<金口木舌>法の隙間 - 琉球新報(2019年4月19日)

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娘に性的虐待を加えていたとして罪に問われた父親への無罪判決が相次ぎ、SNSなどで裁判所を批判する意見が飛び交っている

静岡地裁は当時12歳の娘に乱暴したとして強姦(ごうかん)罪などに問われた父親に無罪を言い渡した。判決は家が狭いことなどを挙げて、家族が犯行に気付かなかったのは「あまりに不自然」と判断した。名古屋地裁岡崎支部は、抵抗できない状態の当時19歳の娘と性交したとして準強制性交罪に問われた父親を無罪とした
▼性暴力を罪に問う場合、影響力を使って子どもと性行為に及んだ親を罰する監護者性交等罪のほか、児童福祉法などもある。しかし強制性交等(強姦)罪に問う場合は、被害者が暴行や脅迫を受けたことを立証する必要がある
▼子どもが性的虐待にあらがうのは困難で、拒否の意思を明確に示すことが難しい場合もあるだろう。被害が日常的であれば、個別の犯行を特定することにも困難が伴うはずだ
▼北欧スウェーデンで昨年、明確な同意のない性行為を性的暴行として訴追できるようにする法律が成立した。通報されない性犯罪を掘り起こすことが目的だ。同様の法律は英国やカナダなどでも制定されている
▼日本の刑法は2017年の改正で性犯罪を厳罰化したが、法の隙間で救済されない被害者がまだいる。私たちの社会は子どもたちの声に向き合っているだろうか。