(斜面)「第三者委員会」報告書 - 信濃毎日新聞(2019年1月26日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190126/KT190125ETI090007000.php
http://archive.today/2019.01.27-010821/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190126/KT190125ETI090007000.php

事実は小説よりも奇なり―。組織の生々しい人間模様が浮き彫りになって意外に面白いのが「第三者委員会」報告書だ。企業や学校などで不祥事が起きると中立的な立場の弁護士や会計士が原因究明や再発防止に向けて検証に乗り出す

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三者委の設置は信頼回復への欠かせないステップと見られるようになった。9年前、日弁連が「提出前の報告書は当事者に見せない」「顧問弁護士は委員にしない」などの指針を設けている。それでも名ばかりの調査や当事者に優しい結論が少なくない

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報告書の出来は、まな板にのせられるトップが腹をくくったかどうか、にかかっているようだ。弁護士ら有志が内容の評価をする「格付け委員会」のホームページも参考になる。去年の日大アメフット部問題では、最高権力者の理事長に聴取したかが不明確として低ランクとした

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厚生労働省で発覚した毎月勤労統計の不正もお粗末極まりない。「第三者委で客観的にやっていただいた」と国会で強弁した根本匠厚労相だったが、身内で事情聴取したと分かりやり直しを迫られている。それも委員会発足からわずか1週間での結論だ

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国会ではなく厚労相が設置した在り方も三者委とは言えない。外部からの委員長はお飾りと見られても仕方なかろう。第1次安倍政権の命取りになった「消えた年金問題」を想起させる重大問題に、急いで幕引きを図ろうとしたのが本心か。徹底的に調べ直すまで目をそらしてはなるまい。