(政界地獄) 安倍政権のレガシーから外交は消えた - 日刊スポーツ(2019年4月27日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201904270000105.html
http://archive.today/2019.04.27-002330/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201904270000105.html

★外交方針や見通しがこれほどまでに変わるものだろうか。そんなことが起こらないために不断の努力と目くばせが外交には欠かせない。18年版外交青書ではロシア関係について「北方4島は日本に帰属する」とあるものが、19年度版では「問題を解決して平和条約を締結」にすり替わり、北朝鮮問題について18年度版では「日本と国際社会の平和と安定に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威」と厳しい論調で「北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていく」としていたものが、その一文は削除された。

★加えて、北方領土の記述で19年版は日本の法的立場に関する説明を回避。既に「北方領土はわが国固有の領土」と学校で習ってきたことは間違いだったと外務省が言い出しているも同然だ。まして日露関係は「最も可能性を秘めた2国間関係」などと、国民に読ませるための外交青書というよりロシア外務省に読んで欲しいという願望付きの説明だ。これが安倍内閣が自信を持つ俯瞰(ふかん)する外交の結果ならば、安倍外交は失敗と言わざるを得ない。

★25回の日露首脳会談で信頼関係を醸造し、大統領との人間関係で北方領土を解決しようとしたものの、ロシアサイドはそんな情緒的なものではなく、理詰めで戦後の歴史認識を求め、日米安保との整合性を求めてきた。外交論としては極めて常識的ながら、日本は「北方領土は我が国の固有の領土」すら言えなくなり、外相・河野太郎は委員会での質問などでもだんまりを決め込む体たらく。今後、韓国と徴用工問題を話し合い、北朝鮮と国交樹立や戦後賠償議論に進むにつれ、ロシアとのやりとりが材料になることは明白だ。安倍政権のレガシーの中から外交は消えたとみていいのではないか。(K)※敬称略