契約社員の待遇差は違法 企業は時代変化に対応を - 毎日新聞(2018年2月23日)

https://mainichi.jp/articles/20180223/ddm/005/070/033000c
http://archive.today/2018.02.23-012839/https://mainichi.jp/articles/20180223/ddm/005/070/033000c

非正規労働者の処遇をめぐる「不合理な格差」について踏み込んだ司法判断が示された。企業はいっそうの意識転換を迫られよう。
日本郵便契約社員8人が正社員と同じ仕事をしているのに手当などに違いがあるのは違法として待遇改善を求めた訴訟で、大阪地裁は一部を違法と認めた。
労働契約法20条は、正社員と契約社員、パートらとの間で賃金や手当、福利厚生に不合理な差をつけることを禁じている。不合理かどうかは、仕事の内容や責任の程度、転勤の有無などを考慮して企業が判断することになっている。
裁判所は8種類の手当について一つずつ検討した。そのうえで年末年始の勤務手当と住居手当、扶養手当の三つについて非正規社員に支給しないのは不合理で違法と認めた。
繁忙期の年末年始の業務について正社員と契約社員の間で違いはないと指摘し、扶養手当の支給も職務の違いで必要性は左右されないと理由を述べた。住居手当は「転居のない正社員にも支給されている」ことから不支給は不合理と結論付けた。
判決は不合理な待遇差の解消を求めたもので妥当だ。
日本郵便の待遇格差を違法とする司法判断は昨年9月の東京地裁判決に続くものだ。今回は扶養手当の不支給を新たに違法と認め、賠償範囲も正社員への支給額の一部から全額に広げた。
国際競争の激化などを背景に、企業は20年あまり、非正規労働者を増やし続けてきた。景気が悪化すると、調整弁として利用してきた。
非正規労働者は約2000万人、働く人の約4割を占める。家計を支える人もいるのに、賃金水準は正社員の6割にとどまり、雇い止めや賃金格差など不利な条件を強いられる弱い立場にある。労働組合も正社員が中心で、非正規の人が個人で待遇改善を訴えるのは難しい。
現状を変えなければ非正規の人は将来の生活設計を描きにくい。政府が働き方改革で「同一労働同一賃金」の導入を目指すのも、非正規労働者の不安定雇用や低賃金といった問題を解消するためだ。
政府と企業、労働組合は今回の判決を重く受け止め、格差是正に向けた取り組みを急ぐべきだ。