アサンジ容疑者 メディア規制を恐れる - 東京新聞(2019年4月19日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019041902000159.html
https://megalodon.jp/2019-0419-1032-04/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/editorial/CK2019041902000159.html

国家の暗部を暴く権力の監視人なのか、それとも機密を盗んだ犯罪者なのか-。英当局に逮捕されたウィキリークス創設者のアサンジ容疑者の評価は分かれる。その功罪を冷静に見極めたい。
内部告発サイトのウィキリークスは、二〇一〇年に米陸軍の情報分析官から提供を受けたイラク戦争アフガニスタン戦争の関連文書をはじめ機密指定された大量の資料を公開した。
とりわけ、イラクで活動する米軍ヘリが一般市民やジャーナリストを武装勢力と誤認して殺害した映像は、世界に大きな衝撃を与えた。
米司法省の起訴状によると、アサンジ容疑者の罪状は、この情報分析官が米当局のネットワークにハッキングで侵入するのをほう助するために共謀したことだ。
憲法が保障する「報道の自由」に抵触しないように、機密漏えいに関わる罪状を適用したとみられる。
合憲性が問われる関門を巧みに迂回(うかい)したとも言えるこの手法に対して、メディア規制に悪用されるという懸念が広がっている。ヒューマン・ライツ・ウオッチはじめ人権団体などは、アサンジ容疑者の身柄を米当局に引き渡さないよう英当局に求めている。
権力監視の役割を持つメディアを黙らせるとともに、不正を内部告発しようという人を萎縮させる危険性があるからだ。公共の利益に資する情報の提供・公開に二の足を踏む風潮が広がり、国民の知る権利が侵害されるようなことがあってはならない。
ただ、アサンジ容疑者には不透明感がつきまとうのも事実だ。
ロシアが二〇一六年の米大統領選に介入したロシア疑惑を捜査したモラー特別検察官は、ロシアがクリントン陣営へのサイバー攻撃で大量のメールを入手し、ウィキリークスに提供したと断定した。
選挙中は「ウィキリークスを愛している」と繰り返したトランプ大統領は、アサンジ容疑者が逮捕されるや、「私はウィキリークスについて何も知らない」と手のひらを返した。
だが、トランプ氏の元側近はウィキリークスのメール暴露の計画をトランプ氏も事前に知らされていた、と議会証言している。
トランプ陣営とロシア、それにウィキリークス三者の関係は、全容が解明されたわけではない。ジャーナリズムを逸脱する行為はなかったのか、アサンジ容疑者には説明する責任がある。

 

成年後見の見直し 生活支援に重点を置いて - 毎日新聞(2019年4月19日)

https://mainichi.jp/articles/20190419/ddm/005/070/066000c
http://archive.today/2019.04.19-013256/https://mainichi.jp/articles/20190419/ddm/005/070/066000c

認知症などで判断能力が弱くなったお年寄りなどの権利擁護を担う成年後見制度が大きく変わる。
最高裁判所は、後見人の業務について財産管理より生活支援を中心とした「身上保護」に重点を置き、弁護士や司法書士などの専門職よりも「身近な親族を後見人に選任することが望ましい」との考えを全国の家庭裁判所に示した。
認知症の人は500万人にも上るが、制度の利用者は知的障害者を含めても約22万人に過ぎない。利用者がメリットを感じないためだ。
現在は専門職など親族以外の後見人が全体の約7割を占める。利用者は経済状況に応じて毎月2万~3万円の利用料を取られる。ただ、信託銀行に財産を預け、必要な時に家庭裁判所の許可を得て引き出す「後見制度支援信託」を利用する形での財産管理はできるようになった。
後見人に必要とされるのは、利用者が福祉サービスや居住環境などに満足しているかをチェックし、どんな生活を望んでいるのかをくみ取って、それを実現することだ。「意思決定支援」や「身上保護」と言われる役割である。
厚生労働省の研究班が全国の知的障害者の施設を対象に調査したところ、被後見人に面会に来る頻度が「ほぼ来ない」「年1~2回程度」が弁護士では77%、司法書士で43%に上った。これで身上保護などできるわけがない。しかも、毎月の利用料を取り続けているのである。
最高裁は本人の財産から後見人に支払われる報酬を業務量や難易度に応じた金額にするよう全国の家裁に通知した。当然である。
利用者をよく知る親族の方が身上保護に向いているとの判断は理解できる。ただ、財産の流用などの不祥事が多いのも親族である。
このため、厚労省は親族後見を支える「中核機関」の設置を市町村に求めている。まだ全体の5%しか設置されていないが、弁護士などを配置し、後見業務の研修を受けた「市民後見人」にも協力を求めて、親族を支える仕組みを作るべきだ。
高齢者を狙った特殊詐欺事件や虐待は増え、権利擁護の必要性は高まっている。生活支援を充実させ、利用者が真に必要と感じられる成年後見制度にしなくてはならない。

 

[米兵 女性殺害事件]米軍は説明責任果たせ - 沖縄タイムス(2019年4月19日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/410756
https://megalodon.jp/2019-0419-1034-30/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/410756

米海軍兵が日本人女性を殺害した後に自殺したとみられる事件で、被害女性との接触を禁止する「軍事保護命令」(MPO)を適用されていた同海軍兵に対し、米軍が事件当日、外泊許可を出していたことが分かった。
衆院外務委員会で赤嶺政賢氏(共産)の質問に、外務省審議官が答えた。
海軍兵は事件前夜から女性と一緒にいたことが確認されており、翌朝に2人は遺体で発見されている。外泊許可が出ていなければ事件は防げた可能性がある。
関係者によると女性は、海軍兵にMPOが適用されたことを知り、これ以上の被害を受けないで済むと安心していた。そんな最中に事件は起きた。海軍兵が目の前に現れた時の、女性の驚きと恐怖は察するに余りある。
MPOは、DV(ドメスティックバイオレンス)の訴えや男女間のトラブルがあった場合に、憲兵隊(MP)や軍の上司が適用を決める。適用された場合は接触したり、電子メールや電話で連絡したりすることが禁止される。例えば、買い物先で偶然居合わせたとしても、後から来た方が店を出なければならないなど細かくルールが決められ、破れば罰則も科せられる。深刻なケースの場合は、外出禁止などの行動制限と並行して発令されることもあるという。
今回、女性に対するMPOが発令されている海軍兵に、米軍はなぜ外泊許可を出したのか。許可を出せば、海軍兵が女性宅へ行く懸念は当然あったはずだ。

    ■    ■

海軍兵の女性に対するストーカー行為や嫌がらせは昨秋ごろ始まった。女性は当時から友人たちに「米軍や県警に何度訴えてもやまない」と話し悩んでいた。昨年10月には女性宅で海軍兵による器物損壊の訴えを受けて沖縄署員が現場へ。今年1月に入ると海軍兵が女性宅に押し入り暴行するなど、事件に至る経緯はエスカレートしていくDVそのものだ。
MPO適用後いったんは姿が見えなくなった海軍兵だが3月下旬、再び女性宅周辺で目撃されたといううわさを聞き女性はおびえていたという。
米軍は事件直前の4月上旬、女性に対する暴行について県警が捜査を終えた後もNCIS(米海軍犯罪捜査局)による捜査を続けていたとする一方、今回、事件当日に海軍兵に外泊許可を出していた。米軍の説明は矛盾しており到底納得できない。

    ■    ■

他方、県警は事件後、女性からの訴えについて「わいせつ事案はあったものの、DVがあったかどうかは分からない」との見方を示している。度重なる嫌がらせや、自宅に押し入り暴行されたなどの訴えを「DVかどうか分からない」とする県警の判断にも大いに疑問が残る。
日米双方の捜査機関が関わりながら、事件を防げなかった責任は重い。
大切な命が失われた今、事件はなぜ防げなかったのか、同様の悲劇を防ぐにはどうすればいいのか。
米軍は、事件に対しての説明責任を果たすべきだ。

 

<金口木舌>法の隙間 - 琉球新報(2019年4月19日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-905294.html
https://megalodon.jp/2019-0419-1036-55/https://ryukyushimpo.jp:443/column/entry-905294.html

娘に性的虐待を加えていたとして罪に問われた父親への無罪判決が相次ぎ、SNSなどで裁判所を批判する意見が飛び交っている

静岡地裁は当時12歳の娘に乱暴したとして強姦(ごうかん)罪などに問われた父親に無罪を言い渡した。判決は家が狭いことなどを挙げて、家族が犯行に気付かなかったのは「あまりに不自然」と判断した。名古屋地裁岡崎支部は、抵抗できない状態の当時19歳の娘と性交したとして準強制性交罪に問われた父親を無罪とした
▼性暴力を罪に問う場合、影響力を使って子どもと性行為に及んだ親を罰する監護者性交等罪のほか、児童福祉法などもある。しかし強制性交等(強姦)罪に問う場合は、被害者が暴行や脅迫を受けたことを立証する必要がある
▼子どもが性的虐待にあらがうのは困難で、拒否の意思を明確に示すことが難しい場合もあるだろう。被害が日常的であれば、個別の犯行を特定することにも困難が伴うはずだ
▼北欧スウェーデンで昨年、明確な同意のない性行為を性的暴行として訴追できるようにする法律が成立した。通報されない性犯罪を掘り起こすことが目的だ。同様の法律は英国やカナダなどでも制定されている
▼日本の刑法は2017年の改正で性犯罪を厳罰化したが、法の隙間で救済されない被害者がまだいる。私たちの社会は子どもたちの声に向き合っているだろうか。

 

小学校教科担任 教員確保の下支えこそ - 信濃毎日新聞(2019年4月19日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190419/KP190418ETI090009000.php
http://archive.today/2019.04.19-013613/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190419/KP190418ETI090009000.php

小学校だけでなく義務教育のあり方を大きく変えていく可能性がある。現場の意見や実態を踏まえた丁寧な議論が欠かせない。
小学校5、6年での教科担任制の導入である。文部科学相中教審に検討を諮問した。小中で分かれている教員免許の見直しも議論するという。
対話や討論を通じた「主体的な学び」を掲げる次期学習指導要領が来年度以降実施されることが背景にある。小学校は5、6年生で英語が教科化されるほか、プログラミング教育が必修になる。
学級担任がほぼ全教科を教える小学校では、教科担任制の中学校よりも教員一人が受け持つ授業時間は多い。毎時間違う授業の準備をするのも大変だ。
指導要領の改定で、特に高学年では学級担任の負担がさらに増す。その軽減を図り、長時間労働が常態化している状況の改善につなげる狙いもある。
小学校の教員は学級担任制を前提に配置されてきた。ただ、教科ごとにどの教員が教えるかを定めた法令はないという。高学年の場合、音楽は既に半数以上、理科も4割余の学校で学級担任ではない教員が授業を受け持っている。
学校によっては他の教科でも、学級担任同士が得意な教科の授業を交換して教科担任制を一部取り入れたりしているようだ。先行して取り組んだ学校で子どもや教員がどう受けとめているかを検証し、今後の議論に生かしたい。
教科担任制は、充実した授業が期待できるほか、学級担任と相性が合わない子にとっては救いになる面がある。一方で、教科を横断する授業がしにくくなることや、子どもと向き合う時間が減り、一人一人に目を配れなくなるのを心配する声が現場から出ている。
導入に向けた課題は多い。何より気がかりなのは、必要な教員をどの学校にも配置できるかだ。自治体の財政状況によって格差が生じ、現場が無理を強いられることにもなりかねない。教員の配置基準を見直し、政府が財政面で下支えすることが欠かせない。
少子化や地域の過疎化が進む中で、小中一貫型の学校への移行に結びつく可能性もある。小中を統合した義務教育学校にすれば、中学の英語の免許を持った教員が5年生から教科担任として教えられるようにもなる。
「六三制」の義務教育の枠組み自体が様変わりするかもしれない。子どもたちの豊かな学びの場をつくることにつながるのか。議論を深める必要がある。

 

(斜面) 非常勤講師を務めていたが雇い止めに遭って生活が困窮 - 信濃毎日新聞(2019年4月19日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190419/KT190418ETI090006000.php
http://archive.today/2019.04.19-013820/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190419/KT190418ETI090006000.php

法学部の研究室から噴き出た炎がツタのはう壁を黒焦げにした。昨年9月、九州大。この部屋で長年、憲法を学び続けてきた元院生の男性は何を焼き払おうとしたのか。自らも火に包まれて46歳の命を絶った。遺書は見つかっていない

   ◆

家業が行き詰まり苦学して合格した。<すべて国民は、法の下に平等>とうたう憲法に共感し研究に打ち込んだ。博士課程でも学費や生活費を稼ぐためアルバイトを掛け持ちした。博士論文を書き上げられないまま在籍期限を迎え2010年に退学した

   ◆

周囲は能力を評価していた。本人も思いを断ち切れず研究室を無断で使用していた。他大学の非常勤講師を務めていたが雇い止めに遭って生活が困窮する。数百万円の奨学金返済も重くのしかかった。火を放ったのは研究室の明け渡し期限の日だった。報道が伝えた事件の経過だ

   ◆

「彼は私かもしれない」。身につまされた研究者が多いのだろう。波紋は広がった。「女性科学研究者の環境改善に関する懇談会」の昨年の調査によれば、非常勤講師の7割近くが年収200万円未満。多くが30〜50代の働き盛りだ。家計も担っている

   ◆

博士号を得ても常勤の職に就けず、非常勤では雇い止めの不安にさらされている。若い研究者を囲む荒れ野は国の政策が招いた。大学院生を増やす一方で国立大の運営費交付金を減らした。受け皿が増えるはずがない。元院生の死が告発したのは、努力しても報われない不条理ではないか。

 

「桜を見る会」何のための会なのか… - 東京新聞(2019年4月16日)

東京・新宿御苑で十三日に開かれた会に…各界からの招待客やその家族の招待者一万八千人が訪れた。
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何の「功労」だろうか、作家の百田尚樹氏や竹田恒泰氏、タレントのケント・ギルバート氏…
...

今年の費用は「五千万円程度」で一般会計に盛り込まれているという。つまり税金だ。(13年より1500万円増)
...

招待客の氏名は、功労者のはずなのに個人情報に当たるとして公表されず、実際に来ているのは「首相の私設応援団のよう」だからだ。

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桜を見る会」何のための会なのか…

 

(政界地獄耳) なり手不足…大川村長の問題提起 - (2019年4月18日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201904180000174.html
http://archive.today/2019.04.18-015532/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201904180000174.html

★16日、統一地方選で121町村長選と375町村議選が告示された。町村長選は45・5%にあたる55町村が無投票になった。町村議選でも93町村が無投票当選となった。また「定数割れ」起こしている町村も8町村になった。市長選挙でも立候補者が1人しかおらず無投票当選が決まった市は27市に及び、こちらも3割を超えた。なり手不足は深刻だ。

★しかし、このなり手不足は今に始まったことではない。2000年代に入り、町村議会に問題は広がっていく。高知県大川村は年々人口が減って過疎化が進み全国の離島を除く人口の最も少ない村だ。17年に村長・和田知士は村議会を解散し、村民全体で考えていく町村総会を提案。地方自治法に抵触するため県や国が重い腰を上げた。総務省では有識者会議が組織されたが、地方自治法を柔軟に運用することを提案したにとどまった。自治権のあいまいさの残る玉虫色の解釈論だ。

★今年3月、大川村では議員が兼業できる範囲を明確にする条例を制定。8年ぶりに選挙が行われることになった。この議論では給与を増やせとか廃止された議員年金復活させろなどの待遇面ばかりが議論されてきたが、和田の問題提起は村民の住民意識を掘り起こし目覚めさせたことになる。自分たちの町や村をどうしていくかは住民が決めることという民主主義の当然の行為が、解決とはいかないまでも強いエネルギーになったに他ならない。

★そしてそれは民主主義を守り、維持することの大切さと困難さに住民が気付いたことにつながったといえる。なり手不足は農家の減少と兼業の問題、企業の相次ぐ工場の撤退で労組の出馬が減ったからと説明されるが、自治意識の芽生えこそが統一地方選挙の意義と有権者の地元意識の基礎であることがわかる。連日メディアは「なり手不足、どうする」というが、大川村のSOSが意識を変えた。(K)※敬称略

 関連)
大川村はニッポンの縮図ではない (iRONNA編集部) - オピニオンサイトiRONNA 

ironna.jp

やかんちゅうがく 学(まな)びの喜(よろこ)びみんなに - 東京新聞(2019年4月18日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019041802000170.html
https://megalodon.jp/2019-0418-1007-22/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/editorial/CK2019041802000170.html

公立夜間中学(こうりつやかんちゅうがく)が22年(ねん)ぶりに埼玉県(さいたまけん)と千葉県(ちばけん)にできました。いくつになっても、外国(がいこく)からきた人(ひと)も学(まな)ぶことができます。全国(ぜんこく)に33校(こう)しかありませんが、もっと増(ふ)えるといいですね。
埼玉県川口市(さいたまけんかわぐちし)、千葉県松戸市(ちばけんまつどし)の夜間中学(やかんちゅうがく)では16日(にち)、入学式(にゅうがくしき)が開(ひら)かれました。新入生(しんにゅうせい)の国(くに)は中国(ちゅうごく)やベトナム、ブラジルなどさまざま。10代(だい)から80代(だい)までいます。これまで学(まな)ぶことのできなかった人(ひと)たちに、ふたつの中学(ちゅうがく)では漢字(かんじ)によみがなをふって入学(にゅうがく)をよびかけました。この社説(しゃせつ)にも同(おな)じようによみがなをふりました。
夜間中学(やかんちゅうがく)は、戦争(せんそう)などで学校(がっこう)にいけなかった人(ひと)たちがたくさんいた時期(じき)に80校以上(こういじょう)ありました。日本(にほん)がゆたかになり、やめてしまったところも多(おお)くあります。
それでも学(まな)びたい人(ひと)たちはいます。川口(かわぐち)、松戸(まつど)とも、そういう人(ひと)たちを支(ささ)えたいと思(おも)った市民(しみん)が「自主夜間中学(じしゅやかんちゅうがく)」という学(まな)びの場(ば)を30年以上(ねんいじょう)、続(つづ)けてきました。
夜間中学(やかんちゅうがく)のよさが見直(みなお)されるようになったのは2015年(ねん)。国(くに)が受(う)け入(い)れる対象(たいしょう)を広(ひろ)げました。つらい思(おも)いをして学校(がっこう)に通(かよ)うことのできないまま卒業(そつぎょう)した子(こ)も、もう一度学(いちどまな)ぶことができるようになりました。
16年(ねん)に国会議員(こっかいぎいん)が「教育機会確保法(きょういくきかいかくほほう)」という法律(ほうりつ)をつくったことや、この春(はる)から、外国(がいこく)から働(はたら)きにくる人(ひと)たちの受(う)け入(い)れが広(ひろ)がったことで、国(くに)は、都道府県(とどうふけん)ごとに少(すく)なくとも一(ひと)つはつくってほしいとよびかけています。
相模原市さがみはらし)や高知県(こうちけん)があたらしくつくることを決(き)めました。静岡県(しずおかけん)では外国人(がいこくじん)や、家(いえ)にひきこもりがちな人約(ひとやく)100人(にん)に会(あ)って話(はなし)を聞(き)き、6割以上(わりいじょう)の人(ひと)から夜間中学(やかんちゅうがく)に通(かよ)いたいと言(い)われたそうです。これから市町村(しちょうそん)などとも相談(そうだん)してつくるかどうか決(き)めます。
夜間中学(やかんちゅうがく)では勉強(べんきょう)だけでなく、運動会(うんどうかい)や文集(ぶんしゅう)づくりなど友(とも)だちとの思(おも)い出(で)をつくることができます。不登校(ふとうこう)だった子(こ)も心(こころ)に明(あか)るい光(ひかり)を取(と)り戻(もど)し、外国(がいこく)からきた人(ひと)たちも日本(にほん)で暮(く)らすことが楽(たの)しくなるきっかけになるかもしれません。
家(いえ)にひきこもる人(ひと)は若者(わかもの)にかぎらず、40代以上(だいいじょう)にもたくさんいることが最近(さいきん)、国(くに)の調査(ちょうさ)で分(わ)かりました。一度(いちど)つまずくとやり直(なお)しが難(むずか)しい社会(しゃかい)なのかもしれません。
「うちには必要(ひつよう)ない」と考(かんが)えている役所(やくしょ)の人(ひと)たちも、ひとりでも多(おお)くの人(ひと)たちの人生(じんせい)をよりゆたかにできるよう手助(てだす)けできないか、考(かんが)えてほしいです。

 

<統一地方選>地方議員選も選挙ビラ解禁 作成費補助、条例制定しない自治体も - 東京新聞(2019年4月18日)

https://megalodon.jp/2019-0418-1008-46/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/politics/list/201904/CK2019041802000150.html

 

[上野さん祝辞]誰かのため頑張る人に - 沖縄タイムス(2019年4月18日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/410323
https://megalodon.jp/2019-0418-1011-12/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/410323

社会学者の上野千鶴子さんが、東京大学の入学式で新入生に贈った言葉が話題になっている。
特に印象に残るのは、性差別や自己責任論が蔓延(まんえん)する時代を鋭く批判した上で発信した「あなたたちの頑張りを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください」とのメッセージだ。
紋切り型ではないその祝辞に強く共感したという人は多い。
ジェンダー研究の第一人者である上野さんは祝辞の冒頭、医学部で女子や浪人生を差別した不正入試問題に触れた。最終的に不適切入試と認定されたのは東京医科大など9校だが、多くの大学で女子の合格率が男子を下回っている事実をどう見ればいいのか、疑問を投げ掛けた。
東大の今年の入学生は3125人。うち女子は567人で、長年にわたり「2割の壁」を越えられないでいる。教授に占める女性の割合はさらに低く、歴代総長に女性はいない。
祝いの席での言葉としては刺激的だったかもしれないが、あえて女子教育に立ちはだかる壁を持ち出したのは切迫した思いからだろう。
上野さんは4年制大学進学率の男女差も取り上げ、「この差は成績の差ではない。『息子は大学まで、娘は短大まで』でよいと考える親の性差別の結果」と指摘した。
こうした傾向と政治・行政分野への女性進出の遅れ、男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」の低迷は重なり合うところがある。

    ■    ■

上野さんは激烈な受験競争を勝ち抜いてきた学生を前に「頑張れば報われると思えることそのものが、環境のおかげだったことを忘れないで」とも訴えた。
貧困問題などで幅を利かせる日本社会の自己責任論を強く意識してのことだと思う。
そして「世の中には頑張っても報われない人、頑張ろうにも頑張れない人、頑張る前から『どうせ私なんて』と意欲をくじかれる人たちがいる」と続けた。
県が実施した「沖縄子ども調査」で、小1の保護者の14・2%が「経済的に大学教育は受けさせられない」と回答したことが頭をよぎる。小学校に入ったばかりの時点で、子どもが将来、大学進学を希望しても難しいと考えている人がこれだけいたのだ。
頑張れば成果が出る、成果が出ないのは頑張っていないからとなれば、苦しい状況に陥っても声を上げるのは難しい。
国内トップの大学の新入生に投げ掛けたのは、弱者目線の大切さである。

    ■    ■

東大のホームページにアクセスすれば、祝辞の全文を読むことができる。
その最後に上野さんは大学で学ぶ価値についてこう語っている。
「すでにある知を身に付けることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けること」
多様性を大切に未来を切り開き、社会を変える存在になってほしいという若者たちへのエールである。

 平成31年東京大学学部入学式 祝辞 | 東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

[大弦小弦]まるで学生になったかのように背筋が伸びた… - 沖縄タイムス(2019年4月16日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/409423

https://megalodon.jp/2019-0418-1029-34/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/409423 

まるで学生になったかのように背筋が伸びた。社会学者で女性学のパイオニア上野千鶴子さんが東大の入学式で贈った祝辞が興味深い

▼女性や浪人生を差別した東京医科大の不正入試や4年制大学進学率の男女差を列挙。東大で女性入学者の比率がなかなか「2割の壁」を超えない構造にも触れ「社会に出ればもっとあからさまな性差別が横行している。東大も例外ではない」と語る

▼その上で、頑張っても報われない人、頑張ろうにも頑張れない人がいる格差社会の現実を示し「恵まれた環境や能力を、自分が勝ち抜くだけに使わないで」と踏み込んだ

▼女性の生きづらさに声を上げ続けてきた第一人者の言葉は「現状に目をつむってはいないか」と自分にも向けられているようで重い。振り返ってみると、超氷河期だった就職活動では、女性というだけで面接官に興味を持ってもらえず歯がゆい思いもした。採用試験に全敗し「なんで男だけが」と嘆いた友人も

▼25年も前の話だが、不正入試問題が示すように根深い差別はいまだにある。だからこそ、本質を突いた祝辞が心を揺さぶるのではないか

▼「自分の弱さを認め、支え合って生きてください」。上野さんが体験から紡いだ言葉に励まされる。門出のエールを学生がどう受け止めたのか、4年後の答辞を聞いてみたい。(大門雅子)