[大弦小弦]こんなやり方、ありですか - 沖縄タイムス(2020年4月10日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/558413
http://archive.today/2020.04.10-000257/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/558413

12年前のリーマン・ショックは世界的な金融危機が叫ばれたが、庶民感覚としては正直、切迫感は薄かった。国民全員に支給された1万2千円の定額給付金を何に使ったかまるで記憶にない

▼それに比べて、新型コロナウイルスは様相が異なる。影響が及ばない人は皆無と言っていい。年齢、居住地、職業、資産の多寡、いずれも問わない。人間の日々の営みそのものを一変させた。政府はさらなる感染拡大防止に躍起だが、これまでの対応ぶりは、遅きに失したとの批判がつきまとう

▼コロナ禍で収入が減った人に支払われる1世帯30万円。個人的には、急場をしのぐための現金給付は国民一律ではなく、範囲を絞って手厚くした方がいいと思う。ただ、その受給審査は煩雑になろう

▼SNSでこんな書き込みを見つけた。「収入減を証明する書類は黒塗りで出せばいいのでは」。首相主催の「桜を見る会」を巡る疑惑で取った政府の手法を逆手に取る

▼別の投稿の書きぶりはこうだ。「法務省が口頭決裁で通るなら、私たちは口頭申告で」。黒川弘務東京高検検事長の前例のない定年延長を押し通した奇策を皮肉る

▼もちろん、やり方は推奨できないし、当人たちもするつもりはないだろう。しかし、冗談とも本気ともつかない禁じ手が跋扈(ばっこ)すること自体、安倍政権の罪深さを思う。(西江昭吾)