(改正入管難民法) 共生への課題なお多い - 沖縄タイムス(2019年1月27日)

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日本で働く外国人が昨年10月時点で146万463人に達した、と厚生労働省が発表した。10年前の3倍となって、過去最多を更新した。
146万人という数字は、国内の派遣労働者数を上回り、沖縄県の人口にほぼ匹敵する。
働く現場の風景は急激に変化している。
深刻な人手不足を背景に、企業が外国人を積極的に受け入れていることが要因だ。
中でも目立つのが、日本で学んだ技術を母国の経済発展に役立ててもらう「外国人技能実習」と留学生のアルバイトなど「資格外活動」の増加である。
都道府県別では東京が約44万人と最も多く、全体の3割強が集まる。 
改正入管難民法による新制度の4月開始が迫る中、先週、衆参両院で開かれた閉会中審査でも、外国人の都市部集中に対する懸念が噴出した。
新制度の目的の一つは地方の人手不足の解消だ。しかし外国人の人気は賃金水準が高い東京、大阪などに集中。地方で雇い育てても、その後、都市部に流出する状況が続いている。
法務省は「看過しがたい偏在があれば、大都市圏での受け入れ自粛要請も期待できる」とするが、地方の魅力を引き出すような具体策は示されていない。
そもそも職場移転の自由は基本的な権利である。最低賃金で200円以上の開きがある大都市から地方へ、労働者を分散させるのは容易ではないだろう。

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技能実習生を計画とは異なる業務に従事させていたなどとして、法務省厚労省は先週、三菱自動車パナソニックなど4社の実習計画の認定を取り消した。
三菱自動車は「溶接」の職種で受け入れた実習生に部品の組み立てをさせ、パナソニックは社員に違法な時間外労働をさせていた。
技能実習生を巡っては、不適切な作業事例が相次ぎ、低賃金や長時間労働も横行している。
閉会中審査ではこの問題も取り上げられたが、山下貴司法相は「省内に立ち上げたプロジェクトチーム(PT)で検討している」との答弁に終始し、議論は深まらなかった。
来年度、新制度による在留資格「特定技能」で受け入れる外国人の半数が技能実習生からの移行といわれている。
実習生問題を放置し、PTの結果を踏まえた改善策も示されないままの移行は、課題の先送りである。

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政府が昨年末にまとめた共生社会実現の総合的対応策の柱は、外国人のための「多文化共生総合相談ワンストップセンター」。地方公共団体が情報提供や相談を行う一元的窓口で、全国100カ所に設置するという。
雇用、医療、教育など外国人に必要な行政情報を届けるのは地方自治体の大切な仕事だ。だが多言語対応など実施に向けてのハードルは高く、「国からの丸投げ」を危惧する声が上がっている。
施行ありきの見切り発車は許されない。