米上院、カバノー最高裁判事承認 保守傾斜へ - 日本経済新聞(2018年10月7日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3623265007102018000000/
http://archive.today/2018.10.07-012042/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3623265007102018000000/

【ワシントン=中村亮】米議会上院は6日の本会議で、トランプ米大統領が連邦最高裁判所判事に指名したブレット・カバノー氏の人事案を賛成多数で承認した。最高裁はトランプ氏が率いる共和党の考えに近い保守派が過半数を占め、米社会が長期にわたって保守に傾斜する可能性が出てきた。トランプ氏は11月の中間選挙に向けた成果としたい考えだ。

上院(定数100)は賛成50、反対48の僅差で承認した。人事案に反対を表明していた共和党のリサ・マカウスキ議員は棄権し、同党のスティーブ・デインズ議員は娘の結婚式に参加するため地元のモンタナ州に戻り本会議に参加しなかった。野党・民主党はカバノー氏の性的暴行疑惑などを理由に承認に強く反発してきたが及ばなかった。

トランプ氏は6日、遊説先のカンザス州で記者団に「カバノー氏は長年にわたって卓越した最高裁判事となるだろう」と語った。「(性的暴行疑惑などについての)民主党のひどい攻撃にカバノー氏が耐えたことを誇りに思う」とも強調した。

トランプ氏は7月に退任した中道保守派のケネディ判事の後任にカバノー氏を指名した。ケネディ氏は保守派が支持する個人の銃保有に賛成する一方、リベラル派が訴える同性婚を容認するなど案件に応じて判断を柔軟に変え、最高裁の判決を大きく左右してきた。カバノー氏の就任で最高裁判事9人のうち5人が保守派となり、判決が保守寄りに固定される公算が大きい。

共和党はカバノー氏の承認を中間選挙に向けた追い風にしたい考えだ。共和党上院トップのマコネル院内総務も6日、採決に先立つ米メディアのインタビューで「反カバノー運動はすばらしい政治的な贈り物だ」と語った。カバノー氏の承認に抵抗する民主党が議会の多数派になることに共和党支持層が危機感を感じ、中間選挙で投票に行く可能性が高まったからだと説明した。

一方、民主党もカバノー氏の承認をテコに女性票の獲得を目指す。トランプ氏は2日のミシシッピ州の集会で性的暴行を議会公聴会で証言した女性のものまねを披露し笑いを誘い、ひんしゅくを買った。共和党は女性の証言を尊重する民主党の反発を押し切る形で強行採決に至った感は否めず、女性票が民主党に流れると指摘されている。

民主党のメイジー・ヒロノ上院議員は6日、ワシントンにある最高裁前で開いたカバノー氏に反対する集会で「私は怒っている。みなさんも怒っているでしょう」と語りかけた。「その怒りを中間選挙にしっかりぶつけましょう」と強調し、支持者の結束を訴えた。