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米大統領選は共和党のトランプ大統領に民主党のバイデン前副大統領が挑む構図が固まった。左右の亀裂が深い党内をまとめ上げ、底力を見せることができるのか。バイデン氏の重い課題である。
一時は民主党指名候補の本命に目された左派のサンダース上院議員が、選挙戦からの撤退に追い込まれたことは、民主党がサンダース氏の急進ぶりよりも、中道派のバイデン氏の安定感を選択した結果だ。
無難な選択ではある。だが、バイデン氏が持ち味の安定感だけでトランプ氏の強烈ぶりに対抗できるか、となると心もとない。
バイデン氏は東部ペンシルベニア州の製鉄、炭鉱業で栄えた都市で生まれた。ラストベルト(錆(さ)びついた工業地帯)と呼ばれる地域だ。ボイラーの清掃に携わったり、車のセールスマンだった父親の元でバイデン氏は育った。
バイデン氏が白人労働者層に人気があるのはそんな出自に負うところが大きい。トランプ氏が最も警戒して「眠たげなジョー(バイデン)」と盛んに攻撃したのは、支持層が重なるからだ。
バイデン陣営に欠けているのは、サンダース氏を熱狂的に支えた若者のエネルギーである。サンダース支持層を取り込めないと、前回の大統領選でトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン氏の二の舞いになる。
バイデン氏は選挙戦を共に戦う副大統領候補に女性を充てる意向を示している。左右両派の党内融和を図ると同時にサンダース票を吸収するため、リベラル層から人選を進めるとの見方が多い。
ただ、なぜサンダース氏が若者の強い共感を得たのか、バイデン氏は考えてみる必要がある。
サンダース氏が掲げた学生ローン免除や大学無償化、国民皆保険の導入という公約は、現実路線の中道派には極端過ぎるし、財源の裏打ちのない夢物語に映る。
それでもサンダース氏は広がる一方の経済格差の是正を前面に出して旋風を巻き起こした。上位1%の富裕層が全米の総資産の三割以上を占める格差の現状は、放置できない問題であるが、政治はこれまで格差にあえぐ人々をさほど顧みてこなかった。
サンダース氏の撤退を受けてバイデン氏は早速、サンダース氏の支持者に「あなたたちの話に耳を傾ける。あなたたちが必要だ」と秋波を送った。それが口先だけに終われば、悲願の「打倒トランプ」はおぼつかない。