バイデン氏指名確実に 米民主党は結束できるか - 毎日新聞(2020年4月10日)

https://mainichi.jp/articles/20200410/ddm/005/070/079000c
http://archive.today/2020.04.10-000629/https://mainichi.jp/articles/20200410/ddm/005/070/079000c

米大統領選の民主党候補指名争いで穏健派のバイデン前副大統領の指名獲得が確実となった。サンダース上院議員が「勝利は不可能になった」と予備選からの撤退を表明したためだ。
11月の大統領選は、「米国第一」を掲げるトランプ大統領に、4年ぶりの政権奪還を目指しバイデン氏が挑む構図になる。
サンダース氏は「革命」を掲げ公的国民皆保険や大学無償化を訴えた。2016年予備選に続いて若者に熱狂的な支持を広げ、一時は指名レースでトップを走った。
状況を一変させたのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。撤退した他の中道派候補の結集もあり、安定を求める有権者がバイデン氏を支持し、流れは決まった。
まずは、党内の結束をどう強化するかが焦点だ。前回大統領選では予備選でクリントン国務長官に敗れたサンダース氏の支持者が投票に行かず、民主党敗北の一因になったと批判された。
サンダース氏はバイデン氏に協力する意向を伝えた。だが同調しない支持者もいるだろう。放置すれば党内の分断は深まるだけだ。
多様な人種や少数派を支持基盤とする民主党には全体を束ねる求心力が必要だ。バイデン氏は上院議員を長く務めた党の重鎮だが、カリスマ性は乏しい。
集会が各地で中止され、自粛ムードが広がる。熱気を高めていくのは容易ではない。バイデン氏がサンダース氏の政策を取り入れない限り結束は図れないだろう。
政策の争点も大きく変わりそうだ。新型コロナの打撃による景気後退で経済的格差は一段と広がることが懸念される。
深刻な米経済をみれば党派を超えた協力が必要になろう。共和党は大規模な景気刺激策を後押ししている。本来なら民主党が主張する政策だけに共和党との差別化が難しくなっている。
世界も大統領選の動向を注視している。トランプ氏は国際協調をないがしろにし、コロナ対策でもマスクの輸出禁止など「米国第一」を振りかざす。
これに対抗する明確な外交ビジョンをバイデン氏は示すべきだ。国際協調や同盟重視を掲げるが、「コロナ後」の世界の安定をどう描くか。具体像を見せてほしい。