やかんちゅうがく 学(まな)びの喜(よろこ)びみんなに - 東京新聞(2019年4月18日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019041802000170.html
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公立夜間中学(こうりつやかんちゅうがく)が22年(ねん)ぶりに埼玉県(さいたまけん)と千葉県(ちばけん)にできました。いくつになっても、外国(がいこく)からきた人(ひと)も学(まな)ぶことができます。全国(ぜんこく)に33校(こう)しかありませんが、もっと増(ふ)えるといいですね。
埼玉県川口市(さいたまけんかわぐちし)、千葉県松戸市(ちばけんまつどし)の夜間中学(やかんちゅうがく)では16日(にち)、入学式(にゅうがくしき)が開(ひら)かれました。新入生(しんにゅうせい)の国(くに)は中国(ちゅうごく)やベトナム、ブラジルなどさまざま。10代(だい)から80代(だい)までいます。これまで学(まな)ぶことのできなかった人(ひと)たちに、ふたつの中学(ちゅうがく)では漢字(かんじ)によみがなをふって入学(にゅうがく)をよびかけました。この社説(しゃせつ)にも同(おな)じようによみがなをふりました。
夜間中学(やかんちゅうがく)は、戦争(せんそう)などで学校(がっこう)にいけなかった人(ひと)たちがたくさんいた時期(じき)に80校以上(こういじょう)ありました。日本(にほん)がゆたかになり、やめてしまったところも多(おお)くあります。
それでも学(まな)びたい人(ひと)たちはいます。川口(かわぐち)、松戸(まつど)とも、そういう人(ひと)たちを支(ささ)えたいと思(おも)った市民(しみん)が「自主夜間中学(じしゅやかんちゅうがく)」という学(まな)びの場(ば)を30年以上(ねんいじょう)、続(つづ)けてきました。
夜間中学(やかんちゅうがく)のよさが見直(みなお)されるようになったのは2015年(ねん)。国(くに)が受(う)け入(い)れる対象(たいしょう)を広(ひろ)げました。つらい思(おも)いをして学校(がっこう)に通(かよ)うことのできないまま卒業(そつぎょう)した子(こ)も、もう一度学(いちどまな)ぶことができるようになりました。
16年(ねん)に国会議員(こっかいぎいん)が「教育機会確保法(きょういくきかいかくほほう)」という法律(ほうりつ)をつくったことや、この春(はる)から、外国(がいこく)から働(はたら)きにくる人(ひと)たちの受(う)け入(い)れが広(ひろ)がったことで、国(くに)は、都道府県(とどうふけん)ごとに少(すく)なくとも一(ひと)つはつくってほしいとよびかけています。
相模原市さがみはらし)や高知県(こうちけん)があたらしくつくることを決(き)めました。静岡県(しずおかけん)では外国人(がいこくじん)や、家(いえ)にひきこもりがちな人約(ひとやく)100人(にん)に会(あ)って話(はなし)を聞(き)き、6割以上(わりいじょう)の人(ひと)から夜間中学(やかんちゅうがく)に通(かよ)いたいと言(い)われたそうです。これから市町村(しちょうそん)などとも相談(そうだん)してつくるかどうか決(き)めます。
夜間中学(やかんちゅうがく)では勉強(べんきょう)だけでなく、運動会(うんどうかい)や文集(ぶんしゅう)づくりなど友(とも)だちとの思(おも)い出(で)をつくることができます。不登校(ふとうこう)だった子(こ)も心(こころ)に明(あか)るい光(ひかり)を取(と)り戻(もど)し、外国(がいこく)からきた人(ひと)たちも日本(にほん)で暮(く)らすことが楽(たの)しくなるきっかけになるかもしれません。
家(いえ)にひきこもる人(ひと)は若者(わかもの)にかぎらず、40代以上(だいいじょう)にもたくさんいることが最近(さいきん)、国(くに)の調査(ちょうさ)で分(わ)かりました。一度(いちど)つまずくとやり直(なお)しが難(むずか)しい社会(しゃかい)なのかもしれません。
「うちには必要(ひつよう)ない」と考(かんが)えている役所(やくしょ)の人(ひと)たちも、ひとりでも多(おお)くの人(ひと)たちの人生(じんせい)をよりゆたかにできるよう手助(てだす)けできないか、考(かんが)えてほしいです。