(余録)「○○は選挙に勝つためにイランと戦争を始めるだろう」… - 毎日新聞(2020年1月7日)

https://mainichi.jp/articles/20200107/ddm/001/070/108000c
http://archive.today/2020.01.07-010031/https://mainichi.jp/articles/20200107/ddm/001/070/108000c

「○○は選挙に勝つためにイランと戦争を始めるだろう」。○○とは誰で、これをツイートしたのは誰だろう。2011年、オバマ米大統領を名指ししてそうつぶやいたのはトランプ現大統領その人だった。
その後イランと核合意を結んだオバマ氏にはとんだいいがかりだが、世は一転して今や○○はお前だろうと目されるはめになったトランプ氏だ。イランで英雄視される革命防衛隊の部隊司令官を殺害、あわや戦争の緊張をもたらした。
暗殺されたのは中東での工作活動を指揮した人物だが、報復を求める国内世論を無視できぬイランの現体制である。一方、トランプ氏は報復があれば52カ所に軍事攻撃を行うと威嚇(いかく)、紛争のエスカレートをためらわぬ構えを見せた。
だがトランプ氏といえば、従来の米国の中東介入政策を「ばかげた終わりのない戦争」と批判して支持を集め、イランへの軍事攻撃もくり返し否定していた。今回の暗殺も極端な選択肢だけに当初は自らの選択から除外していたとか。
それが変わったのはイラクの米大使館が親イラン派に襲撃されるテレビ映像にショックを受けたためだという。もし世界を揺るがす決断が居間のソファのテレビ視聴者並みに気ままになされていたなら、こちらこそ大ショックである。
ディール(取引)の達人を自任するトランプ氏だが、ことは損得のかけひきで制御できぬ危機のエスカレーションだ。国際秩序の危うい均衡を平気で次々に壊していく最強のテレビ視聴者の恐ろしさである。