(政界地獄耳) 失敗だらけの「外交の安倍」 - 日刊スポーツ(2019年3月19日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201903190000125.html
http://archive.today/2019.03.19-010114/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201903190000125.html

★14日、露プーチン大統領はモスクワで開かれた産業界との会合で日露平和条約締結交渉について交渉の経緯を説明し、「テンポが失われた」との考えを示したと15日付のロシア紙コメルサントが報じた。また、日露首脳会談で首相・安倍晋三が「領土引き渡し後に米軍基地を置かせないと約束したものの、米軍展開を阻む手段にはならない」との認識を示し、日米安全保障条約がネックになるとの考えを述べた。

★加えて「地元の意見を無視できない」とし「一息つく必要がある」と事実上の棚上げを示唆。6月下旬に大阪で開かれるG20プーチン来日の際、電撃妥結を夢見ていた首相の夢を砕いたといえる。だが数年前からロシアサイドが領土返還後、日米安保を懸念していたことは官邸も外務省も承知していること。安倍と米トランプ大統領の関係や基礎的な日米の主従関係を整理・清算するチャンスでもあり、北方領土問題を動かすことで日本は沖縄問題も同時に解決させる可能性があったといえる。これからの安全保障の枠組みの変化に関与することができるとするならば、プーチンは的確なトスを首相に上げたともいえる。

★だが、日米も大事、日露も大事。でも中国が怖いとする日本の外務・安保政策は従来の枠組みにとらわれたままで異次元外交には踏み出せなかった。逆に言えば日本外交は俯瞰(ふかん)するどころか、米露という大国に挟まれ身動きが取れなくなったまま、中国ににらまれるわけだが、この3カ国との関係に加え、韓国との関係改善が望めなければ北朝鮮にまで駒を進めることはできない。ここまで外交の失敗と体たらくが続くのなら、もう外交の安倍などといわないでもらいたい。17日、首相は防衛大学校の卒業式で訓示し「従来の枠組みにとらわれた発想のままではこの国を守り抜くことはできない」としたが、近隣5カ国との関係が作れず外交など成り立たない。(K)※敬称略