(斜面)かの中国人研究者も受精卵の遺伝子を改変して子どもを誕生させた自分に酔ったのだろうか - 信濃毎日新聞(2019年1月24日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190124/KT190123ETI090005000.php
http://archive.today/2019.01.27-011408/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190124/KT190123ETI090005000.php

ドイツ語の「レーベンスボルン」は「生命の泉」の意味だ。それを冠したナチス・ドイツの計画は美しい言葉とは裏腹におぞましい。第2次大戦中、自国民を全て遺伝的に優れた金髪、青い目のアーリア人に「改良」しようと企図した

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「生命の泉」と呼ぶ施設にはそれらの特質を備えた若い女性を住まわせる。エリートのナチス親衛隊員が通って私生児を産ませる。子どもは母親から引き離し国家が育てる。さらに占領国では厳しい基準で選別した幼子を拉致しドイツの施設に収容した 

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1940年に占領したノルウェーは青い目、金髪の女性が多くナチスは「女神」と呼び、ドイツ兵に関係を持つよう奨励した。国外初の「生命の泉」施設もできた。産まれた子は推定1万人余。戦後、ノルウェー社会のナチス嫌悪はその子たちに向き、差別や迫害が絶えなかった

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自国の歴史の深い闇にスマホゲームで光を当てたノルウェー人の女性ゲーム作者がいる。プレーヤーが「生命の泉」の孤児を養子に迎える設定だ。いじめに苦しむ子にどんな言葉をかけるか。そんな難しい問いに答えを選択しつつ、この子を育てていく

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「生命の泉」計画を指揮したナチス幹部のヒムラーは、「全能の神」のように振る舞ったことだろう。かの中国人研究者も受精卵の遺伝子を改変して子どもを誕生させた自分に酔ったのだろうか。女性ゲーム作者のような歴史への自省や生命への真摯(しんし)な向き合い方が広がらないと、危うい。