米・イラン対立 衝突回避へ自制求める - 東京新聞(2020年1月7日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020010702000155.html
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トランプ米大統領がとっぴな行動で世界を混乱させるのは相変わらずだが、今回は深刻度が一段と高い。イラン革命防衛隊司令官の殺害だ。対立が戦争にエスカレートせぬよう両国に自制を求める。
殺害されたソレイマニ司令官は中東でシーア派民兵組織を育成・支援してきた。イランにとっては英雄、米国にとっては不倶戴天(ふぐたいてん)の敵だった。
米メディアの報道によれば、司令官は長らく米当局の監視対象になってきた。それでも米国はイランとの対立が激化して予想もつかない結果を招くと懸念し、司令官に手を下さなかった。
ところがトランプ氏はためらいもなく殺害を命じた。司令官が米国の軍人や外交官への攻撃を計画していたと主張するが、その証拠を示すこともない。米政権にも計画していたかどうか疑問とする見方があるという。
イランに強気の姿勢を見せる方が支持者受けし、再選のかかる大統領選に有利との計算がトランプ氏に働いたのではないか。
殺害現場はイラクの首都の空港である。主権を踏みにじられたイラクは反発している。議会は米軍を含む駐留外国部隊の撤退要求を決議した。国土が米国とイランが衝突する戦場になる懸念もあるのだろう。
この撤退要求にトランプ氏は「イラクに巨大な制裁を科す」と警告したが、中東からの米軍撤収を公約にしたのはトランプ氏本人である。脈絡のないことを言う人物が世界最大の軍隊の最高司令官を務めていることに、恐ろしさをあらためて覚える。
核合意離脱をはじめトランプ政権の一貫した敵対姿勢は、イランの穏健派を窮地に追いやり、強硬派を勢いづかせた。報復を明言するイランがどう出るか、世界はかたずをのんで見守っている。
イランは司令官殺害を受け、核合意離脱へ最終段階に入ったと発表した。イランは離脱に突き進まぬよう踏みとどまってほしい。
イランはサウジアラビアと中東での影響力を競い合う。民兵組織を通じて情勢を不安定化させるような行動は慎むべきだ。
一方、日本政府は昨年末、国会の議決を経ずに中東への自衛隊派遣を決めた。米国とイランの対立は危険水域に入った。米国が求める「有志連合」に自衛隊は参加しないものの、戦闘に巻き込まれる危険は否定できない。
決定を白紙に戻し派遣の是非を国会で議論すべきだ。