日米首脳会談 演出ばかりで中身がない - 信濃毎日新聞(2019年5月28日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190528/KT190527ETI090006000.php
http://archive.today/2019.05.29-001726/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190528/KT190527ETI090006000.php

安倍晋三首相とトランプ米大統領が首脳会談に臨んだ。
共同記者会見で両氏は「日米同盟の絆は揺るぎようがない」(安倍首相)「厚い友情は世界安定の礎だ」(トランプ氏)と言葉を飾ってみせた。
肝心の懸案事項では見解の違いが色濃くにじんでいた。
首相は夏に参院選を控え、トランプ氏も来年の大統領選での再選を目指している。互いの立場に配慮し合い、突っ込んだやりとりを避けた印象が否めない。
貿易交渉が焦点の一つだった。環太平洋連携協定(TPP)から離脱した米国は、自国の農家が不利にならないよう農産品の関税の撤廃か大幅な引き下げを要求してきている。日本の自動車の対米輸出制限も検討する。
会見でもトランプ氏は「貿易不均衡は信じ難いくらい大きい」と主張した。安倍首相は、報道陣の質問に「双方にとって良い『ウィン・ウィン』の合意を目指す」と繰り返すだけだった。
トランプ氏が「参院選までは取引を待つ」と表明したのをいいことに、日本政府として譲れない線も説明していない。選挙後に米政権が再び圧力を強めてくるのは目に見えている。
北朝鮮が今月上旬に発射した短距離弾道ミサイルについて、トランプ氏は来日後、「小さな武器をいくつか発射し、私の側近や他の人の気に障ったが、私は違う」とツイッターに書き込んだ。
安倍首相は会見で「国連決議に違反するもので極めて遺憾」としつつ、大統領による「非核化への新しいアプローチに敬意を表したい」とも付け加えている。
拉致問題でもトランプ氏は、2月の米朝会談後、首相に金正恩朝鮮労働党委員長と電話会談するよう促している。自力で解決するよう突き放したとみていい。
イラン情勢を巡り、首相は「日本としての責任を果たす。間違っても武力衝突に至らないよう努力したい」と言明した。米国は既に原子力空母や戦略爆撃機を中東に派遣している。会談でトランプ氏にどこまで迫ったろうか。
日米地位協定の見直し、地球温暖化対策、核兵器削減など、両国間で協議すべき問題は山積している。ゴルフや大相撲観戦、居酒屋談義に興じ、東京スカイツリー星条旗の色に染める…。過剰なもてなしが際立つ会談は国際社会の目にどう映ったか。
腹蔵なく話し合える関係でないのなら、首相の言う「厚い信頼関係」も見せかけに過ぎない。