https://ryukyushimpo.jp/hae/entry-1329903.html
弊社は依存症者のための施設を運営している。利用者Aさん(窃盗依存)は、特殊な家庭環境と、生来の衝動性があいまって幼いころから窃盗を繰り返していた。
その後、警官に対する暴力行為を起こし、現在は当施設に入所している。しかし今度は周囲への暴言や物を投げるなどの威嚇行為が始まった。この時、再び暴力行為を起こしてしまうことを恐れて警察に通報したのはAさん本人だった。
現れた警官の一人は、以前彼に暴力をふるわれた張本人であった。「また悪いことしそうになったらすぐ連絡ちょうだい。僕らは味方だよ」と伝え、「次に怒りが出たらどうしたらいいと思う」と今後の怒りの対処法についても本人と話しあっていた。
これには驚いた。支援をしていく中で警察のお世話になることはそう珍しくないが、その際に「警察は犯罪を取り締まることが仕事で、更生させるのは仕事ではありません」と言われた経験があるからだ。
私たち福祉職は犯罪を犯してしまう一人一人の根本的な原因や更生の可能性を探す。
一方で警察は法と秩序を守る司法の番人、とそれぞれ別の役割として認識していた。ただ、今回駆け付けてくれた警官の方々はみな、Aさんの今後を案じ、親身に寄り添い、彼の言葉に耳を傾けていた。それによって彼は安心し、落ち着いた様子になった。
依存症者は加害者であると同時に、被害者であった過去をもつ人も多い。彼らは誰にも助けてもらえなかった過去や、認めてもらえなかった孤独を抱えて心を病んできた。そこから、今度はさまざまな犯罪行為を引き起こす加害者になる。
負の連鎖を止めるのに、私たち福祉職だけでは心もとない。「僕らは味方」と言ってくれた浦添署の方々に心からの感謝を伝えたい。
(上原拓未、レジリエンスラボ代表 精神保健福祉士 公認心理師)