https://mainichi.jp/articles/20180602/ddm/005/070/030000c
http://archive.today/2018.06.02-004837/https://mainichi.jp/articles/20180602/ddm/005/070/030000c
働き方が変化し、「同一労働同一賃金」が重視されつつある社会の状況に対応した判断といえよう。
正社員と非正規社員が同じ仕事をした場合、待遇に差があるのは、労働契約法が禁じる「不合理な格差」に当たるのか。最高裁は、通勤手当などを非正規社員に支給しないのはその目的に照らし、不合理だと初めて認定した。
判決があったのは、物流会社の契約社員として働くトラック運転手が提訴した裁判だ。
1審では通勤手当、2審ではそれに加え無事故、作業、給食の3手当について「支払われないのは不合理だ」と認定されていた。
最高裁は、四つの手当に加え、皆勤手当についても、乗務員を確保する必要性から支払われており、格差は不合理だと判断した。
住宅手当については、正社員と契約社員の間に転勤の有無などの差があり、契約社員に支払わないのは「不合理ではない」とした。それでも格差を個別に精査することで、「不合理」の範囲を過去の裁判より広く認めたと評価できる。
現在、非正規社員が労働者の約4割を占める。同じように手当に格差を設けている企業に、判決は見直しを迫るものとなるだろう。同種の訴訟にも影響が予想される。
一方で、定年後に再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人が原告の裁判では、基本給や大半の手当について、格差は「不合理ではない」とした。退職金が支給され、近く年金が支給される事情も踏まえた。
ただし、全営業日に出勤した正社員に支払われる精勤手当や、超勤手当については、やはり個別に考慮して格差は不合理だと結論づけた。
この裁判で原告らは、同じ仕事なのに年収が2〜3割減ったと訴えていた。企業側は「再雇用の賃下げは社会的に容認される」と訴え、2審はそれを認めていた。最高裁は一定の格差を認めつつも、そうした考え方にくぎを刺したと言える。
働き方改革の一環である「同一労働同一賃金」の流れの中で、不合理な待遇格差の是正は当然だ。ただし、格差是正には正社員の賃金体系の見直しとの兼ね合いもある。判決を踏まえ、将来的な雇用慣行を見据えた議論を労使で進める必要がある。