賃金格差判決 不合理な待遇差なくせ - 東京新聞(2018年6月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018060202000155.html
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非正規労働者と正社員との間で不合理な賃金格差があれば、是正すべきだと最高裁は示した。一方で定年後の再雇用の賃金は「現役とは別」との考えだ。同一労働同一賃金の理想に照らすべきだ。
労働契約法の二〇条では、正社員と非正規労働者の待遇の格差については(1)職務の内容(2)異動や配置変更の範囲(3)その他の事情−を考慮して「不合理と認められるものであってはならない」と規定している。
一日には最高裁で二つの訴訟の判決があった。一つはタンクローリーの運転手三人が原告である。仕事の内容は定年前と全く同じなのに、定年後は月七、八万円の職務給がカットされ、住宅手当や家族手当もカット。一方、歩合給は上がり賃金水準は定年前の75%程度になった。この定年後の賃金が不合理だと訴えていたのだ。
もう一つは、運送会社の契約社員のドライバーだ。正社員との間にさまざまな手当の格差があった。例えば通勤手当は正社員は上限五万円なのに契約社員は三千円までしか支払われなかった。この格差を不合理だと訴えていた。
最高裁の考え方は明確である。同じ仕事をしていて、同じ目的を達成するための手当ならば、正社員、非正規社員を問わず、会社は支払わねばならない−という当たり前の結論である。
「無事故手当は優良ドライバーの育成や安全輸送を目的として支給される。契約社員と正社員と職務の内容は異ならないのに手当の相違を設けるのは不合理だ」
そのように最高裁は断ずる。同じ論法で、作業手当も給食手当なども相違があれば労働契約法にいう「不合理」にあたるとする。むろん皆勤手当や超過勤務手当も区別なく支給するお金とした。
問題は定年後の再雇用者の給料だ。一審判決は「職務が同じなのに賃金格差があるのは不合理」とし原告勝訴だった。だが、最高裁は「定年制は労働者の長期雇用や年功的処遇を前提としながら、賃金コストを一定限度に抑制するための制度」だから、定年を境に賃金体系が変わるとし、原告の言い分を退けた。
ただ判決には疑問も覚える。運転手がハンドルを握る時間が同じなら、やはり「同一労働同一賃金」という物差しを当てるべきではないのか。
今や「六十五歳定年」の動きも進み始めている。その流れは止まらない。六十歳の定年後の処遇見直しも必至といえる。