【私説・論説室から】パラサイトが止まらない - 東京新聞(2020年2月19日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2020021902000178.html
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アカデミー賞四冠を達成した韓国映画「パラサイト」(寄生虫の意味)の人気が再燃している。登場する半地下の家や超高級住宅は、ソウル郊外にある高陽(コヤン)市などの撮影所に設けられたが、すでに撤去されている。それでも同市は、半地下の家のセットを復元し、「韓流基地」として整備する計画を発表した。
一部の場面は、セットではなくソウル市内で実際に撮影された。このため同市の観光部門は、「現地ツアー」を計画。これに対し、貧困を見世物にすると批判も起きている。
映画の中に出てくる「チャパグリ」という食べ物への関心も高まっている。二種類のインスタント麺をまぜて作る庶民的な料理だが、映画では高級牛肉が具材となっており、格差を象徴する小道具として使われていた。アカデミー賞受賞後、メーカーは大宣伝を展開。麺の売れ行きは六割増しになった。
これだけ話題になって、敏感な政治家が黙っているわけはない。四月に総選挙を控えているだけに、与党は芸術、文化人の生活を安定させるための失業保険導入を約束した。
ポン・ジュノ監督は東南部の都市、大邱(テグ)出身だ。この地域から出馬予定の野党系候補は、地元に監督の銅像を建設すると訴えた。自分の選挙ポスターを、パラサイトの宣伝ポスターそっくりに作り替える悪のり候補も現れたという。世界的大ヒット映画に「寄生」する動きは止まりそうにない。 (五味洋治)