米大統領選 民主党は多様性生かせ - 東京新聞(2020年2月5日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020020502000141.html
https://megalodon.jp/2020-0205-1052-28/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/editorial/CK2020020502000141.html

トランプ流の破壊と分断を次の四年間も認めるか否かの選択である。米大統領選がアイオワ州での党員集会を皮切りに始まった。政権奪還を狙う民主党には多様な勢力の結集が必要だ。
十一月三日の投票まで長丁場の大統領選。前半の焦点は民主党の指名候補選びだ。メディアの関心が高いアイオワと第二戦のニューハンプシャー州(十一日)で勢いをつけられるかどうかが指名争いの行方を左右する。
その大事な初戦の結果発表が集計トラブルで大幅にずれ込み、民主党は出はなをくじかれた格好だ。前回の大統領選ではハッキングや偽情報流布によるロシアの選挙介入が深刻な問題になった。選挙システムの信頼性を高めることは急務である。
アイオワでの出口調査によると、各候補の政策よりも「打倒トランプ」ができ得る候補かを重視する人が多く、六割以上に上った。
そのための第一の課題は党内対立の克服だ。前回の選挙では、指名を争った左派のサンダース上院議員の支持層を中道派のクリントン氏が取り込めなかったことがトランプ氏に敗れた大きな要因だった。指名候補には党内を束ねられる力量が求められる。
同時に民主党は持ち味の多様性を生かすべきだ。オバマ前大統領は女性、若者、それに黒人やヒスパニック(中南米系)らマイノリティー(少数派)の連帯に乗って勝利をたぐり寄せた。
一方、政策面を見ると、主要候補が共通して重視するのは格差是正だ。
左派のサンダース氏とウォーレン上院議員は富裕層への増税、中道派のバイデン前副大統領、ブティジェッジ前サウスベンド市長は法人税率引き上げをそれぞれ公約に掲げる。こうして得た税収を社会保障や教育の財源に充てると主張する。
米国は有数の格差社会である。米連邦準備制度理事会FRB)の報告書によると、上位1%の富裕層が全米総資産に占める割合は一九八九年の23%から二〇一八年には32%に拡大した。
これに対し下位半分の人の占める割合は4%だったのがわずか1%に低下した。格差は社会不安や政治不信を招き、階層の固定化を進めて社会の活力を削(そ)ぐ危険を持つ。放置できない課題である。
民主党は格差問題をはじめとする政策議論を深め、トランプ政治への対抗軸を示してほしい。