イラン司令官殺害 中東の危険高める愚挙だ - 信濃毎日新聞(2020年1月7日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200107/KT200106ETI090008000.php
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戦争の危険を高め、中東のみならず世界を不安定化させる愚挙というほかない。
米国がイラン革命防衛隊精鋭部隊のソレイマニ司令官をイラクで殺害した。実質的な「ナンバー2」と目された重鎮を失い、イランは「開戦に等しい」として軍事的報復を表明している。
5日にはウラン濃縮を無制限に進めるとの声明を出した。核兵器保有へ近づき、欧州や中ロとの核合意は崩壊寸前となった。
報復の連鎖は制御不能な混乱を招く。日本を含む国際社会は両国に強く自制を求めねばならない。
ソレイマニ氏はイラクやシリア、レバノンなどの親イラン勢力を束ねてイスラム教・シーア派の一大勢力圏を構築。約20年にわたって対外工作を担ってきた。最高指導者ハメネイ師最側近の「英雄」で、国民の人気も高い。
米国や親米国から見れば、代理勢力を使った工作活動の首謀者であり、情報機関が暗殺を試みてきた人物ともされる。
発端は昨年末にイラク北部で米国人が死傷した攻撃だった。米紙によると、「最も極端な選択肢」としてトランプ大統領に示された報復策が司令官殺害だった。
国防総省には、あえて過激な選択肢を示して別の現実的選択を促す意図があったという。トランプ氏も一度却下したが、その後、イラク群衆が起こした米大使館の襲撃に激怒し、計画を承認したらしい。米軍幹部すら承認は「考えていなかった」と伝えられる。
事後の見通しもなく一時の感情にまかせたのなら、危うすぎる。中東への増派計画も従来の戦線縮小路線と合致しない。場当たり的な政権の内実が見て取れる。
トランプ氏は「司令官が多くの米国民の殺害を計画していた」と説明し、キリスト教福音派などの支持層に殺害の正当性と成果を強調する。ただ、計画の具体的な内容は不明だ。高めた危機を自分の選挙に利用するつもりなのか。
攻撃の舞台にされ、主権を侵されたイラク反米感情を強める。イラク国会は「すべての外国軍の退去」を求める決議をした。
今後、民兵組織ヒズボラといった勢力が各地の米関連施設やイスラエルなどを攻撃する可能性がある。陸上も海上も、いつ何が起きるか分からない状況だ。
安倍晋三首相は6日の会見で「情報収集態勢を強化する」とし、閣議決定通りに自衛隊艦船を中東へ派遣する考えを示した。情勢はより一層緊迫している。派遣は中止すべきである。