得したが、3氏は選挙区で落選した。
沖縄選挙区の最大の争点である辺野古新基地建設に反対する民意が上回ったことは、安倍政権の強硬姿勢に県民は決して屈しないとの決意の表れである。
国土面積の0・6%の沖縄に、在日米軍専用施設の70・38%が集中していることはどう考えても異常である。米軍基地を沖縄に押し込めることは、沖縄差別以外の何物でもない。
国は迷惑施設の米軍基地の国内移設を打ち出せば、反対運動が起きると懸念しているにすぎない。それをあたかも普天間飛行場の返還には、辺野古新基地建設が唯一の解決策であるかのように偽装している。県民の多くはそれを見透かしている。
普天間飛行場の一日も早い返還には「辺野古移設が唯一の解決策」とする安倍政権への県民の怒りが選挙結果に表れたといえよう。
安倍政権が民主主義を重んじるならば、沖縄選挙区で自民党は1人しか当選できなかった現実を真摯(しんし)に受け止め、新基地建設を断念するのが筋である。それでも新基地を造るなら安倍首相はこの国のリーダーとして不適格だ。
憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記する。この権利を県民は享受できていない。米軍基地から派生する騒音被害や墜落事故、米軍人・軍属の事件事故が後を絶たないためだ。
それを改善するのが国の務めであり、政治家の果たすべき役割である。だが、安倍政権は明らかに逆行している。
国の移設計画は老朽化した普天間飛行場の代わりに米軍に最新鋭の基地を与えるものでしかない。米軍機は県内全域を飛行し、深夜・早朝にかかわらず訓練する。新基地建設は沖縄の負担強化につながるだけで、負担軽減になることは一切ない。
沖縄選挙区で自民党候補が当選したのは2012年衆院選以来、5年ぶりである。その時は3氏が当選したが、普天間飛行場の県外移設を求めていたことが大きい。
沖縄にとって真の負担軽減とは何か。自民党は沖縄選挙区でなぜ苦戦を強いられているのか、安倍政権は自らに問う必要がある。
自民党候補も沖縄の政治家としての在り方を考えるべきだ。沖縄の将来を見据えて党の政策を変えさせるのか、それとも党の方針に従うのか。政治姿勢が厳しく問われていることを自覚してほしい。

衆院選 揺れる日の丸、かき消される「アベやめろ」 首相の「アキバ演説」で見えたもの - 毎日新聞(2017年10月22日)

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171022/mog/00m/010/001000c
http://archive.is/2017.10.23-002434/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171022/mog/00m/010/001000c

国難突破解散」だとして総選挙に打って出た安倍晋三首相は、選挙戦を通じて何を語り、何を語らなかったのか。21日夜、東京・秋葉原で行われた「最後の訴え」の現場で考えた。その映像とともに首相遊説を振り返る。【井上英介/統合デジタル取材センター】
午後6時、雨の降りしきる東京のJR秋葉原駅前は異様な空気に包まれていた。
選挙戦を締めくくる「最後の訴え」で安倍首相が到着する1時間半前から、無人自民党選挙カーの周囲を人が埋め尽くし、数え切れない日の丸の旗が揺れている。大半が支持者のようだ。「負けるな安倍総理」「頑張れ安倍総理」−−巨大な横断幕が何枚も掲げられている。
大勢の警察官が、鉄柵やロープを使ってその大集団と一般市民を隔てている。横断幕や居並ぶ警察官の前を、通行人が足早に通り過ぎていく。
駅ロータリーを囲んで地上を見下ろす歩行者デッキも、支持者で埋まっている。「みなさーん、これで応援してくださーい」。各所で日の丸の小旗を配っている。誰が小旗を用意したのか。配る女性の一人は「ボランティアなので、ちょっと……」と笑顔で首をかしげたが、自民党のバッジをつけた人も配っていた。
TBSやテレビ朝日を「偏向報道」と糾弾するプラカードを持って歩き回る支持者たちも多数いる。全体に若い世代が多い印象だ。
地上では支持者に交じり、少人数で政権批判のプラカードやのぼりを掲げる人たちがいた。東京1区の自民党候補、山田美樹氏らの演説が始まると、支持者たちから「選挙妨害!」「プラカード下ろせ!」「お前ら左翼は帰れ!」と容赦ない罵声が飛ぶ。応援弁士の一人も「伝統ある東京1区で左翼を勝たせてはならない」などと絶叫調で訴える。
3カ月前の7月1日、東京都議選最終日に安倍首相は秋葉原の全く同じ場所で応援マイクを握り、聴衆の「帰れ」コールに直面した。そこで「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と気色ばみ、歴史的敗北を喫していた。
首相は秋葉原でリベンジを望んだ−−との報道もあったが、この日の秋葉原は見渡す限り支持者ばかり。「こんな人たち」に悩まされる心配がないことは明らかだった。実際、今回の衆院選で首相遊説に同行してきた記者の一人は「会場でこれほど多くの日の丸が振られるのを初めて見た」と話す。

音楽に合わせて主役が登場
午後7時半、突然アップテンポの曲が流れ、「ウォーッ」と地鳴りのような歓声が上がった。日の丸の小旗が激しく振られる。安倍首相が麻生太郎財務相を伴って登場した。人気タレントのイベントのような雰囲気だ。
麻生財務相の短い演説のあと、マイクを握った安倍首相が何かを言うたび、拍手と歓声が湧き起こり、「そうだっ」と合いの手が飛ぶ。時に「ウソつけっ」「安倍やめろっ」とやじも飛ぶが、ただちに周囲から「選挙妨害!」「左翼は帰れっ」と反撃に遭う。大声でののしり合う聴衆もいた。
安倍首相の演説は19分間続いた。大部分は北朝鮮危機の強調(その裏返しで日米同盟強化と安全保障関連法の必要性)、および旧民主党政権時代の批判(その裏返しでアベノミクスの成果の強調)に費やされた。
北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長と果てしない挑発合戦を続ける米トランプ大統領との関係を、首相は誇らしげに語った。「国民の命と幸せを守り抜いていく。そのためにも国際社会と連携していかなければならない。ですから私はトランプ大統領といつも首脳会談を行い、必要な時には電話会談を行うことができる関係を築いてきました」
民主党民進党に名を変え、希望の党に合流した経緯については「ジャイアンツは、クライマックスシリーズに出られないからといって名前を変えますか?」と皮肉った。
だが、自民党が公約に掲げている憲法改正についての言及はなかった。9月の解散表明時に「選挙を通じて国民に説明する」としていた森友学園加計学園の問題も、ついに何も言わずじまいだった。

最初は有権者から逃げ回る印象
そもそも衆議院が解散され事実上の選挙戦となって以降、安倍首相の遊説は異例ずくめだった。
東京都内などでの遊説で場所も日時も公表せず、予定していた場所が外部に漏れると近くの別の場所に変更した。解散に打って出た本人の首相が有権者から逃げまわる印象を与え、レーダーに探知されにくい「ステルス戦闘機」をもじって「ステルス作戦」と評された。
10日の衆院選公示第一声は福島市で行ったが、立った場所は駅頭や繁華街ではなく、郊外の水田の中だった。市議会議員などの紹介がなければ入ることができず、聴衆は支持者とみられる200人ほど。しかも、道路を挟んで離れた一角に固められていた。
演説では、福島第1原発の事故や廃炉への言及が全くなかった。なおも多数に上る原発避難者にも触れないまま「復興は間違いなく進んでいる」と強調し、北朝鮮の脅威とアベノミクスの成果を訴え続けた。
公示後は遊説の日程を公表するようになったが、政権批判をする有権者が排除される場面もあった。

最終日の秋葉原
安倍首相は演説の最後に言った。「きょうは本当に、こんなにたくさんのみなさまにお集まりいただき、ありがとうございました! 勇気を与えていただきました」。この直後に聴衆の中で小さな「安倍やめろ」コールが起きた。が、すぐに支持者の大きな「安倍晋三」コールにかき消された。自分の言いたいことしか言わないリーダーに、支持者たちが熱狂する。直近の世論調査内閣支持率を不支持率が上回る状況とは相当に異なった世界が現出していた。
そんなふうに遊説活動を締めくくった安倍首相は、異論に耳を傾け、謙虚な国政運営を望む有権者の期待に応えるのだろうか。

<金口木舌>最高裁判官の国民審査 - 琉球新報(2017年10月22日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-597681.html
http://archive.is/2017.10.23-002554/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-597681.html

新党が名乗りを上げ、混戦模様の衆院選。今回の総選挙は選挙区と比例区を記すだけでなく、最高裁判所裁判官の国民審査もある

最高裁裁判官に就任後、初めての衆院選で審査を受け、10年たったら衆院選で再審査を受けると規定されている。有権者は罷免したい裁判官に「×」印を書く。「×」が過半数となれば罷免されるが、これまで審査を経て解職された裁判官はいない
▼今回審査対象となる裁判官は7人。最高裁判決と聞いて思い出すのは、昨年12月の国が県を提訴した辺野古埋め立て承認取り消しの違法確認訴訟だ。7人のうち1人がこの訴訟に関わり「承認取り消しは違法」との判断を示した
民法夫婦別姓を認めない規定が憲法違反かが争われた2015年12月の判決は、合憲という初判断が出た。今回審査対象の2人の裁判官がその裁判に関わり、2人とも「合憲」だった
▼昨年の参院選で「1票の格差」を合憲とした判決では、審査対象の7人のうち6人が「合憲」、1人は違憲状態とする個別意見を出した。それぞれ判決内容を見ると、違いがあり興味深い
▼ちなみに、ふさわしい裁判官として「○」印を書くと無効になる。分からないからといって、何も書かずに出すと「罷免すべきではない」と見なされる。国と県が裁判で争う場面が多い沖縄。「司法の独立」が問われる中、国民審査の意議は大きい。