トランプ氏の国連演説 世界の失笑の意味考えよ - 毎日新聞(2018年9月27日)

https://mainichi.jp/articles/20180927/ddm/005/070/099000c
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米大統領の国連演説で議場に失笑が湧くのも珍しい。
総会の一般討論演説でトランプ大統領は言った。「私の政権は2年足らずで、過去のほとんどの米政権より多くのことを成し遂げた」と。
居並ぶ各国代表の間に薄笑いが広がる。トランプ氏は慌てたように「本当だ。そんな反応を示すとは思わなかったが、まあいい」。
米国と他の国々の温度差を見せつける一幕だった。トランプ氏は「多くのこと」の例にイラン核合意からの離脱や在イスラエル米大使館のエルサレム移転を挙げたが、それらは国連の意向に沿うものではない。
米国の対イラン制裁再発動が世界の石油価格上昇を呼び、庶民を苦しめていることも忘れてはならない。
さらに驚いたのは、トランプ氏が「私たちはグローバリズムの思想を拒否し、愛国主義の精神を大事にする」と言い放ったことだ。
国際協力の場である国連で、多国間協調の否定とも言える演説をした。トランプ政権の「米国第一」主義も国連軽視も以前からのものとはいえ、ここまで露骨に大統領が言い切ったことには憂慮を禁じえない。
トランプ氏には11月の中間選挙への思惑もあろう。だから好調な米経済を自慢し、支持基盤のキリスト教右派勢力が喜びそうな外交事例を強調したのだろう。国際情勢への目配りより国内選挙向けの演出ばかりが目立ったのは残念である。
昨年の国連演説でトランプ氏は北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼び、情勢しだいでは北朝鮮を全面的に破壊するしかないと語った。
今年は一転、6月の米朝首脳会談の成果を強調し、北朝鮮がミサイル発射や核実験を見合わせていることなどを踏まえて金委員長の「勇気」と一連の措置に感謝の意を表した。
緊張緩和は喜びたいが、このひょう変ぶりに危うさを覚えるのも確かだ。トランプ政権の北朝鮮対応には場当たり的な色彩が強い。2回目の米朝首脳会談が開かれても非核化へ前進できるとは限るまい。
「場当たり的」に加えて強引な通商交渉も米国の信用と品格をおとしめ、国際的にひんしゅくを買っていないか。世界の代表の失笑の意味をトランプ氏は謙虚に考えるべきだ。