少年法の保護対象「18歳未満」を検討 引き下げ諮問へ - 東京新聞(2016年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122102000124.html
http://megalodon.jp/2016-1221-1000-58/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122102000124.html

罪を犯した少年の刑事手続きや保護処分などを定める少年法の保護対象年齢について、法務省が現行の二十歳未満から十八歳未満への引き下げに向けた検討をしていることが分かった。同省は民法成人年齢を二十歳から十八歳に引き下げる改正案を来年の通常国会に提出しようとしている。これを踏まえ、来年中にも法制審議会(法相の諮問機関)に少年法の保護対象年齢の引き下げについて諮問するとみられる。
少年法は重大事件が起きる度に厳罰化の方向で改正され、現在は、十六歳以上の少年が殺人や傷害致死危険運転致死などで故意に人を死亡させた場合、原則として検察官送致(逆送)される。逆送されれば検察官は原則起訴し、刑事裁判が行われる。
新たに、少年法の保護対象年齢が十八歳未満に引き下げられれば、通常の刑事手続きが行われ、保護観察や少年院送致などの保護処分は行われなくなる。例えば、十八歳が万引や自転車盗など比較的軽い罪を犯した場合、警察が送検しない微罪処分起訴猶予、罰金刑で手続きが終わる。日弁連は「保護処分がないことで、少年を立ち直らせるための機会が減少し、再犯のリスクが高まる」など引き下げに反対している。
二〇〇七年に投票権年齢を十八歳以上とする国民投票法、昨年六月には選挙権の年齢を十八歳以上にする改正公選法が成立。昨年九月に自民党が、民法成人年齢を十八歳に引き下げ、少年法の適用年齢を十八歳未満とすべきだとする提言をまとめた。

少年法適用を18歳未満に引き下げた場合の対策案

  • 少年更生のための保護処分である少年院送致や保護観察に準ずる新たな処分を導入する
  • 受刑者にも少年院のような教育を受けられるようにする
  • 保護観察付き判決を受けて執行猶予期間中に再犯すると、現行では実刑しか言い渡せないが、再び執行猶予にできる制度を導入する
  • 保護観察になった人に、必要に応じて医療機関への受診や福祉機関への相談を義務付ける

少年法年齢引き下げ議論、法務省が勉強会の報告書公表 - News i(2016年12月20日)

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2942558.html
http://megalodon.jp/2016-1221-1000-34/news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2942558.html

少年法の適用年齢を現在の20歳未満から18歳未満に引き下げる議論が出ていることを受け、法務省は勉強会の報告書を公表し、今後、検討を進めることを明らかにしました。
現在の少年法は20歳未満を保護処分の対象としていますが、去年、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、少年法の適用年齢についても見直しの議論が出ていました。このため、法務省は勉強会を開いて教育や福祉などの専門家あわせて40人から意見を聞くなど調査を行い、その結果について報告書を公表しました。
引き下げに賛成の専門家は、「犯罪被害者からは『18歳、19歳の者が重大な罪を犯した場合、刑罰が減免されることは許されない』という意見がある」などと指摘した一方、「18歳、19歳の者は発達の途上にあって、教育の効果が期待できる」といった反対意見も出されました。さらに、報告書では引き下げになった場合、少年院にかわるような教育を刑務所でも受けられるようにするなどの案も示されています。
法務省は、この報告書をもとに、今後、検討を進めるとしています。

18・19歳の更生に対策案 少年法年齢引き下げにらみ - 朝日新聞(2016年12月21日)

http://www.asahi.com/articles/ASJDN2QQ1JDNUTIL002.html
http://megalodon.jp/2016-1221-1000-09/www.asahi.com/articles/ASJDN2QQ1JDNUTIL002.html

法務省は20日、少年法の適用年齢を現行の「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げた場合に必要となる対策の案を公表した。18、19歳でも少年院に準じた教育を受けられるようにしたり、再度の執行猶予を認めて立ち直りを促したりすることなどを盛り込んだ。
選挙権年齢が18歳以上になったことや、法相の諮問機関「法制審議会」が民法成人年齢を18歳に引き下げるよう答申したことを受け、省内で勉強会を開いてきた。弁護士や大学教授、福祉関係者ら40人から意見を聞き、少年法の適用年齢を検討。「大人として扱う年齢は一致させるべきだ」と引き下げに賛成する意見の一方で、日本弁護士連合会などを中心に「再犯が増える」「現在の制度でも立ち直りに有効だ」と反対の意見も出るなど、賛否が分かれた。
こうした議論を踏まえて同省は、引き下げた場合でも18、19歳には立ち直りや再犯防止のための教育が必要だと指摘。作業が中心となる刑務所では手厚い指導や教育が受けにくいことから、18、19歳の受刑者には少年院で行う内容の教育を受けられるようにする案を示した。

少年法適用年齢引き下げ、賛否併記 現行法「再非行防止に機能」 18、19歳は「相応の判断力」 法務省勉強会 - 産経新聞(2016年12月20日)

http://www.sankei.com/affairs/news/161220/afr1612200030-n1.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0959-49/www.sankei.com/affairs/news/161220/afr1612200030-n1.html

少年法の適用対象年齢などについて検討する法務省の勉強会の報告書が20日、公開された。現行法(20歳未満)を維持する観点からは「再非行の防止などに機能している」などの意見があり、18歳未満に引き下げるべきだとの立場からは「18、19歳には相応の判断力がある」などの意見が示された。法務省は、年齢に関して早ければ来年中にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する。
勉強会は大学教授や福祉関係者らで構成。平成27年11月から専門家ら40人から意見を聴取した。少年法をめぐっては、これまでも重大事件が起こるたびに対象年齢の引き下げなどを求める声が上がっていた。
報告書によると、まず現行法の20歳未満を維持すべきとの意見として、(1)公選法民法成人年齢と連動させる必要はない(2)現行法は再非行の防止、立ち直りを図る上で機能している−などの理由が挙げられた。
更生保護施設勤務者からは、「最近の若者は幼く、意思の疎通が困難」「22歳くらいにならないと、今後の生活などについて考えることができない」といった声もあった。
一方、18歳未満に引き下げるべきだとする意見には、(1)民法成人年齢が18歳に引き下げられた場合、成年者を保護処分の対象とするのは過剰な介入(2)選挙権年齢はすでに引き下げられ、18、19歳には相応の判断力があると評価できる−などがあった。
引き下げた場合の処遇制度案も検討され、(1)作業の義務の有無に違いがある懲役刑と禁錮刑を一本化して受刑者の特性に合った処遇を実施する(2)施設外の機関と連携して住居の確保や就労を支援する−などが挙がった。
民法成人年齢については法制審議会が「18歳引き下げが適当」との答申を出し、来年の通常国会への改正法案提出を目指して準備が進められている。

少年法 20歳未満の「少年」の刑事事件について特別の措置を講じて、成人とは違う扱いをすることを定める。成人が罪を犯した場合は「刑罰」の対象だが、少年の場合は原則として「保護処分」など更生に重きを置いた処分となる。家庭裁判所の判断で検察に逆送し、刑事裁判にかけることもある。その場合でも、犯行時18歳未満だった場合は死刑を科すことはできないなどの規定がある。

少年法引き下げは賛否併記…法務省勉強会報告書 - 読売新聞(2016年12月20日)

http://www.yomiuri.co.jp/national/20161220-OYT1T50063.html

法務省は20日、選挙権年齢の引き下げに伴い、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げるかどうかを議論してきた省内勉強会の検討結果をまとめた報告書を公表した。
引き下げについては賛否を併記する一方、18歳から一定年齢までの「若年者」の更生を促すのに必要な新たな刑事政策を検討事項として多数盛り込んだ。同省は、法制審議会(法相の諮問機関)への諮問も視野に、さらに議論を進める方針だ。
勉強会は昨年11月に始まり、少年の処遇や処罰などに関わる刑事、矯正、保護の各局長ら同省幹部のほか、少年法や刑事政策に詳しい大学教授3人がアドバイザーとして参加。弁護士や少年事件の被害者ら計40人からヒアリングなどを行った。

少年法適用年齢、維持か引き下げか…法務省が報告書まとめ - ReseMom(2016年12月20日)

http://resemom.jp/article/2016/12/20/35595.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0959-06/resemom.jp/article/2016/12/20/35595.html

法務省は12月20日、若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会の報告書を公表した。少年法適用対象年齢の在り方について、「現行法の20歳未満を維持すべき」と「18歳未満に引き下げるべき」のおもな理由をまとめている。
選挙年齢が18歳に引き下げられたことから、民法の成年年齢を18歳に引き下げることに向けた具体的な準備が進められている。これを受けて、少年法の適用年齢について検討するうえで必要となる基礎的知見を幅広く得るため、「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」を実施。平成27年11月2日〜平成28年7月29日まで合計10回のヒアリングを実施したほか、平成27年11月16日〜12月31日に若年者に対する刑事法制の在り方全般について広く国民の意見を募集した。
同勉強会は、これまでの成果として報告書をまとめた。少年法適用対象年齢の在り方について、「現行法の20歳未満を維持すべき」と「18歳未満に引き下げるべき」の2つの考え方とおもな理由を記載している。
現行法の20歳未満を維持すべき理由として、少年法適用対象年齢を引き下げても、刑罰による威嚇で非行を思いとどまらせることはできないという考えや、再犯・再非行増加への懸念、18歳・19歳の者の社会的・精神的な成熟度が以前よりも低くなっていること、再非行の防止と立ち直りには教育的・福祉的な援助が必要なことなどがあげられた。
一方、18歳未満に引き下げるべき理由として、少年法適用対象年齢の引下げは犯罪の抑止につながるという犯罪被害者からの意見や、公職選挙法の選挙権年齢や民法の成年年齢との整合性、諸外国では18歳を成人とする国が多いことなどがあげられた。
法務省では、今後も少年法適用対象年齢を含む若年者に対する処分や処遇の在り方について、さらに検討を重ねる予定であるという。

もんじゅ廃炉を正式決定 福井県知事は容認せず - 共同通信(2016年12月21日)

https://this.kiji.is/184112171777017335
http://megalodon.jp/2016-1221-2140-56/https://this.kiji.is:443/184112171777017335

政府は21日午後、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ福井県敦賀市)について原子力関係閣僚会議を開き、廃炉を正式に決定した。これに先立つ関連協議会で、福井県の西川一誠知事は「地元の理解なしに廃炉は容認できない」と反発しており、地元の意向を押し切った。
政府は核燃料サイクル政策を維持し、後継として、より実用化に近い高速炉の実証炉の開発に着手する。だがもんじゅに1兆円以上の国費を投じながら開発失敗の反省や検証は不十分で、国民の理解を得るには政策全体の見直しが避けられない。
政府は、廃炉に30年で最低でも3750億円かかると試算している。

辺野古訴訟 民意を封じ込める判決 - 朝日新聞(2016年12月21日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12715526.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2016-1221-0955-07/www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_shasetsu_01

役所がいったんこうすると決めたら、それを役所が自ら覆すことは難しい。たとえ多くの人の思いと違っても、当初の決定に違法な点がなければ裁判所は取り消しを認めない――。
沖縄・米軍普天間飛行場辺野古沖への移設計画をめぐる訴訟で、裁判所が示した判断を一言でいえばそうなる。
最高裁はきのう沖縄県側の上告を退ける判決を言い渡した。前の知事が認めた海の埋め立て処分を、後任の知事が取り消すことができる要件は何か。そんな法律論を淡々と展開したうえで導き出した結論である。
12ページの判決全文から浮かびあがるのは、民主主義の理念と地方自治の精神をないがしろにした司法の姿だ。
たしかに行政の意向が二転三転したら、業者らに混乱が起きる。だが自治体がめざす方向を決めるのは住民だ。辺野古移設に反対する県民の意思は、県トップの交代を招いた2年前の知事選をふくむ数々の選挙によって、くり返し表明されている。
にもかかわらず、政府は以前の路線をそのまま引き継げと次の知事に迫り、裁判所も政府に待ったをかけない。
沖縄の人びとの目には、国家権力が一体となって沖縄の声を封じ込めようとしているとしか映らないのではないか。
判決が及ぼす影響は辺野古問題にとどまらない。動き出したら止まらない公共工事など、この国が抱える病を、行政自身、さらに司法が正すことの難しさをうかがわせる。その観点からも疑問の残る判決といえよう。
沖縄県側の敗訴が確定し、政府は埋め立て工事にお墨付きを得たことになる。だが、事態が収束に向かうわけではない。移設までにはなお多くの手続きがあり、民意を背負う翁長知事は与えられた権限をフルに使って抵抗する構えだ。
それを知りつつ、政府が工事再開に突き進むのは賢明とはいえない。沖縄の声を政策決定過程に反映させることにこそ、力を注ぐべきだ。
訴訟に先立つ6月、国と地方との争いの解決にあたる第三者委員会は、普天間の返還という共通の目標の実現にむけた真摯(しんし)な協議を、政府と県の双方に求めた。政府はこれに前向きとは言いがたいが、「辺野古が唯一の解決策」と唱え続けても、展望が開けないのはこの間の経緯から明らかだ。
安倍首相は「沖縄の気持ちに真に寄り添う」大切さを説く。自らの言葉を実践し、この小さな島が抱える負担を少しでも軽くする道を示さねばならない。

辺野古訴訟、県の敗訴が確定 知事は別の権限で阻止へ - 東京新聞(2016年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122102000128.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0958-40/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122102000128.html

米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設に伴う新基地建設を巡り、沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志(おながたけし)知事を国が訴えた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は二十日、「承認取り消しは違法」として、知事側の上告を退けた。知事側全面敗訴の一審福岡高裁那覇支部の判決が確定した。政府は、中断していた建設工事を、年内にも再開する見通しだ。
この問題を巡る国と県の一連の争いで司法判断が確定したのは初めてで、裁判官四人の全員一致の結論。敗訴確定を受け、翁長知事は沖縄県庁で記者会見し、埋め立て承認取り消しの撤回に向け「速やかに手続きを進めていく」と述べた。
同時に「新基地を造らせないという公約実現に向け、全力で取り組む。あらゆる手法を用いる」と、別の知事権限を使って工事を阻止する考えを表明した。
第二小法廷は、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事が二〇一三年に行った辺野古沿岸の埋め立て承認の是非を中心に検討。埋め立ては、騒音被害や危険性の除去が喫緊の課題である普天間飛行場の代替施設の建設が目的で、新基地の面積は普天間と比べて縮小されることなどに触れ、「妥当性を欠くものでない」と判断した。
その上で、欠陥のない承認を職権で取り消した翁長知事の処分は違法で、是正を求めた国の指示に誤りはないとも指摘。指示から一週間で「相当の期間」が経過したとし、従わなかったことは違法だと結論付けた。
地方自治法に基づき、国と地方自治体が争う訴訟は、二審制となる。九月の一審は「普天間飛行場の危険除去には辺野古移設以外ない」「国の計画が不合理でなければ知事は尊重すべきだ」などと新基地建設の妥当性や国と地方の役割分担にも踏み込んだが、今回の判決はこうした論点には触れなかった。

 辺野古で県敗訴 政治的な解決に努力を - 毎日新聞(2016年12月21日)

http://mainichi.jp/articles/20161221/ddm/005/070/105000c
http://megalodon.jp/2016-1221-0958-15/mainichi.jp/articles/20161221/ddm/005/070/105000c

司法の最終判断は下ったが、政治的な解決にはほど遠い。
沖縄県・米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる国と県の訴訟で、最高裁は、埋め立て承認を取り消した翁長雄志(おながたけし)知事の対応を違法と判断した。これにより県の敗訴が確定した。
最高裁の論理は、前知事による埋め立て承認に違法な点が認められない以上、それを取り消した翁長氏の処分は違法というものだ。
今回の訴訟では、国防・外交にかかわる問題で国と地方の意見が対立した場合の判断や、沖縄県辺野古新基地建設は地方自治を保障した憲法92条に反すると訴えたことについての憲法判断が注目された。だが、最高裁はこうした点にはいっさい言及せず、行政手続きとしての適否の判断に終始したと言える。
確定判決には従うと言ってきた翁長氏は、近く埋め立て承認取り消しを撤回する見通しだ。22日には沖縄県・米軍北部訓練場の一部返還にあわせた式典が予定されている。政府は負担軽減をアピールして、辺野古移設に弾みをつけたい考えだ。これらを受けて政府は、移設工事を再開する方針だ。
翁長氏は「あらゆる手段で移設を阻止する」とも語り、他の知事権限を動員して対抗する姿勢を見せる。
ただ、辺野古移設の問題は、法律論をいくら戦わせても解決できないだろう。国と県が泥沼の法廷対立をしても、お互いの利益にならない。
この問題は、前知事が県外移設の公約をひるがえして埋め立てを承認したことに県民が猛反発し、翌年の知事選で、移設反対派の翁長県政を誕生させたことに始まる。
移設反対の民意が何度も示されながら、政府が前知事の承認を錦の御旗(みはた)のようにして移設を強行するのが、民主主義や地方自治の精神に照らして適切かが問われている。
本質は行政手続きではなく、政治のあり方だ。政府は自らの手で解決を主導すべきだ。
辺野古に建設予定の新基地や、北部訓練場の返還に伴い新設されたヘリ離着陸帯には、米軍の新型輸送機オスプレイが飛び交うことになる。
名護市沖で起きたオスプレイの重大事故で、原因究明も終わらないまま飛行を再開させた日米当局の態度に、沖縄では反発が高まっている。政府が最高裁判決でお墨付きを得たとばかりに移設を強行してもうまくいかないだろう。
政府は、話し合いで解決できないから裁判に持ち込んだと考えているようだが、形だけの対話姿勢を示していただけではないか。回り道のようでも国と県が再度、真摯(しんし)に話し合いをすることを求めたい。

辺野古判決 沖縄の声を聞かぬとは - 東京新聞(2016年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122102000140.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0957-48/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122102000140.html

沖縄の声を聞かずに結論を出すとは…。米軍普天間飛行場辺野古移設をめぐる最高裁判決は「沖縄敗訴」だった。国と地方は対等という地方自治の精神を踏みにじる判断と言うべきである。
地方自治とは何だろうか。憲法の条文には、地方公共団体の組織や運営については「地方自治の本旨」に基づき法律で定めるとしている。では「地方自治の本旨」とは何か。その地域の住民自らが自分たちの要望に沿った政治を国から干渉を受けることなく実現することだと解されている。
だから、「地方自治は民主主義の学校」と言われる。中央政府が一手に強大な権力を握らないよう、権力を地方に分散させる意義があるとも説明されている。明治憲法にはなかった規定であり、戦後の民主主義社会では十分に尊重されねばならない条文だ。
だから、沖縄県側は「民意に反する新基地建設の強行は憲法が保障する地方自治権の侵害だ」と憲法違反を訴え上告していた。
この観点からすれば、最高裁は大法廷に回付し、十分に審理したうえで、憲法判断に踏み込むべきだったと考える。だが翁長雄志(おながたけし)知事の言い分を聞く弁論さえ開かず、「国の指示に従わないのは不作為で違法」と退けた。
米軍基地という政治的・外交的な問題には、確かに国の裁量が働くであろう。だが、全面的に国の政策の前に地方が従順であるだけなら、地方自治の精神は機能しない。当然、米軍基地の大半を沖縄に押しつける理由にもならない。
別の問題点もある。基地の辺野古移設に伴う海の埋め立て承認が今回の訴訟のテーマだった。つまり前知事による埋め立て承認の判断に違法性がなければ、現知事はそれを取り消すことができないのかというポイントだ。
選挙という「民意」が現知事の主張を支持すれば、政策を変更できるのは当然ではないか。
この点について、最高裁は「前知事の承認を審理判断すべきだ」「(現知事が)職権により承認を取り消すことは許されず、違法となる」と述べた。大いに疑問を抱く判断である。
それでは選挙で民意に問うた意味がなくなってしまうからだ。県民の合意がないまま埋め立てを強行しては「民意より米軍優先」そのものにもなる。
高裁は「辺野古しかない」と言い切った。その言葉はなくとも、最高裁の思考回路も「辺野古ありき」だったのではなかろうか。

預貯金も遺産分割対象 最高裁判例変更 相続人の合意不要 - 東京新聞(2016年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122002000127.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0921-51/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122002000127.html


亡くなった人の預貯金を遺産分割の対象にできるかどうかが争われた家事審判の決定で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は十九日、「預貯金は遺産分割の対象となる」との初判断を示し、従来の判例を変更した。預貯金を対象とせずに遺産分割をした二審決定を破棄し、審理を大阪高裁に差し戻した。十五人の裁判官全員一致の意見。


民法の相続分野の見直しを検討している法制審議会は二〇一三年に最高裁婚外子の遺産相続を巡る民法の規定を違憲とする判断を示したことを機に、民法の見直しに着手。遺産相続に関しては最高裁の決定を控え、検討を一時中断していたが、今回の決定が議論に影響するとみられる。
大法廷は「遺産分割では、(分割の)対象を幅広くすることが望ましく、預貯金は分割の際に(配分)調整しやすい現金との差がない」などとし、遺産分割の対象になると結論付けた。
過去の最高裁判決により、預貯金のように分けられる債権は全相続人の合意がなければ、法定相続分に応じて分割されてきた。今後は合意がなくても、遺産分割の対象となる。


今回の審判は、故人のめい同士による争いで、法定相続分は二分の一ずつ。遺産の大半は約四千万円の預貯金で、従来の判例では、二千万円ずつ分け合うことになるが、一人は約五千五百万円の生前贈与を受けていたため、別の一人が預貯金の全額を相続できると主張していた。

企業の婚活支援は必要? 市民団体が9300人の署名提出 - 東京新聞(2016年12月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016121902000216.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0921-24/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016121902000216.html

内閣府が従業員の結婚支援に取り組むよう企業に求める検討を行っていることについて、市民団体「女性と人権全国ネットワーク」は、「職場でのセクハラ(性的嫌がらせ)を助長する」として、見直しを求める約九千三百人の署名を郵送で提出した。十九日に記者会見し、佐藤香共同代表は「職場にはさまざまな背景の人がいる。少子化対策イコール婚活支援というのは、あまりに短絡的だ」と批判した。
「職場で結婚を強要することになる」とし、身体的な理由で出産できない人や、異性との結婚を望まない性的少数者(LGBT)の人々らにも苦痛を与えると指摘。
出産の奨励よりも、長時間労働を是正して子育てしやすい環境づくりを整備したり、婚外子らの差別的な扱いをやめたりするよう、国に求めている。
内閣府の検討は、二〇一五年に一・四六だった合計特殊出生率を一・八に上げるため、出会いの場の提供など若者の結婚支援を充実させるとした国の「一億総活躍プラン」に基づく。十月に専門家らの「結婚の希望をかなえる環境整備に向けた企業・団体等の取り組みに関する検討会」を設置し、今月七日の第四回会議で、提言の骨子案を公表した。
案では、企業が取り組む具体例として、従業員の結婚の意向調査や、既婚者が「婚活メンター(サポーター)」となって独身者の相談に乗る仕組み、社会貢献として地域で独身者の交流会の開催などを挙げる。効果のある取り組みは国や自治体が表彰することも提案。企業が婚活支援に取り組みやすい機運を社会全体で高める必要もあるとしている。
国は、自治体の婚活支援事業への補助金を、企業や大学の取り組みにも拡大。検討会の提言内容に沿い、対象とする内容を決める。

内閣府が企業へ婚活支援奨励 反対議員ら「セクハラを加速させる」:東京 - 東京新聞(2016年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201612/CK2016122002000172.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0921-01/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201612/CK2016122002000172.html

内閣府少子化対策として企業に従業員の結婚支援を奨励しようとしていることに対し、「セクハラ(性的嫌がらせ)を引き起こす」と反対する市民団体や議員、労働組合などが十九日、千代田区永田町の参院議員会館で緊急集会を開いた。二年前、都議会で一般質問中に「結婚しろ」とヤジを受けた塩村文夏(あやか)都議も参加し「私の件では世界中から(都議会へ)非難が集まったのに、同じことをするのか」と批判した。
塩村都議へのヤジでは、発言者の処分を求めて九万人以上が署名し、海外でも性差別的な暴言として報道された。塩村都議は、企業内で婚活支援がされれば「公然と『結婚しろ』と言える職場環境になる」と懸念。「検討内容を抜本的に見直すべきだ」と語った。
内閣府は十月に検討会を設置し、七日の第四回会議で提言骨子案を公表。企業が従業員の結婚ニーズを調べ、社内で既婚者が「婚活メンター」となって独身者の相談に乗る仕組みや、効果のあった企業を表彰するなど提案している。
連合の井上久美枝総合男女平等局長は「結婚できるのに必要なのは婚活支援ではなく、非正規労働者の処遇改善だ」と話した。
骨子案には、セクハラやパワハラにならないよう配慮を求める記述もあるが、戒能民江お茶の水女子大名誉教授(ジェンダー法学)は「配慮しろと言ってできるなら、とっくにセクハラはなくなっている。声を上げにくい職場へ、セクハラを加速させる提言を行ってはいけない」と訴えた。
内閣府は二十日に最終の検討会を開き、提言をまとめる予定。  (柏崎智子)

返還不要の給付型奨学金 月額最大4万円 政府支給へ - 東京新聞(2016年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122002000126.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0920-28/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016122002000126.html

政府は十九日、二〇一八年度から、大学や短大などへの進学者ら一学年当たり約二万人に、返還不要の給付型奨学金制度を導入すると発表した。住民税非課税世帯が対象で給付月額は二万〜四万円。児童養護施設出身者らには、入学時の一時金として二十四万円を別途支給する。一七年度は児童養護施設出身者や経済的負担の大きい私立大の下宿生ら計約二千六百五十人を対象に先行実施する。
松野博一文部科学相麻生太郎財務相が合意した。来年の通常国会日本学生支援機構法を改正し、財源を確保するための基金を同機構に設ける。一七年度予算案に先行実施分約十四億円を含む、計七十億円を計上。将来的には給付額が年間二百億円超になる。
給付月額は国公立大の自宅生は二万円、国公立大の下宿生と私立大の自宅生は三万円、私立大の下宿生は四万円。一方、文科省はこのうち、対象者が国立大に進学した場合、必ず授業料を免除した上で、自宅生は給付をなくし、下宿生は二万円に減額して給付する制度にしたい考えだ。
対象者は各高校が推薦する。全国約五千校ある高校で少なくとも各校一人は受けられるようにする。
各校で推薦基準を設け、高校の成績、部活動や課外活動などの実績のほか、進学意欲を書いたリポートなどで総合的に判断する。
住民税非課税世帯のうち、大学などへの進学者は推計で一学年約六万人で、給付対象者はその三分の一にとどまる。
政府は無利子奨学金の拡充も決めた。非課税世帯を対象にこれまで貸与条件だった成績基準を撤廃。条件を満たしても貸与枠がいっぱいで借りられなかった「残存適格者」も解消させるため、一六年度から四万四千人分増の五十一万九千人分を一七年度予算案に計上した。

司法修習生 月額13万5000円給付制度新設へ 法務省 - 毎日新聞(2016年12月19日)

http://mainichi.jp/articles/20161220/k00/00m/040/054000c
http://megalodon.jp/2016-1221-0917-48/mainichi.jp/articles/20161220/k00/00m/040/054000c

法務省は19日、裁判官、検察官、弁護士になるために司法研修所などで約1年間学ぶ司法修習生に対し、一律月額13万5000円を給付する制度を新設する方針を明らかにした。希望する修習生に国が資金を貸し付ける現行の「貸与制」を見直すことによって、経済的負担から法曹希望者が減るのを食い止める狙いがある。新制度の内容を盛り込んだ裁判所法の改正案を来年の通常国会に提出する。
改正案が成立すれば、来年度以降に修習生となる司法試験合格者から新制度が採用される予定。月額13万5000円の給付のほか、修習期間中にアパートを賃借するなど住居費が必要な修習生には月額3万5000円も給付される。現行の貸与制も貸与額を見直し、新制度と併用できる。
修習生の経済的支援を巡っては、月額約20万円の給与を支給する「給費制」が2011年、国の財政負担の軽減を理由に廃止された。代わって無利息で月額18万〜28万円の貸し付けを受けられ、修習が終わった5年後から返済を10年間で完了する貸与制が導入された。
法曹希望者は、法科大学院修了者の司法試験合格率が低迷していることなどを背景に激減している。法科大学院の志願者数は04年度に7万2800人だったが、今年度は8274人。こうした状況から政府は6月、「司法修習生に対する経済的支援を含む法曹人材確保の充実・強化を推進する」と閣議決定最高裁法務省、日本弁護士連合会が対応策を検討していた。【鈴木一生】

虐待事件裁判 子どもの心理負担軽減を 証言DVD、地裁で証拠採用 - 東京新聞(2016年12月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016121802000102.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0920-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016121802000102.html


旭川や高松、徳島、那覇の各地裁で昨年までに開かれた子どもに対する虐待や強制わいせつ事件の公判で、検察側が被害者の証言を録音録画したDVDを証拠として提出し、裁判所が採用するケースがあったことが、関係者への取材で分かった。法廷での被害者への証人尋問が回避された。つらい体験を何度も聞かれることで子どもが感じる心理的負担の軽減を目指す司法の取り組みとして注目される。
欧米では司法、福祉の関係者が連携し、代表者が原則一回だけ聴き取りをする「司法面接」制度を導入。録音録画した内容が捜査上証拠として扱われ、法廷でも証言の代わりに使われる。日本の検察にも同様の手法を研究する動きが出ている。
関係者によると、被害者の証言を収めたDVDが証拠採用されたのは、旭川、高松、徳島、那覇の四地裁で開かれた強制わいせつ事件や傷害事件の四公判と、高松地裁丸亀支部であった傷害事件の二公判。判決は二〇一四〜一五年にそれぞれ言い渡され、いずれも被告の有罪が確定している。
各事件の被害者は事件当時七〜十四歳で、検察側が被害立証のため、被害者の証言を収録したDVDを証拠として提出。弁護側も同意し、証人尋問は行われなかった。
高松、徳島両地裁と高松地裁丸亀支部の公判ではDVDを再生せずに検察官が概要を読み上げ、旭川那覇両地裁では一部を再生。旭川地裁では、裁判官や検察官、弁護人がモニターを見ながらイヤホンで音声を聞き、被告にはモニターを見せずに音声だけを聞かせるよう配慮したという。
一橋大の緑大輔(みどりだいすけ)准教授(刑事訴訟法)は一連の動きを「子どもの負担軽減につながる」と評価する一方、「冤罪(えんざい)を生まないためには調べ段階での誘導のない質問技術が必要となるが、検察官は有罪立証が念頭にあり誘導的になる危険性が排除できない」と指摘。「弁護側が争う事件でも裁判所の判断で証言DVDが証拠採用されるケースはあり得るが、弁護側が証人尋問できない場合に(手続き上の)公正さをどう担保するかが課題となる」としている。

オスプレイの飛行再開 事故6日後、原因究明を後回し 政府追認 - 東京新聞(2016年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201612/CK2016122002000128.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0919-35/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201612/CK2016122002000128.html


在沖縄米軍は十九日、大破事故のため停止していた米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)所属の新型輸送機オスプレイの飛行を再開した。複数機が飛行場から離陸するのを共同通信が確認した。十三日夜に沖縄本島北部沿岸部で起きた事故から六日後の飛行再開となる。沖縄県翁長雄志(おながたけし)知事は「一方的に再開を強行しようとする姿勢は、信頼関係を大きく損ね、到底容認できない」と猛反発した。日本政府は米側の飛行再開を追認している。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、米側が「オスプレイの機体自体に問題はない」としている点を踏まえ「米側の説明は防衛省自衛隊の専門的知見に照らし合理性が認められる。再開は理解できる」と強調した。
翁長氏は日本政府の対応に関し「米側の説明をうのみにして米軍の考えを最優先とし、極めて県民不在と言わざるを得ない。強い憤りを感じる」と県庁で記者団に述べた。
防衛省の発表資料によると、大破事故は空中給油訓練中の乱気流などが原因で「機体自体の安全性は確認できた」として、空中給油以外の飛行を再開すると伝えている。普天間所属の全てのオスプレイを機体点検し「問題はなかった」とした。
また米軍は大破機を上空から監視していた別のオスプレイが十三日に普天間飛行場胴体着陸した事案に関し、格納されている脚部を機体から出すことができなかったと指摘した。原因として電気系統の不具合を挙げた。
在沖縄米軍は十九日、飛行再開の意向を、大破事故三日後の十六日に在日米軍が日本政府に伝達していたと明らかにした。

◆訓練内容・場所、不明なまま
米軍は事故原因の全容を明らかにする前に、オスプレイの飛行を再開した。安倍晋三首相は原因の徹底的な究明を求めるとしていたが、「抑止力の向上」(稲田朋美防衛相)を優先させ、再開を了承した。再発防止に不可欠な原因究明は、米軍の強い意向によってまたも後回しにされた。
在沖縄米軍トップのニコルソン沖縄地域調整官は「安全性と信頼性に米軍は高い自信を持っている。そのことを日本国民が理解することが重要だ」との談話を発表した。
米軍は大破事故は空中給油の訓練が原因で、機体に問題はないとしている。胴体着陸事故は電気系統の不具合が原因だったが、部品交換で解消できるとしている。この説明だけで原因が究明されたとはいえない。
事故が相次いでいるオスプレイ。二〇一二年には低空飛行訓練ルートを公表したが、いつ、どこで、どのような訓練をしているのか不明な点が多い。
夜間の給油訓練の実施は今回の事故で初めて判明した。今月上旬には、沖縄県宜野座村の集落の上空で、物資をつり下げた飛行訓練を実施。防衛省沖縄防衛局は重大事故を招く危険が高いとして、米側に抗議した。ただ、「詳細な訓練シナリオまでは把握できない」(日米防衛協力課)のが実情だ。
航空評論家青木謙知(よしとも)さんは「事故原因調査の中間報告もなく、再発防止策も定まっていない。完全に米側の都合による飛行再開だ」と指摘する。 (新開浩)

オスプレイ 飛行再開、理解できぬ - 東京新聞(2016年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122002000140.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0919-07/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122002000140.html

海岸に「墜落」して停止されていた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの飛行を米軍が再開した。安全性の確認は十分とは言えず、沖縄県民の反対も無視した飛行再開だ。全く理解できない。
海兵隊オスプレイが十三日に沖縄県名護市の海岸に不時着、大破してから六日。事故後停止していた同型機の飛行を再開した。在日米軍は飛行再開について「安全手順や機体を徹底的、慎重に見直した。安全な飛行運用を継続できると高い自信を持っている」と説明する。
今回の「墜落」は、空中給油訓練中、事故機のプロペラが乱気流で給油ホースに接触して破損、飛行が不安定になったため起きた。空中給油は引き続き停止するものの、機体自体の原因ではないとして飛行を再開するのだという。
しかし、開発段階から実戦配備後まで墜落事故を繰り返し、安全性に懸念が残る機種である。同じ十三日には別の機が米軍普天間飛行場に着陸する際、脚部の故障で胴体着陸する事故も起きた。
ヘリコプター機能も持つオスプレイは、通常の固定翼機よりプロペラが大きい。空中給油を行えば乱気流時に給油ホース切断の危険性は高まる。操縦の難しさに加え構造上の問題も無視できまい。
米側の説明を受けた菅義偉官房長官稲田朋美防衛相はそろって「飛行再開は理解できる」と述べたが、日米地位協定の制約があり日本独自の機体捜査をしたわけではない。米軍はもちろん、日本政府の対応も全く理解できない。
米軍基地が集中し、オスプレイの危険に、より深刻に直面している沖縄県では翁長雄志県知事ら多くの県民が飛行再開に反対し、撤去を求める。なぜ反対を押し切って強引に飛行再開を急ぐのか。
二十二日には政府主催の米軍北部訓練場の部分返還式典が行われる。返還条件として新設されたヘリパッドは、当初は想定されていなかったオスプレイも使用する。
飛行再開を急いだのは、返還式典を前に、オスプレイの飛行を既成事実化するためではないのか。
オスプレイ陸上自衛隊も十七機導入し、千葉県の陸自木更津駐屯地では普天間に配備された米軍の二十四機の定期整備も始まる。米軍横田基地(東京都)にも米空軍特殊作戦用機が配備される。
オスプレイは日本の空を飛び回る。危険にさらされるのはもはや沖縄県だけではない。すべての国民が直視すべき現実である。

子の引き渡し 連れ去りを生まぬよう - 東京新聞(2016年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122002000139.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0925-53/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122002000139.html

離婚した夫婦の間で子どもの奪い合いが起きたとき、引き渡しはどうあるべきか、ルール化に向けて国の法制審議会が議論を始めた。何より、子どもの苦しみを増やさない議論を尽くしてほしい。
離婚した夫婦が子どもの親権をめぐって争い、家裁が親権者や監護権者を確定した後も、親権者でない親が同居している子どもを引き渡さない場合がある。解決が進まないと親権者側が裁判所に「強制執行」を申し立て、裁判所の職員が子どもを引き取りにいくことになるが、現場で親ともめることが少なくない。昨年、裁判に勝って強制執行を申し立てられた九十七件のうち、子どもが引き渡されたのは二十七件のみだった。
執行の際には、同居する親の家で、親が一緒にいるときに行うなど、無理な引き離しにならないための一定の配慮がされてきたが、子の引き渡しに関する明確な規定がないため対応はまちまちだ。
法制審で検討される子どもの引き渡しイメージは(1)裁判決定に反して子の引き渡しに応じない場合は制裁金を科す(2)それでも応じない場合は裁判所が子どもを引き取りに行く−という二段構えだ。
こうしたルール化の背景にあるのは二〇一四年に日本が加盟した「ハーグ条約」だ。国際結婚で離婚した夫婦間の子どもの引き渡しを決めた規定で、関連法に沿って国内ルールの整備が求められていた。裁判で子どもの引き渡しが決まっても応じない場合にまずは制裁金を科し、それでも応じない場合に強制執行へと移すのは、ハーグ条約に準じた方法である。
条約の基本にあるのは、子どもの心身への悪影響を避けるために連れ去りを防ぎ、離婚後も夫婦が共に子どもの成長にかかわることへの配慮である。
日本はどうか。離婚した夫婦は共同で親権を持つことができないため、離婚前から子どもを連れて家を出て、親権争いに備えた既成事実化を図る例が少なくない。
子どもと暮らせない親が子どもとの面会を求めても親権者側が応じないケースも多い。家裁に面会交流を求める調停の申し立ては十年間で三倍に増え、一万件を超えた。
離婚後も双方が親権者となり、同居できない親も子どもとの交流を保てるなら、子どもの奪い合いはしないだろう。子どもの引き渡しという最終局面だけでなく、離婚時に面会交流を取り決めて強制力を持たせるなど、全体に目を向けるべきだ。

(私説・論説室から)軍艦島で会った英国人 - 東京新聞(2016年12月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016121902000122.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0918-17/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2016121902000122.html

長崎市の南西沖十八キロ、かつて炭鉱として栄えた軍艦島へのツアーに参加した。船は接岸したが波が高くて上陸はかなわず、周囲を巡り、廃虚になったアパートや病院、学校などの外観を写真撮影しただけだった。
船で隣に座ったのが英国人の男性。二十代前半のようでサムと名乗った。なぜ一人で軍艦島にと聞くと、映画007シリーズ「スカイフォール」に出てくる「デッド・シティー」のモデルになった場所なので直接見たかったと言う。物好きな人だなと思ったが、下船後に昼食に誘ってみた。
シャイで口数も少なかったが、神社、仏閣に興味があり、京都では清水寺伏見稲荷がよかったと言う。次に広島、長崎を訪れ平和公園原爆資料館を見た。「原爆の惨状は本当に恐ろしい。平和が一番大切だと思った」。私は軍艦島世界文化遺産の一施設に登録されたが、韓国と中国が反対したと説明した。すると「知っています。戦争中に炭鉱で強制的に働かせたのでしょう」と言う。日本語はできないが、歴史や文化を知りたい、史跡を訪ねてみたいと話していた。
一人で地図を見ている外国人を時々見かける。観光か買い物、食べ歩きだろうと思っていたが、サムのように、日本に特別な何かを探しに来たのかもしれない。これから街で外国人に何か尋ねられたら、できるだけ力になりたいと思う。 (山本勇二

減らぬ福祉現場の労災 過去10年で最多120人:群馬 - 東京新聞(2016年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201612/CK2016122002000185.html
http://megalodon.jp/2016-1221-0916-45/www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201612/CK2016122002000185.html

県内の社会福祉施設で昨年発生した労災の人数が、百二十人と過去十年間で最多となり、このうち過労死が一人いた実態が群馬労働局の調査で分かった。高齢者や障害者らの施設で介助する職員が入所者を持ち上げたり、支えたりする際に転倒したり、腰を痛めたりするケースが多いとみられる。労災に遭うのは年配で、経験の浅い職員が多く、人手不足できついとされる福祉の現場で職員の負担が増大している。 (菅原洋)
社会福祉施設での労災(休業四日以上)は、今年一〜十一月の速報値も九十九人となり、年間では二年連続で百人を超える見通し。二〇〇六〜〇九年は五十〜八十人台で推移し、一〇〜一四年からは九十人台に増加。昨年は前年より三十人も急増した。
過労死は特別養護老人ホームの男性職員が勤務中に急性心不全で死亡し、「長時間の過重労働」で労災認定された。社会福祉施設での認定は珍しいという。
労災全体の内訳では転倒が38%と最多で、次いで腰を痛めるなどが33%と続いた。具体的には、五十代の女性職員が利用者をベッドから車いすに移すために体を抱えた際、腰に強い痛みを感じ、十七日間休業したケースがあった。
県外では、入浴介助の際に入所者が危険な動きをしたため、事故を避けるために抱えようとした職員が転倒したケースもあった。
群馬労働局の調査では、休業期間の割合は一カ月以上三カ月未満という重い事例が最多の35%となり、次いで二週間以上一カ月未満の33%となった。
経験年数別では、一年以内が三十六人と最多で、このうち五十代が十三人と最も多かった。次いで、一年超三年以内の三十三人で、ここでも五十代が十七人と最多だった。
群馬労働局健康安全課は「建設現場の労災は機械操作の確認などで防止できる面があるが、社会福祉施設は入所者という人が相手なので、対策が難しい。高齢化社会を迎え、今後も増加が懸念される」と指摘している。