小学校教科担任 教員確保の下支えこそ - 信濃毎日新聞(2019年4月19日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190419/KP190418ETI090009000.php
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小学校だけでなく義務教育のあり方を大きく変えていく可能性がある。現場の意見や実態を踏まえた丁寧な議論が欠かせない。
小学校5、6年での教科担任制の導入である。文部科学相中教審に検討を諮問した。小中で分かれている教員免許の見直しも議論するという。
対話や討論を通じた「主体的な学び」を掲げる次期学習指導要領が来年度以降実施されることが背景にある。小学校は5、6年生で英語が教科化されるほか、プログラミング教育が必修になる。
学級担任がほぼ全教科を教える小学校では、教科担任制の中学校よりも教員一人が受け持つ授業時間は多い。毎時間違う授業の準備をするのも大変だ。
指導要領の改定で、特に高学年では学級担任の負担がさらに増す。その軽減を図り、長時間労働が常態化している状況の改善につなげる狙いもある。
小学校の教員は学級担任制を前提に配置されてきた。ただ、教科ごとにどの教員が教えるかを定めた法令はないという。高学年の場合、音楽は既に半数以上、理科も4割余の学校で学級担任ではない教員が授業を受け持っている。
学校によっては他の教科でも、学級担任同士が得意な教科の授業を交換して教科担任制を一部取り入れたりしているようだ。先行して取り組んだ学校で子どもや教員がどう受けとめているかを検証し、今後の議論に生かしたい。
教科担任制は、充実した授業が期待できるほか、学級担任と相性が合わない子にとっては救いになる面がある。一方で、教科を横断する授業がしにくくなることや、子どもと向き合う時間が減り、一人一人に目を配れなくなるのを心配する声が現場から出ている。
導入に向けた課題は多い。何より気がかりなのは、必要な教員をどの学校にも配置できるかだ。自治体の財政状況によって格差が生じ、現場が無理を強いられることにもなりかねない。教員の配置基準を見直し、政府が財政面で下支えすることが欠かせない。
少子化や地域の過疎化が進む中で、小中一貫型の学校への移行に結びつく可能性もある。小中を統合した義務教育学校にすれば、中学の英語の免許を持った教員が5年生から教科担任として教えられるようにもなる。
「六三制」の義務教育の枠組み自体が様変わりするかもしれない。子どもたちの豊かな学びの場をつくることにつながるのか。議論を深める必要がある。