(余録)「われわれは自問する。自分ごときが賢く… - 毎日新聞(2017年8月18日)

https://mainichi.jp/articles/20170818/ddm/001/070/125000c
http://archive.is/2017.08.18-003840/https://mainichi.jp/articles/20170818/ddm/001/070/125000c

「われわれは自問する。自分ごときが賢く、優雅で美しく、才能ある素晴らしい人物であるはずがなかろう。だが、そうあってはなぜいけないのか」。南アフリカアパルトヘイト(人種隔離)の撤廃を勝ち取ったマンデラ元大統領の言葉である。
人間の尊厳を求め続けて獄中の27年間を耐えたマンデラ氏は、私たちに勇気と希望を与えるいくつもの言葉をこの世に残した。そして先日、米国のトランプ政権下でオバマ前大統領は同氏の次のような言葉をツイッターでつぶやいた。
「生まれた時から肌の色や育ち、宗教で他人を憎む人などいない」「人は憎むことを学ぶのだ。もし憎しみを学べるのなら、愛を教えることもできる。愛は憎しみよりも、人の心に自然に生まれる」
これがツイッター史上最多の「いいね」を集めたのは、白人至上主義者らと反対派の衝突をめぐるトランプ大統領の姿勢に抗議が高まっていたからだ。反対派に死者が出る惨事に、大統領が「非は双方にある」との発言を繰り返した。
ネオナチらに甘いと見られたトランプ氏には与党の批判も続出、有力経済人の拒否反応にも直面した。リベラル派の建前に反発する白人保守層にとりいる当人には選挙中からの得意芸だろう。しかし今はもう大統領なのを忘れたのか。
「指導者には民衆を正しい方向に導いているとの自信の下、みんなより先を行き、新たな針路を開かなくてはならぬ時がある」もマンデラ氏だ。差別の病に引きずられる指導者は米国をどこへと導くのか。